66 / 171
第二章 初学院編
65
しおりを挟む
「布団冷たいな………。アース、一緒のベッドで寝ようか? その方が温かいだろ?」
へ………? 一緒のベッドで寝るだって?
ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリだって!! そんなことをしたら、そのまま永眠してしまうかもしれない。
「………お誘いはうれしいけど、一緒に寝るには狭いんじゃないかな?」
「狭い? このベッドの大きさを見て、本当に狭いと思っているのか?」
うっ………確かにその通りだ。成人男性が四人くらい寝られるほどの、貴族仕様の大きさだ。狭くて寝られないというのは、かなりテンパってしまった言い訳だ。冷静に考えてみると、お断りできるような良い理由が思い浮かばない。従者の身でありながら主と共に………と言えば、「今は二人きりだから友人だ」と反撃されるだろう。
………俺は目を泳がせることしかできなかった。
「迷惑でなければ、俺がそっちに行ってもいいか?」
………これはもう、避けられない状況だ。ならば、意識を保てるように最善の手を尽くすことにしよう。キルがこちらに来る場合、ポジション取りなどで俺の思うようにできない可能性がある。だから、俺の方から行って広いベッドを逆手に取り、いい感じの距離でポジションを取ることができれば、何とかなりそうだ。
「俺が行くよ!」
俺はそういって、素早い動きでキルのベッドへともぐりこんだ。よし、作戦通り端を確保することができたぞ。これなら、一緒のベッドというよりはむしろ、隣り合ったベッドで寝ていると思えるくらいの距離感だ。
「おい、なんでそんなに離れているんだよ? それじゃあ、一緒のベッドで寝る意味がないだろ。」
もっともな意見だ。少しなら近づけるけど、再び「遠い」と言われるのがオチだな。さて、どうしようか。このまま寝たふりをするのもアリだけど、起こされる可能性も否定できない。
よし、俺からかなり近づいてキルの方から距離をとってもらうようにしよう。すでにいっぱいいっぱいの頭では、この作戦が限界だ。俺はのそのそとキルがいる中央付近まで近づいていき、キルとの距離が拳一つ分くらいになるところで止まった。
あ………近すぎた。普段ならこの距離で会話することが多いけれど、ベッドでこの距離は色々まずい。
「よし、この距離なら問題ないな。」
問題しかないよ! 俺のことはみじんも意識していないキルからすれば問題ないだろうけど、俺からすれば問題だらけだよ。よし、もうこれはさっさと寝るしかない。
「………お気に召したようで何よりです。温かいのでぐっすり寝られそうです。では、おやすみなさい。」
「ちょっと、待て。お前が敬語になるときは何かがあるときと決まっているが………今は深くは追及しない。だからその代わり、もう少し話そう。先ほどローウェルから、こういう泊りの時に話す定番の話題があるらしいからそれを話そう。」
泊りの時の定番の話題………? 嫌な予感しかしないな。それに、発言者がローウェルときた。これはもう、あの話題しかないだろう。
「………ちなみにその話題とは?」
「恋バナだ。」
………はー。やっぱりそうなるよな、恋バナ。自分のことを話すのはまあ、男性でも女性でもあり得そうなことを話せばいいから苦ではないけど、キルの好きな女性のタイプは流石に聞きたくないな………。
だけど、キルがすごく興味深々そうだし断るのもな………。側近として、主の好みを把握する仕事だと思って頑張ろうか。
「わかった。………ねーキル、恋バナを持ちかけるということは、キルは気になっている人がいるの?」
「………特にいない。」
キルはそっぽを向きながら、そう答えた。うーん、わかりやすいな。完全にいるよね、気になっている人。側近のみんなは騙されてくれないと思うけどな………。そのしぐさはグッとくるので、少し意地悪したくなってくる。
「なるほど、ちなみにどんな人なの?」
「は、はぁ!? だから、いないと言っているだろ!」
ここでキルの癖を指摘したら、今後隠すことがうまくなってしまうかもしれない。大事なことを隠されると、命取りになる可能性があるため、ここは温かい目をすることで引くとしよう。キルの反応は言うまでもなく、とてもかわいかった。
「その小さい子供を見るような目はやめろ! 何かあればそういう温かい目で俺のことを見て………。本当に今はいないからな!」
今は、ね………。
「はいはい、誰にも言わないから安心して。」
「………だから、いないと言って………。なんで俺ばかり、恥ずかしい気持ちになるんだよ! アースにはいないのか、気になっている人!」
「気になっている人はまだいないかな。ほら、俺はまだ人とかかわりだしたばかりだから好きとかそういう気持ちにはまだなっていないかな。」
俺はできるだけ冷静に話した。ここで動揺したら、わかりやすいキルのようになってしまうから。ただいないというだけでは、ツッコまれる可能性があるので、もっともらしい理由を添えておいた。
「な、なるほどな………まだいないのか。そうか………。ならば、好きな人のタイプは何かあるか?」
「そうだね、俺の好きなタイプは………。自分をしっかり持っている人で、あとは食事を美味しそうに食べる人かな。」
これは事実だ。女性にも当てはまると思うから、変には思われないだろう。あとは俺のフェチの関係で筋肉が………など色々あるけど、そこはもちろん省かせてもらう。
「自分をしっかり持っているとは、具体的にはどういうことだ?」
「具体的に、と言われると、自分でも難しいね………。芯が通っているというか、ちゃんとしているっていう感じかな。」
俺がそういうと、キルは少し考え込むようになにやらつぶやいていた。それにしても、キルの今の体勢はちょっとあれだよね。なんというか、事後感があるというかなんというか………。肩肘を立てて、手のひらの上に頭をのせている。確かこういうポーズの大仏が日本にあったような気がする。
そういえば、キルの好きな人のタイプはどんな感じなのだろうか? 気になっている人はいるようだけど、タイプまではまだ聞いていない。よし、聞いてみよう。
「キル、キルの好きな人のタイプはどんな感じなの?」
俺がそういうと、俯きながら考えこんでいた視線を上げてニヤリと笑った。あ、もったいぶるつもりだな。
「秘密だ。俺ばかり恥ずかしい思いをしたから、不公平だ。」
ふーん、そう来るのか。恥ずかしい思いをしたのは、キルがわかりやすすぎるのが原因だ。それを俺のせいにされたら困る。それをいうなら、俺ばかり好きなタイプを聞かれて不公平ではないだろうか? うん、きっとそうに違いない。キルがそのつもりなら、俺にも考えがある。
へ………? 一緒のベッドで寝るだって?
ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリだって!! そんなことをしたら、そのまま永眠してしまうかもしれない。
「………お誘いはうれしいけど、一緒に寝るには狭いんじゃないかな?」
「狭い? このベッドの大きさを見て、本当に狭いと思っているのか?」
うっ………確かにその通りだ。成人男性が四人くらい寝られるほどの、貴族仕様の大きさだ。狭くて寝られないというのは、かなりテンパってしまった言い訳だ。冷静に考えてみると、お断りできるような良い理由が思い浮かばない。従者の身でありながら主と共に………と言えば、「今は二人きりだから友人だ」と反撃されるだろう。
………俺は目を泳がせることしかできなかった。
「迷惑でなければ、俺がそっちに行ってもいいか?」
………これはもう、避けられない状況だ。ならば、意識を保てるように最善の手を尽くすことにしよう。キルがこちらに来る場合、ポジション取りなどで俺の思うようにできない可能性がある。だから、俺の方から行って広いベッドを逆手に取り、いい感じの距離でポジションを取ることができれば、何とかなりそうだ。
「俺が行くよ!」
俺はそういって、素早い動きでキルのベッドへともぐりこんだ。よし、作戦通り端を確保することができたぞ。これなら、一緒のベッドというよりはむしろ、隣り合ったベッドで寝ていると思えるくらいの距離感だ。
「おい、なんでそんなに離れているんだよ? それじゃあ、一緒のベッドで寝る意味がないだろ。」
もっともな意見だ。少しなら近づけるけど、再び「遠い」と言われるのがオチだな。さて、どうしようか。このまま寝たふりをするのもアリだけど、起こされる可能性も否定できない。
よし、俺からかなり近づいてキルの方から距離をとってもらうようにしよう。すでにいっぱいいっぱいの頭では、この作戦が限界だ。俺はのそのそとキルがいる中央付近まで近づいていき、キルとの距離が拳一つ分くらいになるところで止まった。
あ………近すぎた。普段ならこの距離で会話することが多いけれど、ベッドでこの距離は色々まずい。
「よし、この距離なら問題ないな。」
問題しかないよ! 俺のことはみじんも意識していないキルからすれば問題ないだろうけど、俺からすれば問題だらけだよ。よし、もうこれはさっさと寝るしかない。
「………お気に召したようで何よりです。温かいのでぐっすり寝られそうです。では、おやすみなさい。」
「ちょっと、待て。お前が敬語になるときは何かがあるときと決まっているが………今は深くは追及しない。だからその代わり、もう少し話そう。先ほどローウェルから、こういう泊りの時に話す定番の話題があるらしいからそれを話そう。」
泊りの時の定番の話題………? 嫌な予感しかしないな。それに、発言者がローウェルときた。これはもう、あの話題しかないだろう。
「………ちなみにその話題とは?」
「恋バナだ。」
………はー。やっぱりそうなるよな、恋バナ。自分のことを話すのはまあ、男性でも女性でもあり得そうなことを話せばいいから苦ではないけど、キルの好きな女性のタイプは流石に聞きたくないな………。
だけど、キルがすごく興味深々そうだし断るのもな………。側近として、主の好みを把握する仕事だと思って頑張ろうか。
「わかった。………ねーキル、恋バナを持ちかけるということは、キルは気になっている人がいるの?」
「………特にいない。」
キルはそっぽを向きながら、そう答えた。うーん、わかりやすいな。完全にいるよね、気になっている人。側近のみんなは騙されてくれないと思うけどな………。そのしぐさはグッとくるので、少し意地悪したくなってくる。
「なるほど、ちなみにどんな人なの?」
「は、はぁ!? だから、いないと言っているだろ!」
ここでキルの癖を指摘したら、今後隠すことがうまくなってしまうかもしれない。大事なことを隠されると、命取りになる可能性があるため、ここは温かい目をすることで引くとしよう。キルの反応は言うまでもなく、とてもかわいかった。
「その小さい子供を見るような目はやめろ! 何かあればそういう温かい目で俺のことを見て………。本当に今はいないからな!」
今は、ね………。
「はいはい、誰にも言わないから安心して。」
「………だから、いないと言って………。なんで俺ばかり、恥ずかしい気持ちになるんだよ! アースにはいないのか、気になっている人!」
「気になっている人はまだいないかな。ほら、俺はまだ人とかかわりだしたばかりだから好きとかそういう気持ちにはまだなっていないかな。」
俺はできるだけ冷静に話した。ここで動揺したら、わかりやすいキルのようになってしまうから。ただいないというだけでは、ツッコまれる可能性があるので、もっともらしい理由を添えておいた。
「な、なるほどな………まだいないのか。そうか………。ならば、好きな人のタイプは何かあるか?」
「そうだね、俺の好きなタイプは………。自分をしっかり持っている人で、あとは食事を美味しそうに食べる人かな。」
これは事実だ。女性にも当てはまると思うから、変には思われないだろう。あとは俺のフェチの関係で筋肉が………など色々あるけど、そこはもちろん省かせてもらう。
「自分をしっかり持っているとは、具体的にはどういうことだ?」
「具体的に、と言われると、自分でも難しいね………。芯が通っているというか、ちゃんとしているっていう感じかな。」
俺がそういうと、キルは少し考え込むようになにやらつぶやいていた。それにしても、キルの今の体勢はちょっとあれだよね。なんというか、事後感があるというかなんというか………。肩肘を立てて、手のひらの上に頭をのせている。確かこういうポーズの大仏が日本にあったような気がする。
そういえば、キルの好きな人のタイプはどんな感じなのだろうか? 気になっている人はいるようだけど、タイプまではまだ聞いていない。よし、聞いてみよう。
「キル、キルの好きな人のタイプはどんな感じなの?」
俺がそういうと、俯きながら考えこんでいた視線を上げてニヤリと笑った。あ、もったいぶるつもりだな。
「秘密だ。俺ばかり恥ずかしい思いをしたから、不公平だ。」
ふーん、そう来るのか。恥ずかしい思いをしたのは、キルがわかりやすすぎるのが原因だ。それを俺のせいにされたら困る。それをいうなら、俺ばかり好きなタイプを聞かれて不公平ではないだろうか? うん、きっとそうに違いない。キルがそのつもりなら、俺にも考えがある。
232
あなたにおすすめの小説
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に1話ずつ更新
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
王子に彼女を奪われましたが、俺は異世界で竜人に愛されるみたいです?
キノア9g
BL
高校生カップル、突然の異世界召喚――…でも待っていたのは、まさかの「おまけ」扱い!?
平凡な高校生・日当悠真は、人生初の彼女・美咲とともに、ある日いきなり異世界へと召喚される。
しかし「聖女」として歓迎されたのは美咲だけで、悠真はただの「付属品」扱い。あっさりと王宮を追い出されてしまう。
「君、私のコレクションにならないかい?」
そんな声をかけてきたのは、妙にキザで掴みどころのない男――竜人・セレスティンだった。
勢いに巻き込まれるまま、悠真は彼に連れられ、竜人の国へと旅立つことになる。
「コレクション」。その奇妙な言葉の裏にあったのは、セレスティンの不器用で、けれどまっすぐな想い。
触れるたび、悠真の中で何かが静かに、確かに変わり始めていく。
裏切られ、置き去りにされた少年が、異世界で見つける――本当の居場所と、愛のかたち。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる