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第二章 初学院編
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しおりを挟む「それでは報告します。」
翌朝、俺は皆に情報収集の結果を報告した。もちろん昨日のうちに終えていたのだが、夜遅かったし、俺も倒れるわけにはいかなかったので、町から拝借した食べ物をジールに渡して眠った。もちろん、後から弁償するつもりだ。
この領地を治めているのは、テレシ―侯爵だった。つまりここは、王都と辺境伯領の中間に位置する領地を一つということだ。あいつの言っていた方角はあっていたようだ。テレシー侯爵は、俺達と同じクラスでマーガレット様の友人の一人のマリア・テレシ―の父親だ。マリアは、ムンナ様と一緒によく、アースに絡みに行っている女子だ。マリアの行動からもわかるように、テレシ―侯爵家は王族に対して好意的だ。俺たちが今の状態で行っても、変な気は起こさないだろう。ただ、今は社交期間であり、侯爵も侯爵夫人もマリアもいないと思われる。留守を預かっている者に、話を通す必要がある。
「報告ありがとう。ローウェル、ありがとうな。」
「いえいえ、文官らしい仕事ができて光栄ですよ。さて、城下町の方角もわかりましたし早速向かいましょうか。そこでは、申し訳ありませんが主に動いていただくことになります。」
「ああ。そのための王権であり、お前たちの主だからな。」
よかった、いつも通りの主に戻ってきたな。だけど、まだ安心はできない。今は、アースを助けるために動いていられるようだけど、間に合わなかったら………。いや、そんなことは今考えても仕方がない。
俺達は早速、テレシー侯爵領の城下町を目指した。すでに森は抜けているため、移動速度はましになったが、それでも城下町に着くころには夕方になっているだろう。
それから、城下町を目指して俺たちは、再び歩き続けた。
そして俺の予想通り夕方に差しかかるころ、ようやく城下町への入り口が見えてきた。そこには大きな門があり、侯爵家としての品位を十分に放っている。門を潜り抜けるためには、門番に通してもらう必要がある。俺たちは町に入るために、門番の所へと向かった。
「そこで止まってください。この町に入るためには許可証が必要です。もしくは、身分証の提示と通行料をいただきます。」
………まあ、そうだよな。俺達には、通行料を払うこともできなければ許可証もない。ここは、最初に穏便に済ませられる方法を試すとしよう。
「申し訳ございません。私たちには許可証もなければ、通行料もお支払いすることもできません。しかし、どうしてもテレシ―侯爵とお話をしたいのです。しかし、今は社交期間中でご不在かとは思いますので、現在この領地の全権を任せられている方への面会を希望します。こちらにいらっしゃるのは、第二王子殿下です。お目通りを願えますか?」
俺がそういうと、門番の二人は俺達を見分するような目で眺め始めた。そして、胡散臭そうな目で俺たちのことを鼻で笑った。
「そんなボロボロな恰好な王子がいらっしゃるはずがないでしょう? 王子の名を騙るとは、とんだ不届き者ですね。今なら見逃して差し上げますので、退散されてはいかがですか?」
………まあ確かに、俺たちの格好はボロボロだ。魔物との戦闘のあと、今まで走って移動してきたわけだからな。しかし、胡散臭そうにしてはいるが、最後まで丁寧な口調なんだな。テレシ―侯爵の品の高さがうかがえる。だけど、通してもらわなければならない。俺たちは、それぞれの家紋の入った物を取り出した。
「………それは! 王家の家紋に加えて、バルザンス公爵家、ツーベルク侯爵家、そしてカーサード侯爵家の家紋………。あなた方は本当に………。し、失礼いたしました!」
門番の二人はそういうと、身体を震えさせながら地面に頭をこすりつけた。王族の殿下に対して、騙り呼ばわりしたのだ。即刻処分されても仕方のないことだ。だけど、これに関してはこんなボロボロの格好でかつ面会予約も取り付けていない俺たちの方が悪いな。
殿下もそう思ったらしく、二人に頭を上げるように言った。
「謝ることはない。今回は突然、このような恰好で訪れた俺たちの方に非がある。俺たちのことをわかってくれたのならそれでいい。今、この領地を任されている者は誰か教えてくれるか?」
「………は、はい。侯爵様よりこの地を任されたのは、侯爵家嫡男のグート様です。」
グート様と言うと、マリア様の兄上だな。テレシ―侯爵家の長男で、今はすでに貴族院を卒業していて、テレシ―侯爵の仕事を手伝っていると聞いている。
「わかった、ありがとう。すぐに面会依頼を出してくれるか?」
「「し、承知しました!!」」
殿下がそういうと、門番たちはよろめきながらもすぐに立ち上がって連絡用ラクリマで連絡を取った。連絡用ラクリマは、魔力を流すことで遠距離と通信ができる魔導具だ。
するとすぐに、馬車がやってきた。どうやら、グート様はすぐに会ってくださるようだ。
「こ、こちらにお乗りください! グート様はすぐにお会いできるそうです!」
この門番たちがそろそろ精神の限界のようなので、俺達はお礼を言ってすぐに馬車に乗った。
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