転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠

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【番外編1・後編】公爵邸の愛娘、兄の実母を成敗する

断罪の舞台・1

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 ドルヘウスはこちらの想定以上に早く、舞台を整えてくれた。

「わぁ! おっきな建物……!」

 ある日ロルティは、家族みんなで城下町にある劇場へ足を運んだ。

  (みんなが見ている前で、おにいしゃまとおかあさまが過去の因縁を精算するために頑張るんだよね……!)

 今日の幼子は緊張でどうにかなってしまいそうな2人をサポートし、緊急事態が起きた時に助ける役割を担っていた。
 だから、青白い顔でじっと建物を見つめる2人を勇気づけるように、明るい声を発する。

「おかあしゃま! おにいしゃま! 大事なのは、何が起きても動揺しない心だよ!」
「ロルティ……」
「そうね。気をしっかりと持つのは、何よりも大事なことだわ……」

 幼子の言葉を噛み締めた2人は、少しだけ平常心を取り戻す。
 そうして、強張った表情のまま劇場内に足を運んだ。

「僕たちの活躍を、聖獣と一緒に見ていてほしい」
「もちろん!」
「わふっ!」

 ロルティは兄の願いへ応えるように頷いたあと、一緒にやってきた犬の背中に跨った。
 その後、観客席の最後尾通路に留まる。
 その真後ろにはカイブルが控え、父はいつ最前列で不足の事態が起きてもいいように待機した。
 そして、今日の主役である母と兄は――。
 観客席と舞台を隔てるように、薄い膜が張られた板の内そばにいる。
 壇上からは、そこの様子を窺い知ることは不可能だ。
 最前列の中央には「上演中はお静かにお願いします」と記載されたプラカードが立っているため、ここに呼ばれた人々は誰もが息を殺して演劇が始まるのを待っていた。

 ――そう。
 これがプロの出演する劇ではないことを、知らぬまま……。

  (お客しゃまを騙しているみたいで、気が引くけど……)

 父親の提案した作戦は、ヘラルラを手っ取り早く社会的に抹殺するには適した方法だ。
 他に代案がない以上、賛同するしかない。

  (作戦が全部、うまくいきますよーに……!)

 ロルティは胸元で両手を組み、思惑の成功を願った。

「ジュロド? こんなところにわたくしを呼び出して、一体なんの用かしら?」

 憎き女性の声が聞こえた瞬間、客席の照明が落とされる。
 幼子は悲鳴を上げそうになるのをぐっと堪え、固唾を呑んで事の成り行きを見守った。

「この間、僕に言っただろう……? 一緒についてくれば、王太子にしてやったのにって」
「まぁ! ようやくわたくしの提案を呑む気になったのね! さすがは、自慢の息子ですわ!」

 まだそうと決まったわけではなかったのだが、早とちりをした殿下は嬉々とした声を上げ、口元に歪な笑みを浮かべて告げた。

「さぁ、ジュロド。今すぐにわたくしの元へ戻って来なさい。そうすればあなたは、兄さんに子どもが出来ない限りはこの国を統べる王になれる……!」

 その芝居がかった声音は、まるで熟練の舞台女優にしか聞こえない。

  (この世界って、役者しゃんっていないのかなぁ……?)

 彼女に相応しいのは王女という座ではなく、まったく別の職業ではないか。
 そんなどうでもいいことを考えていると、兄は実母にはっきりと自らの意思を伝え始めた。

「盛り上がっているところ、悪いけど。僕は、王太子になんかならないよ」
「なんですって?」
「僕はハリスドロア公爵家で、ロルティの兄として暮らし続けるんだ……!」

 ジュロドの高らかな宣言は、観客たちに劇の始まりを告げる。
 彼らは誰もが舞台上に釘づけとなり、物語の行く末を見守った。
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