転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠

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【番外編1・後編】公爵邸の愛娘、兄の実母を成敗する

断罪の舞台・2

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「ふぅん……。そう。大きくなっても、やっぱりわたくしに逆らうのね?」

 しかし――自らの命令を無視されるなど考えてもいなかった王女は、息子の決断を素直に受け入れられないようだ。

「離れている時間が長いから、きっと忘れてしまったのかもしれないわね。なら、思い出させてあげる……! わたくしを怒らせたら、どうなるか……!」

 対話が無理なら、暴力を使って黙らせる。
 そう言わんばかりに、ヘラルラは息子を害するために手を振りかぶる。
 この瞬間を、ハリスドロア公爵家の人間は待っていた。

「わんちゃん! ごーごー!」
「わふっ!」

 ロルティを乗せて観客席の最後列に座っていた聖獣が、助走をつけて勢いよく跳ねる。
 その直後、舞台と客席を隔てていた幕が勢いよくせり上がっていく。

「な、なんだ!?」
「あれは一体……っ」
「純白の毛並み……っ」
「神獣だ!」
「じゃあ、そのうえに乗っているのは……」
「見て! 聖女様よ!」

 固唾を呑んで舞台を見守っていた貴族たちは、ヒロインの登場に歓声を上げる。

  (おにいしゃまが大ピンチな状況じゃなかったら、手を振るけど……!)

 今は貴族たちにリップサービスをしている場合ではない。
 ロルティは舞台上にいた親子の間に割って入り、勢いよくヘラルラにタックルを仕掛けた。

「ロルティ!?」

 後方からは、唖然とした兄の声が聞こえる。
 まさか妹が自分を守るために実母を聖獣に乗ったまま押し倒すなど、思いもしなかったのだろう。

  (あ、いたたた……。わんちゃん、ちょっと勢いがつきすぎたかも……)

 張り切り過ぎたせいで身体の節々が痛むが、これも大好きな家族を守るために必要なことなら――幼子はどんな苦痛にも耐えてみせる。

「このくらい、へっちゃらだよ!」

 だから、泣くことはない。
 ロルティは翡翠の瞳に決意の炎を宿すと、ヘラルラの上へ馬乗りになったまま彼女を見下した。

「な……っ。翡翠の目……! あなた、あの女の娘ね!? 退きなさい!」
「絶対に嫌!」
「あたしは王女よ! 命令できるのは、兄さんだけ!」
「王族の血と聖なる血。どちらのほうがより高潔なのか……」
「なんですって!?」

 娘と前妻が言い争う姿を最前列で見守っていた父親が、よく通る低い声でぽつりと呟く。
 ざわついていた観客席の人々はピタリと私語を止め、劇の結末を見守る。

「皆のもの。よく聞け。王女ヘラルラ・エガリテールは、我がハリスドロア公爵家の娘、ロルティを傷つけた」
「一体それの、何が悪いの!?」
「聖女に手を出せば、神の天罰が下る。知らないとは言わせんぞ」

 父親の口から聖女という単語が飛び出てきたことに、彼女はどうやら驚きを隠せないようだ。

  (わたしが聖女だって、知らなかったの……?)

 ロルティは逆に、驚いてしまった。

「な、なんですって……? このチビが、聖女……? そんなの、聞いてないわ……!」

 その間にもヘラルラは、ガタガタと全身を震わせてうわ言を口にし続ける。

「なんで……!? だって、その女はメイドの! わたくしから旦那様を奪った! 卑しい女の血を引く落胤でしょ……!?」
「我が妻を、侮辱するな!」
「ひ……っ」

 混乱の最中に紡がれた言葉でさえも、ジェナロはけして見逃さない。
 最愛の娘と妻、大切な家族を守るために勝機を見出した彼は、ハリスドロア公爵家を代表して戦っていた。

「殿下の言う通りです。私は確かに、身分を偽ってハリスドロア公爵家のメイドとして、働いておりました」

 ――おそらく、夫や娘だけには任せておけないと己を奮い立たせたのだろう。
 舞台袖からカツコツとハイヒールを鳴らした女性が現れる。
 それはロルティの母親、ルティアーナだった。
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