転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠

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【番外編1・後編】公爵邸の愛娘、兄の実母を成敗する

父と娘

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「ん、んぅ……」

 誰かが、己の小さな指先に触れている。
 胸元には重りのようなものが乗せられ、寝苦しい。

「重いよぉ……っ」
「むきゅ……!?」

 ロルティはガビーンっとショックを受けたような悲痛な鳴き声を耳にし、ぱちりと大きく瞳を見開く。
 そこには丸くてふわふわとした、白い毛並みに真っ赤な瞳を持つアンゴラウサギがいて――。

「わたしを心配してくれたの? ありがとう!」
「きゅむ……」

 小さな脚をちょこまかと動かして幼子の身体から退こうと試みた獣は、ほっとした様子で胸元へ頬を寄せる。

「うさぎしゃんの毛、さらさら……」

 全身が鉛のように感じ、指先すらも動かすのが億劫なほどに疲れが取れていない。
 聖女は自分の小さな手に触れ合っている人物が誰なのかを確認することなく、うつらうつらと船を漕ぐ。

「眠いのなら、寝ていろ。無理をして起きている必要はないぞ」
「ん……。おとう、しゃま……?」
「今度こそ、危機は去ったからな……」

 優しい父親の声を耳にした幼子は、眠気に抗いながらもどうにか声を発する。
 一刻も早く、物語の結末を知りたかったからだ。

「おねえしゃんは……? どう、なったの……?」
「廃嫡……王女の座を追われた。人里離れた地で、静かに余生を過ごす」
「むぅ? のんびり、田舎暮らしってこと?」
「そうだな。似たようなものだ」

 ジェナロの微笑みを目にしたロルティは、ようやく目が冴えてきた。
 がばりと勢いよく飛び起きると、明るい声を室内に響かせる。

「よかった! たくさんの自然に囲まれて、リラックスできるといいね! 今まではすごくムカムカ、イライラしていたみたいだから……」

 幼子はそのまま、キョロキョロとあたりを見渡す。
 家族が全員揃っていないことに気づき、父親に彼らの居場所を問いかけた。

「そうだ! おにいしゃまと、おかあしゃまは?」
「ジュロドは、ルティアーナの部屋で眠っている。あの女に煮え湯を飲まされた者同士、思うところがあるのだろう。そっとしておいてやれ」
「うん……」

 ルティアーナが公爵家に戻った当初、兄は彼女に寄りつかなかった。
 しかし、今では母親の寝室で一緒に寝る仲にまで関係が改善している。

  (おとうしゃまの言う通り、邪魔したら駄目だよね……)

 ロルティの周りにジュロドはいないが、2匹の神獣がいる。
 今日は彼らで我慢しようと決め、父親に再び問いかけた。

「ねぇ、おとうしゃま。今は、夜?」
「ああ。子どもは、眠る時間だ」
「でもね。わたし、たくさん寝たよ?」
「昼夜逆転生活は、身体によくないぞ」
「むぅ……」

 彼と会話をしていたら、すっかり眠気がどこかいってしまった。

  (うさぎしゃんとわんちゃんを抱きしめていたら、眠れるかなぁ……?)

 不安でいっぱいになりながらふてくされたように頬を剥れさせていると、父から思わぬ提案を受けて驚く。

「一緒に、寝るか」
「いいの!?」
「ああ。ロルティが深い眠りについてから3日……。寝ずに走り回っていたからな。俺も、そろそろ限界が来ている」

 ジェナロはキラキラと瞳を輝かせる愛娘の隣に寝転ぶと、小さな身体に腕を回す。

「おやすみ、ロルティ」
「おやすみなさい、おとうしゃま……」

 彼に抱きしめられるまではあんなにも目が冴えていたのに――何かと仕事の忙しい父親と、こうして添い寝をする機会がほとんどなかったからか。
 特別感でいっぱいに満たされたロルティは、あっという間に再び眠りの国へ旅立った。
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