【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています

春野オカリナ

文字の大きさ
9 / 14

8

しおりを挟む
 「え、エミリー」

 「お姉様、どうか過ちを認めてください。そして、大伯母のお墓に参って下さい。お願いします」

 「な、何を言っているの。今更だわ」

 「でも、大伯母はずっとお姉様の帰りを待っていました。いつかは帰って来てくれると」

 「貴女なんかに私の気持ちがわかるものですか。今更、平民なんて言われた私の気持ちが…ワァァァ」

 そう言い、エリザベスはエミリーに向かって持っていたシャンパングラスを投げた。

 その前にアルフレッドがエミリーを隠すように避けた。

 会場にはグラスの割れた音だけが響いた。

 直ぐに衛兵に取り押さえられたエリザベスは、まだ何かを喚きながら衛兵に引き摺られる様に会場から連れ出された。

 静まり返る会場をオーガストが場を収めた。

 「皆、折角のパーティーが台無しだね。気を取り直して再開しよう」

 第二王子の合図で音楽が流れ出し、少しずつ場が和んでいった。

 「君達も踊ったらどうなんだ?」
 
 第二王子の言葉にアルフレッドが照れた仕種で、

 「実は妻は懐妊中なので、ダンスは遠慮します」

 小さな声で、ボソボソと呟いたのを聞いて

 「皆、スタンレー侯爵夫人は懐妊中だそうだ」

 面白そうに第二王子が大声で言ったので、周りに人だかりが出来た。

 「まあ、侯爵夫人は身重だったのね。彼方の控え室でお喋りを楽しみましょう」

 そう話し掛けて来たのは、アマリリス・アンドリュ公爵令嬢だった。

 第二王子の婚約者でもうすぐ結婚する。

 社交なれしていないエミリーへの気遣いだった。

 すると他の令嬢達が同じ様に声をかけてきた。

 アルフレッドの周りにも

 「おめでとう」

 「羨ましいよ。私の所はまだだからね」

 「子供は、授かり物だから気長に待つさ」

 祝福の言葉を受けながら、エミリーは戸惑っていた。

 初めての社交界で自分を受け入れて貰えた事を嬉しく思う反面、姉の境遇に心が傷んだ。

 そんなエミリーを横目にアルフレッドはもう一度、エミリーに正式なプロポーズする事を決意したのだった。

 

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

「お姉様ばかりずるいわ!」と言って私の物を奪っていく妹と「お姉さんなんだから我慢しなさい!」が口癖の両親がお祖父様の逆鱗に触れ破滅しました

まほりろ
恋愛
【完結済み】 妹はいつも「お姉様ばかりずるいわ!」と言って私の物を奪っていく。 誕生日プレゼントも、生誕祭のプレゼントも、お祖父様が外国に行ったときのお土産も、学園で首席合格しときに貰った万年筆も……全て妹に奪われた。 両親は妹ばかり可愛がり「お姉さんなんだから我慢しなさい!」「お前には妹への思いやりがないのか!」と言って私を叱る。 「もうすぐお姉様の十六歳の誕生日ね。成人のお祝いだから、みんな今までよりも高価な物をプレゼントして下さるはずよね? 私、新しい髪飾りとブローチとイヤリングとネックレスが欲しかったの!」 誕生日の一カ月前からこれでは、当日が思いやられます。 「ビアンカはお姉さんなんだから当然妹ののミアにプレゼントを譲るよな?」 「お姉さんなんだから、可愛い妹のミアのお願いを聞いてあげるわよね?」 両親は妹が私の物を奪っていくことを黙認している、いえ黙認どころか肯定していました。 私は妹に絶対に奪われないプレゼントを思いついた、贈った人も贈られた人も幸せになれる物。その上、妹と両親に一泡吹かせられる物、こんな素敵な贈り物他にはないわ! そうして迎えた誕生日当日、妹は私が頂いたプレゼントを見て地団駄を踏んで悔しがるのでした。 全8話、約14500文字、完結済み。 ※妹と両親はヒロインの敵です、祖父と幼馴染はヒロインの味方です。 ※妹ざまぁ・両親ざまぁ要素有り、ハッピーエンド。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 他サイトにも投稿してます。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/07/17、18時、HOTランキング1位、総合ランキング1位、恋愛ランキング1位に入りました。応援して下さった皆様ありがとうございます!

私を婚約破棄させる事に執着した義妹は、愛する人からすっかり嫌われた上に幸せを逃しました。

coco
恋愛
私を目の敵にしている義妹。 彼女は、私を婚約破棄させる事に執着しているようで…?

【完結】「幼馴染が皇子様になって迎えに来てくれた」

まほりろ
恋愛
腹違いの妹を長年に渡りいじめていた罪に問われた私は、第一王子に婚約破棄され、侯爵令嬢の身分を剥奪され、塔の最上階に閉じ込められていた。 私が腹違いの妹のマダリンをいじめたという事実はない。  私が断罪され兵士に取り押さえられたときマダリンは、第一王子のワルデマー殿下に抱きしめられにやにやと笑っていた。 私は妹にはめられたのだ。 牢屋の中で絶望していた私の前に現れたのは、幼い頃私に使えていた執事見習いのレイだった。 「迎えに来ましたよ、メリセントお嬢様」 そう言って、彼はニッコリとほほ笑んだ ※他のサイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します

しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。 失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。 そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……! 悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。

私から全てを奪おうとした妹が私の婚約者に惚れ込み、色仕掛けをしたが、事情を知った私の婚約者が、私以上に憤慨し、私のかわりに復讐する話

序盤の村の村人
恋愛
「ちょっと、この部屋は日当たりが悪すぎるわ、そうね、ここの部屋いいじゃない!お姉様の部屋を私が貰うわ。ありがとうお姉様」 私は何も言っていません。しかし、アーデルの声を聞いたメイドは私の部屋の荷物を屋根裏部屋へと運び始めました。「ちょっとアーデル。私は部屋を譲るなんて一言も言ってないです」 「お姉様、それは我が儘すぎるわ。お姉様だけこんな部屋ずるいじゃない」「マリーベル。我が儘は辞めてちょうだい。また部屋を移動させるなんてメイド達が可哀想でしょ」私たちの話を聞いていた義理母のマリアは、そう言うと、メイド達に早くするのよと急かすように言葉をかけました。父の再婚とともに、義理の妹に私の物を奪われる毎日。ついに、アーデルは、マリーベルの婚約者ユーレイルの容姿に惚れ込み、マリーベルから奪おうとするが……。 旧タイトル:妹は、私から全てを奪おうとしたが、私の婚約者には色仕掛けが通用しなかった件について ·すみません、少しエピローグのお話を足しました。楽しんでいただけると嬉しいです。

嘘つき

金峯蓮華
恋愛
辺境伯令嬢のマリアリリーは先見の異能を持っている。幼い頃、見えたことをうっかり喋ってしまったばかりに、貴族学校で5年もの間「嘘つき」と言われイジメを受けることになった。そんなマリアリリーのざまぁなお話。 独自の世界観の緩いお話しです。

婚約者を妹に奪われました。気分が悪いので二人を見なくて良い場所へ行って生きようと思います。

四季
恋愛
婚約者を妹に奪われました。気分が悪いので二人を見なくて良い場所へ行って生きようと思います。

頭の中が少々お花畑の子爵令嬢が朝から茶番を始めたようです

恋愛
ある日、伯爵令嬢のグレイスは頭の中が少しだけお花畑の子爵令嬢の茶番に付き合わされることになる。 グレイスを糾弾しているはずが、巻き込まれて過去を掘り返されていくクラスメイトたち……。 そこへグレイスの婚約者のリカルド殿下がきて……? ※10,000文字以下の短編です

処理中です...