13 / 13
監視
しおりを挟むブライアンはいつも視線を感じている。
それは見守る監視という視線だ。
ブライアンが前の時の様に愚かなマネをしない様に、記憶を持つ周りの人間が監視をしている。
それはあの監禁生活よりある意味自由なのかもしれないが別の意味では孤独なのだ。
だが、それが自分に与えられた罰……。
ブライアンは、息子夫婦の所には顔を出さない様にしている。
そこにはイエニーがいるからだ。
前の時のような表情をしていない、彼女に心が揺さぶられる。
暗い陰湿な表情は、明るく活力ある表情に変わっていた。
その微笑みが自分に向けられることは二度とない事を知りながら、ふと何処かで期待する愚かな自分がいる。
接触すれば、また自分は愚かな行動に出て、イエニーの幸せを壊すかもしれない。
そんな事は赦されない。
ブライアンはだからフラウ家には近づかない。
孫たちに囲まれて静かに人生の幕を閉じるとき、前の時もその前の時にも感じなかった安らぎを覚えた。
一度目はのたれ死んだ。二度目は殺された。どちらも自業自得なのだ。
だが、今世の終わりは満ち足りている。
こんな人生を送れたのはきっとイエニーのおかげなのだ。
彼女がもし、あの復讐を果たさなかったら自分が悔い改める日は来なかっただろう。
肉欲に溺れて、のたれ死ぬ運命しかなかったはずだ。
それでも願ってしまう。もし、赦されるならイエニーと過ごす平穏な人生を送ってみたい…。
だが、それは幻だ。
彼女に関わらなかったから今の幸せがあるのだから…。
また、彼女に関わればきっと自分は過ちを繰り返すだろう。
何処かで肯定する自分がいた。
自分を含め、多くの人がイエニー・フラウに囚われているのだ。
それは彼女に対する執着なのか嫉妬なのかはわからない。
ただ、今は祈るだけだ。
次の世でも平凡な幸せがあることを。
それが人間の人生において一番難しいことをイエニーとブライアンは誰よりも知っているからだ。
ブライアンは静かに目を閉じた。
その3年後にイエニーもこの世を去った。
三度目のやり直しでは二人は直接関わりを持たなかった。だから他の人の人生を狂わせることなく穏やかに終わらせる事ができたのだ。
241
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説
元婚約者様へ――あなたは泣き叫んでいるようですが、私はとても幸せです。
有賀冬馬
恋愛
侯爵令嬢の私は、婚約者である騎士アラン様との結婚を夢見ていた。
けれど彼は、「平凡な令嬢は団長の妻にふさわしくない」と、私を捨ててより高位の令嬢を選ぶ。
絶望に暮れた私が、旅の道中で出会ったのは、国中から恐れられる魔導王様だった。
「君は決して平凡なんかじゃない」
誰も知らない優しい笑顔で、私を大切に扱ってくれる彼。やがて私たちは夫婦になり、数年後。
政争で窮地に陥ったアラン様が、助けを求めて城にやってくる。
玉座の横で微笑む私を見て愕然とする彼に、魔導王様は冷たく一言。
「我が妃を泣かせた罪、覚悟はあるな」
――ああ、アラン様。あなたに捨てられたおかげで、私はこんなに幸せになりました。心から、どうぞお幸せに。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]
風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが
王命により皇太子の元に嫁ぎ
無能と言われた夫を支えていた
ある日突然
皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を
第2夫人迎えたのだった
マルティナは初恋の人である
第2皇子であった彼を新皇帝にするべく
動き出したのだった
マルティナは時間をかけながら
じっくりと王家を牛耳り
自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け
理想の人生を作り上げていく
【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。
Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。
休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。
てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。
互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。
仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。
しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった───
※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』
の、主人公達の前世の物語となります。
こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。
❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。
〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。
藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。
但し、条件付きで。
「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」
彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。
だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全7話で完結になります。
この結婚には、意味がある?
みこと。
恋愛
公爵家に降嫁した王女アリアは、初夜に夫から「オープンマリッジ」を提案される。
婚姻関係を維持しながら、他の異性との遊戯を認めろ、という要求を、アリアはどう解釈するのか?
王宮で冷遇されていた王女アリアの、密かな目的とは。
この結婚は、アリアにとってどんな意味がある?
※他のサイトにも掲載しています。
※他タイトル『沈黙の聖女は、ある日すべてを暴露する』も収録。←まったく別のお話です
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
多分やり直しが出来たなら……と思うことが誰にでもあるのではないのでしょうか?
夢の様な物語でした、読ませて頂いて有難うございました。
監視の回でブライアンは一度目の記憶をどこで取り戻したのでしょうか
その辺りの説明がなかったのですが私の読解力のせいでしょうか
野垂れ死んたようですがあの後で家が取り潰しにでもなったのですか?
イエニーは自分のブライアンへの愛を踏みにじられたと言うけど、ブライアンのメリルへの愛は尊重しないんだなーと思いました。
確かにブライアンはクズだけど、イエニー以外を愛する権利はあると思うし、2度目の人生はブライアンの気持ちを尊重して、ブライアンを諦めるべきだったと思います。
何だかただの逆恨みっぽいです。