6 / 52
アリスティア編
薬学の教授
しおりを挟む
私はそのカフェでのやり取りから、何故か公爵家の庶子と噂されるようになっていた。それは私が地味な姿で一人で登校し、婚約者のケロイドがエリーゼと一緒に登校しているから、多くの者が勘違いをしていた。
そんな中でも取り分け酷かったのは、下級貴族だった。
エリーゼを神聖化し、傍には常に侯爵家以下の貴族を連れだって歩く姿が本来の公爵令嬢の様に見えたのだろう。
放課後、いつものように温室の薬草に水をやりに行くと、数人の下級貴族の令嬢に絡まれた。
「貴女の義姉の所為で、私達はいい迷惑を被っているのよ。何とかしなさいよ!」
令嬢たちの中心のピンクブロンドの可愛い令嬢が、私を睨んで見当違いな事を言っている。
どうやら、私の事を父の庶子だと勘違いしている。そんなことは貴族名鑑を見れば分かるのに。
この国の貴族名鑑は、絵姿は乗っていないが名前は載っている。だから、私の名前が解れば私が公爵令嬢だと理解できるのだが、よく見ていないらしい。
「あの、どなたかと勘違いされているのでは、私は庶子ではありません」
「そんなことはどうでもいいのよ。早くあの女をどうにかして、このままでは多くの人が婚約を解消するから」
「何故?」
エリーゼは貴族のマナーを知らない。天真爛漫といえばいいのだろうか?よく笑うし、明るく朗らかな性格に貴族の男達が癒しを求めて彼女の元に集まっている。中には婚約者のいる男性もいたのだ。
学年が違うし、クラスも違うから私は放っておいたのだが、これはかつての問題を起こした平民らと同じ状況のようだった。
どうにかと言われても、私の話等通用しない。何せ、自分が恵まれているから、不幸な人間には施しをというのが彼女の精神。
家族は一緒にいるべきだとか言い出して、私に食卓に着くように言ってくるような無神経な人間なのだ。
そんな人間が私達貴族のルール等理解できないだろう。
その日は、なんとか言い逃れて凌げたのだが、あくる日からあからさまに私を攻撃してきた。エリーゼの傍には常に男子生徒が護衛の様に侍っている為、攻撃できないからその矛先は私に向かってきた。
バシャーーッ
温室の近くの小道を通った時、私は上から水をかけられた。慌てて温室に逃げ込むと、何人かの令嬢が私を探し回っている。
どうしてこんな目に合うのだろう。静かに暮らしたかっただけなのに。
段々、我慢していたものが込み上げてくる。温室の中の扉が開いて
「いないわね。きっとこの中に逃げ込んだのよ。引きづり出して義姉のやっている事の責任を取らさないと気が済まない」
その声の持ち主はこの間の令嬢の様だった。温室に入ろうとした時、男性の声が聞こえてきた。
「ここは高位貴族の温室だよ。君らは許可をもらっているのかい?」
「えーと、そ…その…」
「勝手に入ろうとしたら罰を受けないといけないよ。この中には希少価値の高い薬草もあるから」
「すみません。失礼しました」
令嬢らは、咎められて慌てて逃げたようだった。
「大丈夫かい?彼女らはもういないよ。出てきたらいい」
私はおずおずと姿を現した。
「随分、酷い格好だね。私の私室においで、シャワーを使って汚れを落とさないと。それに着替えも必要だね。君の侍女を呼びにいかすよ」
てきぱきと助手に指示を出しながら、私を自室のお風呂場に連れて行き、メイドに
「リン、すまないが令嬢の入浴を手伝ってやってくれ。それと着替えも出しておいて」
「分かりました。ご主人様」
リンと呼ばれたメイドは私を浴室に連れて行ってくれた。
私が入浴している内に、侍女と護衛が慌てて駆け付けたのだが、他にも声が聞こえている。
着替えて、私が部屋に戻るとそこにはクラスメイトが全員居る。何故か皆、一斉に注目している。
「あのう、先生。お風呂ありがとうございました。それに着替えも」
「君、誰なの?」
開口一番に訊ねたのは、王弟殿下の次男ルミエル・ロイガー公爵令息だった。彼は面白い位、真っ赤な顔をしていた。
「何を馬鹿なことを言っているの。クロムウェル公爵令嬢に決まっているでしょう」
次に喋っているのは、エミリーナ・ミルド公爵令嬢。その隣のアイリーン・カサット公爵令嬢が
「貴女が『午前0時のシンデレラ』だったんだ。綺麗ね」
「本当に美しい」
最後にローラン・ハイネ大公令息が口にした言葉に全員が頷いている。
「ありがとうございます。でも、皆さん何故こちらに?」
「あのね、従兄弟から頼まれたんだよ。君に何かあったら助けるように」
そういったのはルミエル様。彼とローラン様は王子殿下とは従兄弟同士。国王陛下には3人の弟がいて、一人が大公家を継いで、もう一人は公爵家に婿に入った。もう一人は確か第一王子と同じ年で、隣国に遊学していると聞いている。
王子殿下がどうやら高位貴族の令嬢令息に声をかけてくれたらしい。
水を被った私はお風呂に入って、元の髪に戻ってしまい。伊達眼鏡も外してしまっているから、素顔を見せている。
屋敷の使用人ら以外で、じっと見られることに慣れていない私は、少し恥ずかしかった。
「もったいないな。こんなに美しい容姿なのに、どちらに似ているの。公爵かな?」
ルミエル様のその言葉が引き金になって、私は気分が悪くなっていった。段々青ざめていく私の姿に気付いてくれたのは、
ライザス・ルクド
薬学の教授だった。
そんな中でも取り分け酷かったのは、下級貴族だった。
エリーゼを神聖化し、傍には常に侯爵家以下の貴族を連れだって歩く姿が本来の公爵令嬢の様に見えたのだろう。
放課後、いつものように温室の薬草に水をやりに行くと、数人の下級貴族の令嬢に絡まれた。
「貴女の義姉の所為で、私達はいい迷惑を被っているのよ。何とかしなさいよ!」
令嬢たちの中心のピンクブロンドの可愛い令嬢が、私を睨んで見当違いな事を言っている。
どうやら、私の事を父の庶子だと勘違いしている。そんなことは貴族名鑑を見れば分かるのに。
この国の貴族名鑑は、絵姿は乗っていないが名前は載っている。だから、私の名前が解れば私が公爵令嬢だと理解できるのだが、よく見ていないらしい。
「あの、どなたかと勘違いされているのでは、私は庶子ではありません」
「そんなことはどうでもいいのよ。早くあの女をどうにかして、このままでは多くの人が婚約を解消するから」
「何故?」
エリーゼは貴族のマナーを知らない。天真爛漫といえばいいのだろうか?よく笑うし、明るく朗らかな性格に貴族の男達が癒しを求めて彼女の元に集まっている。中には婚約者のいる男性もいたのだ。
学年が違うし、クラスも違うから私は放っておいたのだが、これはかつての問題を起こした平民らと同じ状況のようだった。
どうにかと言われても、私の話等通用しない。何せ、自分が恵まれているから、不幸な人間には施しをというのが彼女の精神。
家族は一緒にいるべきだとか言い出して、私に食卓に着くように言ってくるような無神経な人間なのだ。
そんな人間が私達貴族のルール等理解できないだろう。
その日は、なんとか言い逃れて凌げたのだが、あくる日からあからさまに私を攻撃してきた。エリーゼの傍には常に男子生徒が護衛の様に侍っている為、攻撃できないからその矛先は私に向かってきた。
バシャーーッ
温室の近くの小道を通った時、私は上から水をかけられた。慌てて温室に逃げ込むと、何人かの令嬢が私を探し回っている。
どうしてこんな目に合うのだろう。静かに暮らしたかっただけなのに。
段々、我慢していたものが込み上げてくる。温室の中の扉が開いて
「いないわね。きっとこの中に逃げ込んだのよ。引きづり出して義姉のやっている事の責任を取らさないと気が済まない」
その声の持ち主はこの間の令嬢の様だった。温室に入ろうとした時、男性の声が聞こえてきた。
「ここは高位貴族の温室だよ。君らは許可をもらっているのかい?」
「えーと、そ…その…」
「勝手に入ろうとしたら罰を受けないといけないよ。この中には希少価値の高い薬草もあるから」
「すみません。失礼しました」
令嬢らは、咎められて慌てて逃げたようだった。
「大丈夫かい?彼女らはもういないよ。出てきたらいい」
私はおずおずと姿を現した。
「随分、酷い格好だね。私の私室においで、シャワーを使って汚れを落とさないと。それに着替えも必要だね。君の侍女を呼びにいかすよ」
てきぱきと助手に指示を出しながら、私を自室のお風呂場に連れて行き、メイドに
「リン、すまないが令嬢の入浴を手伝ってやってくれ。それと着替えも出しておいて」
「分かりました。ご主人様」
リンと呼ばれたメイドは私を浴室に連れて行ってくれた。
私が入浴している内に、侍女と護衛が慌てて駆け付けたのだが、他にも声が聞こえている。
着替えて、私が部屋に戻るとそこにはクラスメイトが全員居る。何故か皆、一斉に注目している。
「あのう、先生。お風呂ありがとうございました。それに着替えも」
「君、誰なの?」
開口一番に訊ねたのは、王弟殿下の次男ルミエル・ロイガー公爵令息だった。彼は面白い位、真っ赤な顔をしていた。
「何を馬鹿なことを言っているの。クロムウェル公爵令嬢に決まっているでしょう」
次に喋っているのは、エミリーナ・ミルド公爵令嬢。その隣のアイリーン・カサット公爵令嬢が
「貴女が『午前0時のシンデレラ』だったんだ。綺麗ね」
「本当に美しい」
最後にローラン・ハイネ大公令息が口にした言葉に全員が頷いている。
「ありがとうございます。でも、皆さん何故こちらに?」
「あのね、従兄弟から頼まれたんだよ。君に何かあったら助けるように」
そういったのはルミエル様。彼とローラン様は王子殿下とは従兄弟同士。国王陛下には3人の弟がいて、一人が大公家を継いで、もう一人は公爵家に婿に入った。もう一人は確か第一王子と同じ年で、隣国に遊学していると聞いている。
王子殿下がどうやら高位貴族の令嬢令息に声をかけてくれたらしい。
水を被った私はお風呂に入って、元の髪に戻ってしまい。伊達眼鏡も外してしまっているから、素顔を見せている。
屋敷の使用人ら以外で、じっと見られることに慣れていない私は、少し恥ずかしかった。
「もったいないな。こんなに美しい容姿なのに、どちらに似ているの。公爵かな?」
ルミエル様のその言葉が引き金になって、私は気分が悪くなっていった。段々青ざめていく私の姿に気付いてくれたのは、
ライザス・ルクド
薬学の教授だった。
109
あなたにおすすめの小説
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。
【完結】祈りの果て、君を想う
とっくり
恋愛
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。
静かに咲く野花のような癒しを湛える姉・リリエル。
騎士の青年・ラズは、二人の姉妹の間で揺れる心に気づかぬまま、運命の選択を迫られていく。
そして、修道院に身を置いたリリエルの前に現れたのは、
ひょうひょうとした元軍人の旅人──実は王族の血を引く男・ユリアン。
愛するとは、選ばれることか。選ぶことか。
沈黙と祈りの果てに、誰の想いが届くのか。
運命ではなく、想いで人を愛するとき。
その愛は、誰のもとに届くのか──
※短編から長編に変更いたしました。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]
風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが
王命により皇太子の元に嫁ぎ
無能と言われた夫を支えていた
ある日突然
皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を
第2夫人迎えたのだった
マルティナは初恋の人である
第2皇子であった彼を新皇帝にするべく
動き出したのだった
マルティナは時間をかけながら
じっくりと王家を牛耳り
自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け
理想の人生を作り上げていく
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる