【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる

春野オカリナ

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アリスティア編

公爵家

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 この学院の王族だけが集められるクラスに何故、私がいるのかと言えば、クロムウェル公爵家は第二の王家と呼ばれているからで。
 
 何代か毎に王子や王女が婿入りや降嫁している。本当なら母の代で王家の王子と結婚するはずが、丁度いい年回りの男子がいなかったから父と結婚したのだ。

 実は私の代の候補者の王族は3人いる。

 ルミエル様、ローラン様そして一番下の王弟殿下名前は確かレイラン様だったと覚えている。

 ケロイド様は所謂、仮の婚約者。正式には婚約を結んでいない。ケロイド様の行動次第で終わる関係なのだと両親から聞かされていないのだろうか?

 公爵家の役目は『貴族への救済』領地を災害などで立て直しが必要になった貴族に無利子で金と人員を貸し出すのだ。その財源は公爵家が幅広い商団をいくつも持っており、他国からの輸入製品を取り扱う店舗も出しているその収益から。

 あくまでも仮の処置で、延々と援助する訳ではない。期限を設けてその間に立て直せなければ関係は終わりなのだ。災害が酷い場合、国庫の予算では補いきれないから、公爵家が立て替えている。だから、王家の財布という役割。勝手に散財した貴族は救済の対象には当然ならない。

 所謂、王家の別財源として存在している。だから社交活動も慈善活動も大切で、当主となる者は幼い頃から人に対する奉仕を学ばされる。

 質素倹約が公爵家の家訓なのだが、父は愛人の為にその金を使っている。これがどういう事なのか分からないはずもないのだが、跡取りの私としては頭の痛い存在でしかない。

 祖父にも何度も手紙を書いているが、返事はいつも同じだった。

 『待て』

 ただそう書いている。祖父は一体何を待っているのだろう。




 クラスメイトが協力してくれるようになってから、私はエリーゼに煩わされずに学院生活を送れるようになった。

 朝は二人以上で迎えに来てくれていて、昼は皆で王族専用のカフェラウンジで昼食を摂っている。そして帰りは先生が停留所まで送ってくれる。

 停留所までの道のりは短いのだが、私はもっと複雑な道なら良かったのに。そう思うほど先生と過ごす時間が大切だった。

 このまま、何事もなく月日が流れていくと、単純に考えていた私は甘かった。

 校内には付き添いの侍女や護衛が立ち入れない場所もあり、その日は期末試験の勉強をするために図書館で過ごしていた。

 宿直の教員から校内を閉めるので、早く自宅に帰る様に促され、私は停留所に急いだ。

 途中、薬草の温室が気になり、温室に入った途端誰かに閉じ込められた。

 「おい、やったか。あの女を閉じ込めたんだな。これで一晩、ここであの女と過ごしたら公爵家の伝手で、推薦状を書いてやる」
 
 温室の外で、不穏な言葉を言っているのはケロイド様。

 大変、どうしよう。ここから早く出ないと、何をされるか分からない。

 焦って私はその辺にある棒切れを手に持った。こんなことなら、護身術でも習っておけば良かった。

 複数の男の声と足音に怯えながら、温室内の井戸の近くで身を潜めていた。

 ケロイド様以外の見知らぬ男が入ってきて辺りを隈なく探し出した。

 誰か助けて、怖い。嫌だ。

 私の頭の中に浮かんだのは、先生の姿だった。

 お願い、先生。助けて!

 心の中で祈る様に、迫ってくる男達からどうやって逃げるか考えていた。

 私が身を潜めている井戸の近くまで男が迫っているのを感じて、もうダメだ。諦めかけた時、温室の扉から他の生徒と先生の声が聞こえた。

 「何をしている。ここは王家の温室で特別クラスの生徒以外の立ち入りは禁止だ。まさか薬草を盗もうとしたのではないだろうな!」

 大きな声で怒鳴っているのは先生だった。

 私はホッと胸を撫で下ろして、井戸の影からそのやり取りをこっそり覗いていた。
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