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アリスティア編
出自の秘密
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乳母と家令の話を聞いた私は動揺を隠せなかった。
その夜の晩餐でメッシ―博士があることを口にした。
「そういえば、昔流行った病の中で、色々と誤った噂が広まったことがあり、近年は正しい知識をという事で、新しい医学書が刊行されることになりました」
「ほう、それはどんなものですか?」
「例えば、100年程前に云われていた流行性耳下腺炎ですが、17年程前に訂正された箇所があります。成人男性がかかった場合、子共が作れない可能性があるのですが、以前はこの病気にかかった男性は不能者の烙印を押されていましたが、実際に20年程前にこの病気に子供の頃にかかった男性は子供を授かりました。他にも同じ病にかかった人が子供を授かった事から、間違いだと分かり、訂正されたのです。他にも……」
私はその話を聞いて持っていたナイフを床に落とした。
カシャーンッ
食堂の大理石の床に響き渡る不快な音。それと同時に冷や汗が流れるのを感じながら、血の気が引いていくのが分かる。
乳母から聞いた母の秘密……私の生まれた意味が……
ローフェルと結婚を一週間後に控えたある夜、オーウェンと母は初めて関係を持った。初めての相手はオーウェンだと言い張って、乳母が止めるのも聞かずにあの別邸で密会したのだ。
だが、母のしたことはそれだけでは済まなかった。母は父と結婚した後、避妊薬を飲んでいる。避妊薬は確実性のあるものではないが、数か月後に身籠った母は喜びに溢れていたという。もし懐妊していたら流産するかもしれないのに、自分の体で試したのだ。オーウェンが正常者だという証明をするために。
オーウェンの子供を身籠ることができたのだと。ただ自己満足の為に。
トーマスやベラの話からも母は若い頃、御伽噺のお姫様を夢見ていたのかもしれない。でも現実には多くの人を巻き込んで、娘の人生を狂わせた。自分の結婚が悲劇的なものだと倒錯して酔いしれていたのかもしれない。
こんな事を知る子供を憐れだと思わなかったのだろうか?
事実なら私はローフェルの子供ではなく、オーウェンの子供という事になる。でも生まれた私の髪は母に似ていて碧の瞳はどちらとも指していない。
何故ならローフェルの瞳も同じ碧だから。母と同じ色の目。
ガタガタと体が震えている。祖父が
「アリスティア、どうしたのだ。不作法だぞ」
と咎めている声が段々遠のいていく。
自分の出自の秘密を聞いた私は、母の言葉を思い出す。
「貴女の父親の名前はオーウェンよ」
無邪気に笑う子供の様な母を見たような気がする。
これもメッシ―先生が言うように脳が見せる幻覚なのだろうか?
それとも私の中にある本当の母の姿なのだろうか?
ただ、私の中にはある思いがあった。もう一度父と向き合おう。会って話を聞きたい。本当は何を考えているのか。
気を失って自室で目が覚めた時、私は
「父に会いたい。会って話がしたい」
そう祖父に告げた。
その願いは叶えられ、二日後に父はまたマリエルとエリーゼを連れてやってきたのだ。
その夜の晩餐でメッシ―博士があることを口にした。
「そういえば、昔流行った病の中で、色々と誤った噂が広まったことがあり、近年は正しい知識をという事で、新しい医学書が刊行されることになりました」
「ほう、それはどんなものですか?」
「例えば、100年程前に云われていた流行性耳下腺炎ですが、17年程前に訂正された箇所があります。成人男性がかかった場合、子共が作れない可能性があるのですが、以前はこの病気にかかった男性は不能者の烙印を押されていましたが、実際に20年程前にこの病気に子供の頃にかかった男性は子供を授かりました。他にも同じ病にかかった人が子供を授かった事から、間違いだと分かり、訂正されたのです。他にも……」
私はその話を聞いて持っていたナイフを床に落とした。
カシャーンッ
食堂の大理石の床に響き渡る不快な音。それと同時に冷や汗が流れるのを感じながら、血の気が引いていくのが分かる。
乳母から聞いた母の秘密……私の生まれた意味が……
ローフェルと結婚を一週間後に控えたある夜、オーウェンと母は初めて関係を持った。初めての相手はオーウェンだと言い張って、乳母が止めるのも聞かずにあの別邸で密会したのだ。
だが、母のしたことはそれだけでは済まなかった。母は父と結婚した後、避妊薬を飲んでいる。避妊薬は確実性のあるものではないが、数か月後に身籠った母は喜びに溢れていたという。もし懐妊していたら流産するかもしれないのに、自分の体で試したのだ。オーウェンが正常者だという証明をするために。
オーウェンの子供を身籠ることができたのだと。ただ自己満足の為に。
トーマスやベラの話からも母は若い頃、御伽噺のお姫様を夢見ていたのかもしれない。でも現実には多くの人を巻き込んで、娘の人生を狂わせた。自分の結婚が悲劇的なものだと倒錯して酔いしれていたのかもしれない。
こんな事を知る子供を憐れだと思わなかったのだろうか?
事実なら私はローフェルの子供ではなく、オーウェンの子供という事になる。でも生まれた私の髪は母に似ていて碧の瞳はどちらとも指していない。
何故ならローフェルの瞳も同じ碧だから。母と同じ色の目。
ガタガタと体が震えている。祖父が
「アリスティア、どうしたのだ。不作法だぞ」
と咎めている声が段々遠のいていく。
自分の出自の秘密を聞いた私は、母の言葉を思い出す。
「貴女の父親の名前はオーウェンよ」
無邪気に笑う子供の様な母を見たような気がする。
これもメッシ―先生が言うように脳が見せる幻覚なのだろうか?
それとも私の中にある本当の母の姿なのだろうか?
ただ、私の中にはある思いがあった。もう一度父と向き合おう。会って話を聞きたい。本当は何を考えているのか。
気を失って自室で目が覚めた時、私は
「父に会いたい。会って話がしたい」
そう祖父に告げた。
その願いは叶えられ、二日後に父はまたマリエルとエリーゼを連れてやってきたのだ。
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