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父と娘
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ジョゼフィーネの額に口付けを一つ落として、エルリックは
「ジョゼフィーネも侯爵もお互いに話があるでしょうから、俺と宰相閣下は、別室にいます。何かあったら、声をかけてね。ジョー」
いつもと同じ表情で告げて、クリーク公爵と共にサロンを後にした。
後に残った二人は、何から話していいのか、戸惑っていた。思い空気の中、先に声を発したのは、ウィストンだった。
「ジョゼフィーネ、先に謝らせて欲しい。ヴィオレットと別れなければならなくなった時、君が彼女のお腹にいることは、誰も知らなかったんだ。もし、知っていたら、彼女を手放したりしなかった」
「……」
「私は、子供が作れない身体になったんだ。19年前にある毒を盛られて、生死をさ迷った時にね。だから、跡継ぎから外された。ダンドーラ公爵家は弟が継いでいる。クリーク公爵令嬢だったヴィオレットに辛い思いをさせたくなかった。今思えば、愚かな選択をしたと思うよ。私は馬鹿だった。」
「……」
「私は身体が回復すると騎士団を退職し、外交官の道に進むため、隣国への使節団に加わり、この国を離れた。彼女からは連絡がなかった。まあ、一方的に婚約を解消した相手に何も言うことはないだろう」
「何故、話し合いをされなかったのですか?」
「話し合いが出来る状態ではなかった。彼女には、私に毒を盛った嫌疑がかかっていたんだ。」
驚いたジョゼフィーネの顔色は蒼白になっていた。
「そ、そんな」
「違う、彼女じゃなかった。誤解だったんだ。彼女は、ヴィオレットは、毒に気づいて毒消しを飲ませたんだ。彼女の家は、代々、宰相を務めているから、毒にも耐久性があったし、知識もあった。だから私を助けられたんだ」
「では、誰が毒を…」
「私の家に入り込ませたメイドの仕業だった。ある人間から指示されてやったと」
「それは、誰です」
「第二王子派の侯爵家の者だった。当時、第一王子と第二王子の派閥争いがあって、第二王子が隣国へ婿入りしたので収まったと思われていた矢先だった。」
「第二王子派からすれば、私の家は代々外交官が多く、父も外務大臣だったから、父の差し金だと思われていた。実際は、第二王子からの申し出だった。彼は、国の行く末を案じて、王位継承権を手放したんだ」
「いつ、私の事を知ったのですか?」
「あれは君が3歳の頃、クリーク公爵家に遊びに来ていただろう。あの時、私もセドリックに用があって、偶然見かけたんだ。ジョゼフィーネ君は、僕の髪と瞳の色を持って生まれたんだ。だから、一目見て、私の子だと確信した」
「では、名乗り出なかったのは…」
「その時には、彼女はアンサンブル侯爵に嫁いでいた。取り戻すにしても私の当時の身分では、難しかったし、なによりヴィオレットとジョゼフィーネ、君達が幸せならそれでいいと思ってたんだ」
「でも実際は…」
「そう、君達は幸せではなかった。だから、私はこっそり会っていたんだ。クリーク公爵家で、彼女は一月に一度は必ず里帰りしていたから、セドリックに頼んだ。いつか君達を迎え入れる準備をしながらね。」
「でも、準備が出来た時には、ヴィオレットはこの世の人では亡くなった。私はまた、間に合わなかった。葬儀にさえ出られなかった」
淡々と語るウィストンには、いつもの快活さはなかった。
苦痛に充ちた表情からは、喪った恋人への後悔と懺悔しか感じられなかった。
ジョゼフィーネは、初めて対面する父に、なんと声を掛ければいいのか分からなかった。
「ジョゼフィーネも侯爵もお互いに話があるでしょうから、俺と宰相閣下は、別室にいます。何かあったら、声をかけてね。ジョー」
いつもと同じ表情で告げて、クリーク公爵と共にサロンを後にした。
後に残った二人は、何から話していいのか、戸惑っていた。思い空気の中、先に声を発したのは、ウィストンだった。
「ジョゼフィーネ、先に謝らせて欲しい。ヴィオレットと別れなければならなくなった時、君が彼女のお腹にいることは、誰も知らなかったんだ。もし、知っていたら、彼女を手放したりしなかった」
「……」
「私は、子供が作れない身体になったんだ。19年前にある毒を盛られて、生死をさ迷った時にね。だから、跡継ぎから外された。ダンドーラ公爵家は弟が継いでいる。クリーク公爵令嬢だったヴィオレットに辛い思いをさせたくなかった。今思えば、愚かな選択をしたと思うよ。私は馬鹿だった。」
「……」
「私は身体が回復すると騎士団を退職し、外交官の道に進むため、隣国への使節団に加わり、この国を離れた。彼女からは連絡がなかった。まあ、一方的に婚約を解消した相手に何も言うことはないだろう」
「何故、話し合いをされなかったのですか?」
「話し合いが出来る状態ではなかった。彼女には、私に毒を盛った嫌疑がかかっていたんだ。」
驚いたジョゼフィーネの顔色は蒼白になっていた。
「そ、そんな」
「違う、彼女じゃなかった。誤解だったんだ。彼女は、ヴィオレットは、毒に気づいて毒消しを飲ませたんだ。彼女の家は、代々、宰相を務めているから、毒にも耐久性があったし、知識もあった。だから私を助けられたんだ」
「では、誰が毒を…」
「私の家に入り込ませたメイドの仕業だった。ある人間から指示されてやったと」
「それは、誰です」
「第二王子派の侯爵家の者だった。当時、第一王子と第二王子の派閥争いがあって、第二王子が隣国へ婿入りしたので収まったと思われていた矢先だった。」
「第二王子派からすれば、私の家は代々外交官が多く、父も外務大臣だったから、父の差し金だと思われていた。実際は、第二王子からの申し出だった。彼は、国の行く末を案じて、王位継承権を手放したんだ」
「いつ、私の事を知ったのですか?」
「あれは君が3歳の頃、クリーク公爵家に遊びに来ていただろう。あの時、私もセドリックに用があって、偶然見かけたんだ。ジョゼフィーネ君は、僕の髪と瞳の色を持って生まれたんだ。だから、一目見て、私の子だと確信した」
「では、名乗り出なかったのは…」
「その時には、彼女はアンサンブル侯爵に嫁いでいた。取り戻すにしても私の当時の身分では、難しかったし、なによりヴィオレットとジョゼフィーネ、君達が幸せならそれでいいと思ってたんだ」
「でも実際は…」
「そう、君達は幸せではなかった。だから、私はこっそり会っていたんだ。クリーク公爵家で、彼女は一月に一度は必ず里帰りしていたから、セドリックに頼んだ。いつか君達を迎え入れる準備をしながらね。」
「でも、準備が出来た時には、ヴィオレットはこの世の人では亡くなった。私はまた、間に合わなかった。葬儀にさえ出られなかった」
淡々と語るウィストンには、いつもの快活さはなかった。
苦痛に充ちた表情からは、喪った恋人への後悔と懺悔しか感じられなかった。
ジョゼフィーネは、初めて対面する父に、なんと声を掛ければいいのか分からなかった。
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