【完結】旦那様、溺愛するのは程々にお願いします♥️仮面の令嬢が辺境伯に嫁いで、幸せになるまで

春野オカリナ

文字の大きさ
21 / 61

父と娘

しおりを挟む
 ジョゼフィーネの額に口付けを一つ落として、エルリックは

 「ジョゼフィーネも侯爵もお互いに話があるでしょうから、俺と宰相閣下は、別室にいます。何かあったら、声をかけてね。ジョー」

 いつもと同じ表情で告げて、クリーク公爵と共にサロンを後にした。

 後に残った二人は、何から話していいのか、戸惑っていた。思い空気の中、先に声を発したのは、ウィストンだった。

 「ジョゼフィーネ、先に謝らせて欲しい。ヴィオレットと別れなければならなくなった時、君が彼女のお腹にいることは、誰も知らなかったんだ。もし、知っていたら、彼女を手放したりしなかった」

 「……」

 「私は、子供が作れない身体になったんだ。19年前にある毒を盛られて、生死をさ迷った時にね。だから、跡継ぎから外された。ダンドーラ公爵家は弟が継いでいる。クリーク公爵令嬢だったヴィオレットに辛い思いをさせたくなかった。今思えば、愚かな選択をしたと思うよ。私は馬鹿だった。」

 「……」

 「私は身体が回復すると騎士団を退職し、外交官の道に進むため、隣国への使節団に加わり、この国を離れた。彼女からは連絡がなかった。まあ、一方的に婚約を解消した相手に何も言うことはないだろう」

 「何故、話し合いをされなかったのですか?」

 「話し合いが出来る状態ではなかった。彼女には、私に毒を盛った嫌疑がかかっていたんだ。」

 驚いたジョゼフィーネの顔色は蒼白になっていた。

 「そ、そんな」

 「違う、彼女じゃなかった。誤解だったんだ。彼女は、ヴィオレットは、毒に気づいて毒消しを飲ませたんだ。彼女の家は、代々、宰相を務めているから、毒にも耐久性があったし、知識もあった。だから私を助けられたんだ」

 「では、誰が毒を…」

 「私の家に入り込ませたメイドの仕業だった。ある人間から指示されてやったと」

 「それは、誰です」

 「第二王子派の侯爵家の者だった。当時、第一王子と第二王子の派閥争いがあって、第二王子が隣国へ婿入りしたので収まったと思われていた矢先だった。」

 「第二王子派からすれば、私の家は代々外交官が多く、父も外務大臣だったから、父の差し金だと思われていた。実際は、第二王子からの申し出だった。彼は、国の行く末を案じて、王位継承権を手放したんだ」

 「いつ、私の事を知ったのですか?」

 「あれは君が3歳の頃、クリーク公爵家に遊びに来ていただろう。あの時、私もセドリックに用があって、偶然見かけたんだ。ジョゼフィーネ君は、僕の髪と瞳の色を持って生まれたんだ。だから、一目見て、私の子だと確信した」

 「では、名乗り出なかったのは…」

 「その時には、彼女はアンサンブル侯爵に嫁いでいた。取り戻すにしても私の当時の身分では、難しかったし、なによりヴィオレットとジョゼフィーネ、君達が幸せならそれでいいと思ってたんだ」

 「でも実際は…」

 「そう、君達は幸せではなかった。だから、私はこっそり会っていたんだ。クリーク公爵家で、彼女は一月に一度は必ず里帰りしていたから、セドリックに頼んだ。いつか君達を迎え入れる準備をしながらね。」

 「でも、準備が出来た時には、ヴィオレットはこの世の人では亡くなった。私はまた、間に合わなかった。葬儀にさえ出られなかった」
  
 淡々と語るウィストンには、いつもの快活さはなかった。

 苦痛に充ちた表情からは、喪った恋人への後悔と懺悔しか感じられなかった。

 ジョゼフィーネは、初めて対面する父に、なんと声を掛ければいいのか分からなかった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた

紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。 流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。 ザマアミロ!はあ、スッキリした。 と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?

女性執事は公爵に一夜の思い出を希う

石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。 けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。 それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。 本編4話、結婚式編10話です。

唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました

ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。 けれどその幸せは唐突に終わる。 両親が死んでから何もかもが変わってしまった。 叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。 今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。 どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥?? もう嫌ーー

世界で1番幸せな私~イケメン御曹司の一途で情熱的な溺愛に包まれて~

けいこ
恋愛
付き合っていた彼に騙され、借金を追った双葉。 それでも前を向こうと、必死にもがいてた。 そんな双葉に声をかけてくれたのは、とてつもなくイケメンで、高身長、スタイル抜群の男性―― 常磐グループの御曹司 常磐 理仁だった。 夢みたいな展開に心は踊るのに…… 一途に愛をくれる御曹司を素直に受け入れられずに、双葉は離れることを選んだ。 つらい家庭環境と将来の夢。 そして、可愛い我が子―― 様々な思いが溢れ出しては絡まり合う複雑な毎日。 周りとの人間関係にも大いに悩みながら、双葉は愛する人との幸せな未来を手に入れることができるのか…… 松雪 双葉(まつゆき ふたば)26歳 ‪✕‬ 常磐 理仁(ときわ りひと)30歳

聖女でしたが国に使い捨てされたので、代わりに魔王にざまぁしてもらいました。

柿崎まつる
恋愛
癒しの聖女として国に仕えるエルヴィーラ。死ぬまで搾取された彼女が次に目を覚ましたのは敵であるはずの魔王の居城だった。ドアマット聖女が超絶美形の魔王に溺愛されて幸せになる話。気持ちちょろっとグロあります。苦手な方は閲覧にご注意ください。ムーンライトノベルズにも掲載しています。

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

束縛婚

水無瀬雨音
恋愛
幼なじみの優しい伯爵子息、ウィルフレッドと婚約している男爵令嬢ベルティーユは、結婚を控え幸せだった。ところが社交界デビューの日、ウィルフレッドをライバル視している辺境伯のオースティンに出会う。翌日ベルティーユの屋敷を訪れたオースティンは、彼女を手に入れようと画策し……。 清白妙様、砂月美乃様の「最愛アンソロ」に参加しています。

鉄壁騎士様は奥様が好きすぎる~彼の素顔は元聖女候補のガチファンでした~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
令嬢エミリアは、王太子の花嫁選び━━通称聖女選びに敗れた後、家族の勧めにより王立騎士団長ヴァルタと結婚することとなる。しかし、エミリアは無愛想でどこか冷たい彼のことが苦手であった。結婚後の初夜も呆気なく終わってしまう。 ヴァルタは仕事面では優秀であるものの、縁談を断り続けていたが故、陰で''鉄壁''と呼ばれ女嫌いとすら噂されていた。 しかし彼は、戦争の最中エミリアに助けられており、再会すべく彼女を探していた不器用なただの追っかけだったのだ。内心気にかけていた存在である''彼''がヴァルタだと知り、エミリアは彼との再会を喜ぶ。 そして互いに想いが通じ合った二人は、''三度目''の夜を共にするのだった……。

処理中です...