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新しい出会い 2
しおりを挟む「ここ、誰か住んでるの?」リリアが精霊に尋ねると、精霊は扉を開けた。
そこには、70代くらいの男性が待っていたかのように部屋の中で立っていた。
「よく来たね。いらっしゃい。」
優しそうな眼差しの男性がリリア達に声をかけた。
その男性の顔を見た瞬間、全員がこの男性はリリアの親族だと直感した。
リリアによく似た栗色の髪と、目の色。
リリアによく似た目元の形。
リリアの持っている雰囲気によく似ている。
「初めまして、わたくしリリア・アルバと申します。夜分の訪問申し訳ございません。
今回こちらに訪問した理由はある植物の栽培方法を教えていただきたく参った次第です。」
リリアはしっかりと礼をしながら言葉を発する。
「顔をよく見せてくれ、リリア。」
「え?」
リリアが顔を上げると優しい視線が自分の視線と合った。
「ああ、マリアによく似ている。私の娘、お前の母さんのことだ。」
「え?と、と言うことはあなた様は私の…。」
「君の祖父にあたる。会えると思っていなかった。精霊が許してくれたんだね。」
応接室に通される。
「この通り、客人は来ないのでおもてなしは出来ないんだ。すまない。」
「いえ、こちらが勝手に押しかけたのでお構いなく。」
ロイが珍しく人に配慮している。
机を囲み、お茶を入れて全員が一息ついた。
「家のものが誰もいなくて私一人だが、精霊達が色々と力を貸してくれるから何とか暮らしているんだ。
ああ、私の紹介が遅れたね、私はゼロ・イアンだ。
一応ここは代々イアン家が収めている地になるが、それももう私の代で終わりだ。そうなったら立地の兼ね合いでアルバ家とウェイズ家がいらぬ争いの火種を作るかもしれないから、遺産らしい遺産はないようにしているところだ。
私が亡き後は精霊達も移動するよう伝えている。」
「どのようにお呼びすればよろしいでしょうか?」リリアは確認する。
「ゼロで良い。ここにずっと住んでいると貴族ということを忘れていた。はははは。
そうだな、リリアにはおじいさまと言ってもらえると嬉しいがな。」ゼロは優しく話す。
「で、ではおじいさま。と呼ばせていただきます。あの、色々聞きたいことがあります。一番はこの薬草の栽培方法です。」
リリアは父親からもらった薬草の種を見せた。
「ああ、これは確かにここで栽培している薬草だ。特殊なものだから上手く育ちきらなかっただろう?」
「ええ。そうなんです。」
「そうだな。薬草の話の前に先に私や精霊達の話をさせてもらおうか。
ここにいる皆さんは多少知っているかもしれないが、イアン家は代々この土地を治めてきた。
この地は精霊の加護が強く、珍しい宝石や薬草が特産だった。
人々のためになるのならと、精霊に協力してもらい様々な品を作ってきた。
この薬草やリリアがしているイヤリングのような宝石もその一つだ。
しかし、人は欲深いもので、それを自分だけの利益や欲のために利用する輩がどうしても出てきてしまってね。
戦争の兵器に利用されかねない品もあったから、この地自体を何度も侵略されそうにもなった。
そして思ったんだよ。
この地の存在自体が争いの火種だと。
精霊の保護のためにも、人との交流は極力避けてきたからこの地で生活する者も少なかった。
最後は私と妻と娘のマリアだけになった。
妻は病で若くして亡くなってしまったんだが、マリアの人生を考えると、この地を出て一般の貴族として生きるのも一つと考えた。
一応貴族だからね。
王族はマリアのような世間知らずな子が嫁ぐと大変だから、
ウェイズ家とアルバ家を内密に偵察したんだ。
ウェイズ家は魔力を重んじる家系だった。
マリアの魔力はイアン家独特のものだから、搾取対象となり得る。
その点アルバ家は魔力の強い者を輩出する家系だが、魔力だけに頼るような家柄ではなかった。
そこの長男に合わせたところ、えらくマリアを気に入ってね。
この男ならマリアを幸せに出来ると思い嫁がせた。
しかし、不慮の事故でマリアは死んだ。
ケントとリリアという孫がいるのは知っていたが、この地を終わらせるためにも交流はしないように決めていた。だからマリアが亡くなった時も顔を出さなかった。
しかし、その後私の耳に入ってくる話はあまり良いものではなかったね。
マリアが亡くなりアルバ家の家族のバランスが崩れたのは仕方がないが、リリア。君の話は違和感ばかりだった。
まるで、何かを隠すために幼い子供を押さえつけているような気がしていた。
そこにいる天使の像ような精霊がいるだろう?
この子は元々マリアのそばにいた精霊だ。マリアが亡くなった後しばらくしてこの地に帰ってきたんだ。悲しい顔をしてね。
精霊は気まぐれだが、主人(あるじ)と認めると様々な力を貸してくれる。
マリアが亡くなった時、孫の見守りとしてアルバ家に留まると思っていたんだが。」
「私とケントお兄様の日々を見ていれば、精霊が嫌気をさして出て行くのは当たり前なほど私はひどい有様でした。」
リリアはため息をつく。
「まあ、そんな所だろうと予測はしていたよ。
噂ではリリア、君は魔力も器もないと言われていた。
それはおかしいんだ。我々の家系は必ず魔力を所持するはずだ。覚醒する年齢にばらつきはあるが、精神が成熟するにつれ発動するんだ。
だから、どうしてもリリアをわざと押さえ込むような環境にしているように勘ぐってしまったんだ。」
「私もそのような気がしていました。周囲の人間があまりにもひどい態度でしたから。」
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