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ダンの思い
しおりを挟むダンは珍しくしんみりと世話係に語り始めた。
世話係も驚きつつ、ダンの声に耳を傾ける。
「あのよう…。
オレは希望とか未来とか都合のいい言葉は気持ち悪くて毛嫌いしてたんだ。
けどな、変なんだが、もうこの人生が終わるって頃に、自分が死んだ後こうなっていて欲しいって未来が頭から離れねえんだ。」
「み、未来…ですか?」
「オレは裁判で処刑だ。こんなちっぽけな存在いつ消えても世の中変わらねえ。
ただ、あいつらが努力すればオレの処刑だけで食い止められると思うんだよ。
お嬢ちゃんはバスク地区に残り、薬草事業は何らかの形で継続となればめっけもんだ。
しっかしなあ…。
一部の薬草は精霊のチビがいねえと育たねえのよ。」
ダンと世話係は精霊をじっと見る。
精霊は二人から見られてむすっとした表情になりそっぽを向いた。
「チビがお嬢ちゃんを主(あるじ)に選べばいいんだが、チビにも考えがあるみたいでな。
主でなくても協力はしてくれるだろうが、チビの思いにしっかり気づいてやる奴があんまりいねえのよ。
若すぎたり年寄りすぎたりでな。チビにも好みがあるようだ。」
まだ精霊はそっぽを向いている。
「せ、精霊様はあなた様がお好きなようです。」
「まあ、でもオレはもういなくなる。
それでな、お前がチビの理解者になってバスク地区に来てくれたらって未来がというか期待、いや願い?依頼か?
まあ、そう言うことだ。」
「????わ、我がバスク地区に?」
「修道院でも良いし、ビッツ家のラジオの屋敷の人間でも良い。
お前がいてくれたらオレは安心して地獄でゆっくりできる。」
「わ、我は…。何もできない出来損ないです。き、記録玉も祖母の言う通り仕事として作るのは考えていません…。」
「あ?記録玉なんて当てにしてねえよ。
そんなものなくてもマーガレットっていう化け物がいてるから情報関係は何とかなる。
ちげえよ。
オレが言ってるのはお前の人間性だ。これでも色んな人間を見てきた。
外面は良いが根性は腐りきっているやつなんて掃いて捨てるほどだ。
でもな、たまーに道に迷って失敗しても戻ってこれる強い奴がいるんだ。
そう言うやつは馬鹿で弱くても信用できる。お前もだ。」
「そ、そんな…。わ、我は、そんな風に言われたことあ、ありません。我は…。」
世話係は目からほろほろと涙が伝っていた。
初めて人から評価してもらえたことで嬉しさと驚きが一気に押し寄せ混乱している。
「ああ、お前、お嬢ちゃんに似ているな。なあ、チビ。」ダンは精霊に話しかける。
精霊はそっぽを向いていたがジーと世話係を観察し始め、手で『ちょっとだけ』のジェスチャーを見せていた。
「何が正しいか自分で考えられる奴は強い。オレはそれができない奴だった。考えることから逃げてたからな。
まあ、これはオレの夢見物語だけどな。
ちょっとこの話考えてみてくれ。
今日の話はチビからマーガレットに伝えてもらう。チビ、頼むぞ。」
精霊は真顔で頷いていた。
「そう言うことだ。お前そろそろ退室してすぐ顔を洗ってこい。
最近妙な時間帯に俺を見張る偵察の職員が何人かいる。
多分教会に買収されている奴らだ。
お前の様子を見て俺がお前を洗脳しているって報告されたら面倒だからな。じゃあな。」
「そ、そうなのですか?気がつかなかった…。わ、わかりました。で、では失礼します。」
世話係はダンと精霊にペコリとお辞儀をして部屋を出た。
精霊がダンを心配そうに見つめる。
「何でだろうなあ。あいつがいるとどうも、気を許してしまう。住む世界が違いすぎるのにな。」
精霊は首を傾げている。
「まあ、処刑されてもお嬢ちゃんのおかげで悪くない人生って割り切れる。」
精霊も窓から外へ出て行き、マーガレットの元へ飛んでいった。
ダンは特にやり残したこともねえな。と思いながら天井を眺めていた。
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