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有子が目覚めると、石壁と石の床が目に入る。しかも、手足を縛られている感触もあった。急いで周囲を見回すと、レーム子爵の三人の従者たちも同じ部屋にいるらしい。
「おそらく、レーム子爵はウダーイにはめられたのでしょう。我々従者とは別の獄舎に監禁されているのでしょうが……。しかし、貴族相手にここまでやるとは、ウダーイも思い切りましたね」
従者の一人がつぶやく。
「しかも、我々の手足を縛っている縄、おそらく魔法の縄でしょう。魔術師対策のための」
そこまで言ったとき、牢の扉が開いて、鎧を着た牢番と思われる初老の男が現れた。
「出ろ。おまえらは、皇族と上級貴族以外の出入りが禁じられているウダーイ殿下の別荘付近の停車場に、子爵という下級貴族の身分でありながら、無断で侵入した。その罪により、ウダーイ殿下が直々にお裁きになる。神妙にいたせ」
従者三人と有子は、牢とは別棟にある取調室に連れていかれた。室内は、有子がカイゼル帝国で最初に連れてこられた取調室とほぼ同じだ。違うところといえば、ウダーイの座っている机がピカピカに磨き上げられていることぐらいだ。おそらく、ウダーイは室内の掃除を部下に徹底しているのだろう。ウダーイの周囲には、鎧を着て剣を持った私兵たちがみがまえている。四人がウダーイの机の前に並ばされたところで、ウダーイが口を開く。
「で、おまえら、この俺様の別荘に何しに土足で踏み込みやがったんだ? ことと次第によっちゃあ、皇子である俺様の権力で、おまえらをこっそり消すこともできるんだぜ」
ウダーイはどこまでも傲慢だった。そのうえ、冷血そうな目つきで、有子たちをねめつける。有子は一瞬、ウダーイの攻撃的な態度と私兵たちの殺気に呑まれそうになったが、ここで弱気になれば即座に殺されるような気がしたので、臆せずにくってかかる。
「……その前に、エッちゃんをどこにやったんですか? 知らないとは言わせませんよ。レーム子爵家に仕えている侍女です。ウダーイ殿下が今朝、ファルコ伯爵家のご子息に扮して、さらっていったのではないですか?」
「はぁ? 俺様はそんな娘、知らんぞ。だいたい、俺様が今まで付き合ったり、妾にしたりした娘は、数え切れないほどいるんだ。当然、その中には下級貴族の侍女だって含まれている。だが、誘拐なんて非合法な手段ではなく、皆、金を払って合法的な手段で買っているんだ。俺様に金で買ってもらえて愛されているんなら、娘も満足だろうが」
そこでウダーイは「カカカ」と哄笑をあげる。
(こいつ、偽善者のクチャーイと違って、自分が暴君だってことを隠そうともしないのか。こんなやつが次期皇帝になれば、カイゼル帝国も終わりだな……)
有子ははらわたが煮えくりかえる思いだったが、ぐっとこらえる。ここで怒りにまかせてウダーイに罵詈雑言を浴びせかければ、私兵たちに斬り殺す口実を与えるだけだ。もちろん、従者たちもそれがわかっているとみえ、あえて沈黙している。
「それで、おまえら、何か申し開きはあるかと聞いてんだ。無いなら、全員斬り殺すまでだがな。死体は、飼っている虎にでも食わせておけば済む。虎も人肉に飢えている頃だろうしな」
ウダーイは酷薄な笑みを浮かべる。従者たちは青くなってガタガタ震えていた。有子は必死で打開策を考えていると、ふと閃いたことがあった。
(そういえば、あたしたちが別荘に来る前に、露店に立ち寄った際に、軽食を食べていると昏睡してしまったんだっけ。おおかた、眠り薬を盛られたんだろうけど、露天商がレーム子爵の顔まで覚えているか、あるいは皇族と上級貴族の顔を全て覚えていないとできない芸当だ。上級貴族とその家族が何人いるのかわからないけど、露天商にその全てを記憶できるんだろうか? その点といい、ファルコ伯爵家のご子息に扮してエッちゃんを誘拐したことといい、レーム子爵は誰かにはめられたのではないだろうか?)
そうなると、レーム子爵が失脚して喜ぶやつが犯人ということになる。
(ウダーイの可能性が高いけど、クチャーイ派のレーム子爵に手を出せば、わざわざ自分が犯人だと教えているようなものだ。なら、誰かがウダーイをそそのかしたのだろうか? だとしたら、レーム子爵の政敵か? そういえば、子爵令嬢様が孤児院の貧しさに関心を持ち、孤児院に寄付をしているから、それが気にくわないやつの犯行か?)
だが、いくら考えても、カイゼル帝国に来たばかりで宮廷内の政争に疎い有子には、わかるはずがない。そうこうしているうちに、私兵たちが剣を抜いた。有子が観念して目をつむったとき、ふいにゾフィーの「お待ちください!」と叫ぶ声が聞こえた。ふと、声のしたほうを見やると、取調室の扉の所にゾフィーが立っているではないか。全力で走ってきたのか、「ハァ……ハァ……」と荒い息をしていた。一応、ウダーイが貴族として特別扱いしているのか、有子や従者と違って手足を縛られてはいない。
「その侍女と従者たちに罪はありません……。全て、わたくしめが父に頼みこんで、勝手にやったことです……。虎に食べさせるなら、わたくしだけにしてください……」
「ああ? 何だ、てめぇ? 俺様の裁定にケチをつけるのかよ? なら、てめぇが俺様とデートしてベッドインでもするか? そこまでやったら、従者と侍女は許してやるよ」
ウダーイは好色そうな目でゾフィーをねめつける。有子から見ても、ゾフィーが震えており、二の腕に鳥肌がたっているのがわかる。先日、牢から出してかくまってくれた大恩あるゾフィーを、こんな形でウダーイの犠牲にしてしまって良いのか? それは有子にもわかりきっているのだが、背後の私兵たちの眼力に射すくめられて、有子は動けなかった。それでも口だけは動くので、持てる勇気を総動員して叫ぶ。
「子爵令嬢様とベッドインするぐらいなら、あたしとベッドインしてください。箱入り娘の子爵令嬢様よりも、あたしのテクニックのほうがすごいですよ」
後半は消え入りそうな小声になってしまったが、ウダーイの興味をひくには充分だった。
「ほう、そんなに俺様に抱かれたいのか。なら、望み通り抱いてやるぜ。ただし、縄はほどかねえぞ。魔法で何かされちゃ、たまらんからな」
ウダーイは有子に下卑た笑みを向ける。有子は内心、しまったと思った。魔法を封じている縄をほどいてもらえないのでは、有子に勝ち目はない。
「いや、あたしのテクニックは、むしろ手を使うことにあるんですよ。だから、縄をほどいていただかないことには、テクニックも使いようがないわけでして……」
我ながら苦しい言い訳だと思ったが、これしか思いつかなかったのだから仕方ない。
「ふむ、そんなに言うなら、手でのテクニックがどんなにすごいのか、俺様にわかるように説明してもらおうか? あいにく、貴様の縄をほどくわけにはいかんのでな」
もっとも、有子も自分の貞操がかかっているので、この程度でひるんではいられない。日本にいた頃に、エロい話が大好きな友人から聞いた知識を、総動員しながら話す。
「……ですから、手でこうやると、ああなって、すごく気持ちよくなるわけでして……」
しかし、ウダーイは有子の話を聞いても、すぐに興味を失ってしまったようだ。
「へっ、その程度のテクニックなら、今まで付き合った娼婦に、さんざんやってもらったぜ。もっと俺様を驚かせるような話はないのかよ? 全く、つまんねえ女だな」
「わかりました。とっておきの話をいたしましょう。あたしの生国には、援助交際というものがございます。これは、未成年の女の子の下着を売買するものでして……」
「な、何? 未成年女子だと? 倫理にうるさく、『男女七歳にして席を同じゅうすべからず』という教義が徹底しているカイゼル帝国の皇族や貴族には、実に興味深い話だ。もっと聞かせろ」
ウダーイの食いつきぶりを見て、有子は心中で快哉を叫びたくなった。
(北朝鮮の金正日が、日本の漫画やアニメに興味をもつオタクだったという話を聞いたことがあったから、異世界の貴族階級なら、非日常的な援助交際の話に興味もつかと思ったら、案の定だわ)
有子は友達から聞いたり、漫画で読んだりして知った援助交際の話を、できるだけウダーイの興味をひくように、大げさに話していく。
「……でも、調子にのって街中で未成年女子をナンパなんかすると、怖いことになりますよ~。キャッチガールといって、大人の男をひっかけて、詐欺をやる飲み屋に連れこみ、身ぐるみ剥いでしまう恐ろしい店もありますからね。そういう店は、だいたい背後にヤクザがいますから~」
「カカカ。それでも俺様は大丈夫だ。何しろ、父上の付けてくれた私兵たちがいるからな」
「じゃあ、その私兵たちが、眠り薬でも盛られたら、どういたしますか?」
「それでも、俺様に手を出せば、父上が特殊部隊を差し向けて、犯人を皆殺しにしてくれるから、問題ねえよ」
「じゃあ、未成年女子のあたしの下着でも買われますか? あるいは性行為なさいますか? 殺したら性行為できませが、生かしておけばいくらでも性行為できますよ」
ウダーイが好色そうな目で有子を見つめてくる。ゾフィーは青くなってオロオロしていたが、有子は「心配ない」と言いたそうにゾフィーに向かってウインクした。
「よし、俺様と一緒に寝室に行こうぜ。たっぷりかわいがってやるからな」
ウダーイは有子を抱きかかえると、取調室から出て、いくつもの廊下を通り過ぎ、奥まった寝室に入った。ウダーイは私兵たちに「とりあえず出ていけ」と促すと、有子をベッドに押し付けて、服をはさみで切り裂こうとする。
「お待ちください。はさみを用いられますと、服のみならず、あたしの肌まで傷をつけてしまいますよ。素手でボタンをはずして脱がせてください」
有子はウダーイの気持ち悪い視線に鳥肌がたちながらも、それを表に出さないように必死で押し殺す。やがて、有子の胸まで服が脱がされると、先日、軍人たちに剣で服を切り裂かれた際に肌に机の汚れを移したばかりの、黒ずんだ部分があらわになる。
「おい、これは、黒狼病と見せかけているが、ただのイレズミか何かだろう」
一瞬、有子は慄然とする。当初の目論見では、黒ずんだ肌を見せて性病と見せかけ、解放してもらうというものだったからだ。実際、黒狼病は虎にも伝染するのだから、虎も有子の肉は食えないはずだから。
「俺様は今まで、いろんな女と性行為してきたから、性病だとごまかそうとしても無駄だぞ。本物の黒狼病なら、皮膚が黒ずんでいるだけじゃなく、いやな臭いまでしてくるものだからな。おおかた、どこぞの魔術師に魔法でイレズミをしてもらったのだろうが」
ウダーイは剣を抜き放つ。
「てめえ、よくも俺様をたばかろうとしたな! もう許せねえ! てめえだけは、生きたまま、虎に食わせてやる。おい、誰か、この娘を今すぐ、虎のいる裏庭に連れていけ!」
ウダーイは怒りのあまり、顔を真っ赤にしていた。主人の怒りの火に、これ以上、油をそそぎたくないのか、寝室の外にひかえていた私兵たちが、続々と乱入してくる。
「ついでに、ここで剣で服を切り裂いて、全裸にさせろ! 全裸で廊下を歩かせるんだ!」
私兵たちは有子の服を切り裂こうとするが、途中でやめてしまい、剣を下ろす。
「どうした? 俺様の言うことが聞けないやつは、父上に言いつけて首をはねさせるぞ」
「お言葉ですが、この娘、黒狼病のような、いやな臭いがするんです。下手に触って黒狼病がうつるのも、いやですから……」
「そうか? 俺様が臭いをかいだときには、それらしい臭いはしなかったぞ。おまえらの鼻が過敏すぎるんじゃないのか?」
ウダーイは再び、有子の肌の臭いをかいでみたが、とたんに顔をしかめた。
「ゲッ……。何だ、こりゃ? さっき、俺様が臭いをかいだときには、こんなにあからさまな黒狼病の臭いはしなかったぞ。これは魔法の一種か?」
一方の有子は、余裕の笑みさえ浮かべている。
「魔法の一種かどうかは、ご想像にお任せいたしますわ。あたしの魔法は、心が渇いていて残虐なことばかりする方には、強力な呪いとなって作用しますの。しかも、呪いの効果や発動時間については、未知数ですわ。この呪いが発動したということは、ウダーイ殿下は、心が渇いており、他人を傷つけることでしか、魂の安息を得られない、かわいそうな人間ではないんですの?」
もっとも、有子とて、余裕があったわけではない。体臭といっても、先ほど、急に付与されたものなのだ。魔法を封じられていて魔素が使えないのに、いきなり体臭が付与されるなんて、他に味方の魔術師が潜んでいるとしか思えない。
(心あたりがあるとすれば、エッちゃんぐらいか。ということは、エッちゃんはやはり、この別荘のどこかに監禁されているということだな)
次に考えることは、エッちゃんの気配を、どの方向から感じるかである。さすがに、この近くの部屋ではない。有子も魔法を使える以上、エッちゃんの念や気配は感じられるが、おおよその感覚でいえば、有子がカイゼル帝国の魔術師に捕まって、最初に牢屋にぶちこまれている際に、エッちゃんの念を感じたときの状態に近いからだ。あのときも、有子の牢屋や取調室と、エッちゃんとの距離は、けっこう離れていた。
(この別荘そのものが、かなり広そうだからな。神経を集中させれば、ここから南東の方角だということだけはわかるけど、これだけじゃ、決定打にならない……)
有子はエッちゃんに念を送ってみるが、向こうからの反応は無かった。有子が諦めずに念を送り続けていると、ふいに私兵に首根っこを掴まれて、窓から放り投げられた。
「へっ、ここは二階だ。落ちたら、無傷では済まねえし、虎もいるしよ。虎が貴様を食って黒狼病にかかるのは仕方ねえが、それ以上に貴様は、生かしておけば、俺様にとって大きな禍になりそうな気がするんでな。さあ、虎の食欲を満たしてこい」
ウダーイは二階の窓から、有子に向かって悪態をつき、唾を吐きかけると、二階の窓を閉めてしまった。一方の有子は、どんどん地面に向かって落下していく。下では虎が「グルルル……」とうなりながら、大口を開けて待ちかまえているではないか。落下の加速と虎の迫力の前に、有子はおしっこをちびりそうだった。もう地面スレスレに落下してきたときに、虎が有子めがけて飛びかかる。有子は観念して目をつぶった。
そのとき、ふいに体が下から支えられ、次に両手を拘束していた縄が、鋭利な刃物で切り裂かれるような音が響いてきた。
(あれ? あたし、もう虎に食われちゃったのかな? そのわりに、全然痛くないけど)
有子が目を開けると、何と虎が両手の縄をかみ切っていたではないか。続いて、虎は有子の両足を拘束していた縄もかみ切る。手足が自由になったことで、有子は先ほどまで死ぬほど心細かったのが、うそのように安堵感に包まれた。虎は相かわらず「グルルル……」とうなっているが、その目は微笑んでいるように見えた。おそらく、うなっているのは、近くにいるウダーイと私兵に、有子を襲っているというふりをしているだけだろう。
(あたしは虎を手なずける魔法なんか使っていない……。となると、これはエッちゃんの魔法か。エッちゃんの魔法って、動物にも効くんだな)
安堵感でヘナヘナとへたりこみそうになりながらも、有子は再び、エッちゃんに念を送ってみる。今度は念が返ってきた。
(有子、実は今、アタシはこの建物の牢屋にいるの。場所までは、はっきりわからない。おそらく、天窓があるだけだから、半地下の牢屋だと思う)
気のせいか、念は先ほどよりも濃密になって返ってきているようだ。二階から地面に降りたことで、よりエッちゃんに近づいたということだろう。
(とにかく、有子は今すぐに、この場を離れて。虎から逃げたか、食われたことにしておかないと、悲鳴もあがってないだろうから、ウダーイに怪しまれるよ。虎はアタシの念で自由自在に動かせるから、まずは広い庭園の休憩小屋にでも隠れて)
その言葉で、ようやく有子に周囲を見回す余裕ができた。周囲は林や池や休憩小屋が点在する広大な庭園で、身を隠せる場所はいくらでもありそうだ。有子は虎を引き連れて、休憩小屋を目指して走り出す。
(そういえば、レーム子爵家の人たちは無事なの? あたしは自分のことだけで精一杯だったから、助ける余裕なんてなかったし)
(心配しないで。従者の方たち三人は、また牢屋に戻されたけど、無事よ。レーム子爵と子爵令嬢様は、一応は下級貴族だから、牢屋じゃなく別の区画に監禁されてるけど、無事だわ。有子を窓から落とした後、ウダーイが『興ざめだ。今日は女を抱く気にならん』と言ってね。ただ、アタシは何か嫌な予感がする。ウダーイ本人じゃなく、あいつの背後にいるやつが、レーム子爵家を害そうとしているような……)
念の魔法を使えるエッちゃんまで、レーム子爵家を害そうとする政敵がいると予感しているのなら、同じことを考えていた有子の勘は当たっていたのだろう。
(あと、有子はしばらく、魔素を使う魔法を使わないで。もし、この別荘に、魔素を使う魔術師が常駐しているとしたら、わずかな魔素の増減や揺らぎも見逃さないと思うから)
そこで、エッちゃんの念は途切れた。思うに、虎を操るだけで、かなり消耗するので、有子に念を送る余裕もないのだろう。とにかく、有子は身を隠すために、庭園の休憩小屋に入る。小屋の中は、簡素な腰かけと長方形のテーブルが並んでいるだけだ。テーブルの上には、水差しと箱入りの茶菓子が置かれている。とりあえず疲れたので、有子は水差しに口をつけて水を飲み、茶菓子をほおばる。さすがに皇子の食べる茶菓子だけに、上等な材料で作られており、美味かった。ホッと一息つくと、眠くなってきたので、並んだ腰かけの上に横たわって眠る。
「おそらく、レーム子爵はウダーイにはめられたのでしょう。我々従者とは別の獄舎に監禁されているのでしょうが……。しかし、貴族相手にここまでやるとは、ウダーイも思い切りましたね」
従者の一人がつぶやく。
「しかも、我々の手足を縛っている縄、おそらく魔法の縄でしょう。魔術師対策のための」
そこまで言ったとき、牢の扉が開いて、鎧を着た牢番と思われる初老の男が現れた。
「出ろ。おまえらは、皇族と上級貴族以外の出入りが禁じられているウダーイ殿下の別荘付近の停車場に、子爵という下級貴族の身分でありながら、無断で侵入した。その罪により、ウダーイ殿下が直々にお裁きになる。神妙にいたせ」
従者三人と有子は、牢とは別棟にある取調室に連れていかれた。室内は、有子がカイゼル帝国で最初に連れてこられた取調室とほぼ同じだ。違うところといえば、ウダーイの座っている机がピカピカに磨き上げられていることぐらいだ。おそらく、ウダーイは室内の掃除を部下に徹底しているのだろう。ウダーイの周囲には、鎧を着て剣を持った私兵たちがみがまえている。四人がウダーイの机の前に並ばされたところで、ウダーイが口を開く。
「で、おまえら、この俺様の別荘に何しに土足で踏み込みやがったんだ? ことと次第によっちゃあ、皇子である俺様の権力で、おまえらをこっそり消すこともできるんだぜ」
ウダーイはどこまでも傲慢だった。そのうえ、冷血そうな目つきで、有子たちをねめつける。有子は一瞬、ウダーイの攻撃的な態度と私兵たちの殺気に呑まれそうになったが、ここで弱気になれば即座に殺されるような気がしたので、臆せずにくってかかる。
「……その前に、エッちゃんをどこにやったんですか? 知らないとは言わせませんよ。レーム子爵家に仕えている侍女です。ウダーイ殿下が今朝、ファルコ伯爵家のご子息に扮して、さらっていったのではないですか?」
「はぁ? 俺様はそんな娘、知らんぞ。だいたい、俺様が今まで付き合ったり、妾にしたりした娘は、数え切れないほどいるんだ。当然、その中には下級貴族の侍女だって含まれている。だが、誘拐なんて非合法な手段ではなく、皆、金を払って合法的な手段で買っているんだ。俺様に金で買ってもらえて愛されているんなら、娘も満足だろうが」
そこでウダーイは「カカカ」と哄笑をあげる。
(こいつ、偽善者のクチャーイと違って、自分が暴君だってことを隠そうともしないのか。こんなやつが次期皇帝になれば、カイゼル帝国も終わりだな……)
有子ははらわたが煮えくりかえる思いだったが、ぐっとこらえる。ここで怒りにまかせてウダーイに罵詈雑言を浴びせかければ、私兵たちに斬り殺す口実を与えるだけだ。もちろん、従者たちもそれがわかっているとみえ、あえて沈黙している。
「それで、おまえら、何か申し開きはあるかと聞いてんだ。無いなら、全員斬り殺すまでだがな。死体は、飼っている虎にでも食わせておけば済む。虎も人肉に飢えている頃だろうしな」
ウダーイは酷薄な笑みを浮かべる。従者たちは青くなってガタガタ震えていた。有子は必死で打開策を考えていると、ふと閃いたことがあった。
(そういえば、あたしたちが別荘に来る前に、露店に立ち寄った際に、軽食を食べていると昏睡してしまったんだっけ。おおかた、眠り薬を盛られたんだろうけど、露天商がレーム子爵の顔まで覚えているか、あるいは皇族と上級貴族の顔を全て覚えていないとできない芸当だ。上級貴族とその家族が何人いるのかわからないけど、露天商にその全てを記憶できるんだろうか? その点といい、ファルコ伯爵家のご子息に扮してエッちゃんを誘拐したことといい、レーム子爵は誰かにはめられたのではないだろうか?)
そうなると、レーム子爵が失脚して喜ぶやつが犯人ということになる。
(ウダーイの可能性が高いけど、クチャーイ派のレーム子爵に手を出せば、わざわざ自分が犯人だと教えているようなものだ。なら、誰かがウダーイをそそのかしたのだろうか? だとしたら、レーム子爵の政敵か? そういえば、子爵令嬢様が孤児院の貧しさに関心を持ち、孤児院に寄付をしているから、それが気にくわないやつの犯行か?)
だが、いくら考えても、カイゼル帝国に来たばかりで宮廷内の政争に疎い有子には、わかるはずがない。そうこうしているうちに、私兵たちが剣を抜いた。有子が観念して目をつむったとき、ふいにゾフィーの「お待ちください!」と叫ぶ声が聞こえた。ふと、声のしたほうを見やると、取調室の扉の所にゾフィーが立っているではないか。全力で走ってきたのか、「ハァ……ハァ……」と荒い息をしていた。一応、ウダーイが貴族として特別扱いしているのか、有子や従者と違って手足を縛られてはいない。
「その侍女と従者たちに罪はありません……。全て、わたくしめが父に頼みこんで、勝手にやったことです……。虎に食べさせるなら、わたくしだけにしてください……」
「ああ? 何だ、てめぇ? 俺様の裁定にケチをつけるのかよ? なら、てめぇが俺様とデートしてベッドインでもするか? そこまでやったら、従者と侍女は許してやるよ」
ウダーイは好色そうな目でゾフィーをねめつける。有子から見ても、ゾフィーが震えており、二の腕に鳥肌がたっているのがわかる。先日、牢から出してかくまってくれた大恩あるゾフィーを、こんな形でウダーイの犠牲にしてしまって良いのか? それは有子にもわかりきっているのだが、背後の私兵たちの眼力に射すくめられて、有子は動けなかった。それでも口だけは動くので、持てる勇気を総動員して叫ぶ。
「子爵令嬢様とベッドインするぐらいなら、あたしとベッドインしてください。箱入り娘の子爵令嬢様よりも、あたしのテクニックのほうがすごいですよ」
後半は消え入りそうな小声になってしまったが、ウダーイの興味をひくには充分だった。
「ほう、そんなに俺様に抱かれたいのか。なら、望み通り抱いてやるぜ。ただし、縄はほどかねえぞ。魔法で何かされちゃ、たまらんからな」
ウダーイは有子に下卑た笑みを向ける。有子は内心、しまったと思った。魔法を封じている縄をほどいてもらえないのでは、有子に勝ち目はない。
「いや、あたしのテクニックは、むしろ手を使うことにあるんですよ。だから、縄をほどいていただかないことには、テクニックも使いようがないわけでして……」
我ながら苦しい言い訳だと思ったが、これしか思いつかなかったのだから仕方ない。
「ふむ、そんなに言うなら、手でのテクニックがどんなにすごいのか、俺様にわかるように説明してもらおうか? あいにく、貴様の縄をほどくわけにはいかんのでな」
もっとも、有子も自分の貞操がかかっているので、この程度でひるんではいられない。日本にいた頃に、エロい話が大好きな友人から聞いた知識を、総動員しながら話す。
「……ですから、手でこうやると、ああなって、すごく気持ちよくなるわけでして……」
しかし、ウダーイは有子の話を聞いても、すぐに興味を失ってしまったようだ。
「へっ、その程度のテクニックなら、今まで付き合った娼婦に、さんざんやってもらったぜ。もっと俺様を驚かせるような話はないのかよ? 全く、つまんねえ女だな」
「わかりました。とっておきの話をいたしましょう。あたしの生国には、援助交際というものがございます。これは、未成年の女の子の下着を売買するものでして……」
「な、何? 未成年女子だと? 倫理にうるさく、『男女七歳にして席を同じゅうすべからず』という教義が徹底しているカイゼル帝国の皇族や貴族には、実に興味深い話だ。もっと聞かせろ」
ウダーイの食いつきぶりを見て、有子は心中で快哉を叫びたくなった。
(北朝鮮の金正日が、日本の漫画やアニメに興味をもつオタクだったという話を聞いたことがあったから、異世界の貴族階級なら、非日常的な援助交際の話に興味もつかと思ったら、案の定だわ)
有子は友達から聞いたり、漫画で読んだりして知った援助交際の話を、できるだけウダーイの興味をひくように、大げさに話していく。
「……でも、調子にのって街中で未成年女子をナンパなんかすると、怖いことになりますよ~。キャッチガールといって、大人の男をひっかけて、詐欺をやる飲み屋に連れこみ、身ぐるみ剥いでしまう恐ろしい店もありますからね。そういう店は、だいたい背後にヤクザがいますから~」
「カカカ。それでも俺様は大丈夫だ。何しろ、父上の付けてくれた私兵たちがいるからな」
「じゃあ、その私兵たちが、眠り薬でも盛られたら、どういたしますか?」
「それでも、俺様に手を出せば、父上が特殊部隊を差し向けて、犯人を皆殺しにしてくれるから、問題ねえよ」
「じゃあ、未成年女子のあたしの下着でも買われますか? あるいは性行為なさいますか? 殺したら性行為できませが、生かしておけばいくらでも性行為できますよ」
ウダーイが好色そうな目で有子を見つめてくる。ゾフィーは青くなってオロオロしていたが、有子は「心配ない」と言いたそうにゾフィーに向かってウインクした。
「よし、俺様と一緒に寝室に行こうぜ。たっぷりかわいがってやるからな」
ウダーイは有子を抱きかかえると、取調室から出て、いくつもの廊下を通り過ぎ、奥まった寝室に入った。ウダーイは私兵たちに「とりあえず出ていけ」と促すと、有子をベッドに押し付けて、服をはさみで切り裂こうとする。
「お待ちください。はさみを用いられますと、服のみならず、あたしの肌まで傷をつけてしまいますよ。素手でボタンをはずして脱がせてください」
有子はウダーイの気持ち悪い視線に鳥肌がたちながらも、それを表に出さないように必死で押し殺す。やがて、有子の胸まで服が脱がされると、先日、軍人たちに剣で服を切り裂かれた際に肌に机の汚れを移したばかりの、黒ずんだ部分があらわになる。
「おい、これは、黒狼病と見せかけているが、ただのイレズミか何かだろう」
一瞬、有子は慄然とする。当初の目論見では、黒ずんだ肌を見せて性病と見せかけ、解放してもらうというものだったからだ。実際、黒狼病は虎にも伝染するのだから、虎も有子の肉は食えないはずだから。
「俺様は今まで、いろんな女と性行為してきたから、性病だとごまかそうとしても無駄だぞ。本物の黒狼病なら、皮膚が黒ずんでいるだけじゃなく、いやな臭いまでしてくるものだからな。おおかた、どこぞの魔術師に魔法でイレズミをしてもらったのだろうが」
ウダーイは剣を抜き放つ。
「てめえ、よくも俺様をたばかろうとしたな! もう許せねえ! てめえだけは、生きたまま、虎に食わせてやる。おい、誰か、この娘を今すぐ、虎のいる裏庭に連れていけ!」
ウダーイは怒りのあまり、顔を真っ赤にしていた。主人の怒りの火に、これ以上、油をそそぎたくないのか、寝室の外にひかえていた私兵たちが、続々と乱入してくる。
「ついでに、ここで剣で服を切り裂いて、全裸にさせろ! 全裸で廊下を歩かせるんだ!」
私兵たちは有子の服を切り裂こうとするが、途中でやめてしまい、剣を下ろす。
「どうした? 俺様の言うことが聞けないやつは、父上に言いつけて首をはねさせるぞ」
「お言葉ですが、この娘、黒狼病のような、いやな臭いがするんです。下手に触って黒狼病がうつるのも、いやですから……」
「そうか? 俺様が臭いをかいだときには、それらしい臭いはしなかったぞ。おまえらの鼻が過敏すぎるんじゃないのか?」
ウダーイは再び、有子の肌の臭いをかいでみたが、とたんに顔をしかめた。
「ゲッ……。何だ、こりゃ? さっき、俺様が臭いをかいだときには、こんなにあからさまな黒狼病の臭いはしなかったぞ。これは魔法の一種か?」
一方の有子は、余裕の笑みさえ浮かべている。
「魔法の一種かどうかは、ご想像にお任せいたしますわ。あたしの魔法は、心が渇いていて残虐なことばかりする方には、強力な呪いとなって作用しますの。しかも、呪いの効果や発動時間については、未知数ですわ。この呪いが発動したということは、ウダーイ殿下は、心が渇いており、他人を傷つけることでしか、魂の安息を得られない、かわいそうな人間ではないんですの?」
もっとも、有子とて、余裕があったわけではない。体臭といっても、先ほど、急に付与されたものなのだ。魔法を封じられていて魔素が使えないのに、いきなり体臭が付与されるなんて、他に味方の魔術師が潜んでいるとしか思えない。
(心あたりがあるとすれば、エッちゃんぐらいか。ということは、エッちゃんはやはり、この別荘のどこかに監禁されているということだな)
次に考えることは、エッちゃんの気配を、どの方向から感じるかである。さすがに、この近くの部屋ではない。有子も魔法を使える以上、エッちゃんの念や気配は感じられるが、おおよその感覚でいえば、有子がカイゼル帝国の魔術師に捕まって、最初に牢屋にぶちこまれている際に、エッちゃんの念を感じたときの状態に近いからだ。あのときも、有子の牢屋や取調室と、エッちゃんとの距離は、けっこう離れていた。
(この別荘そのものが、かなり広そうだからな。神経を集中させれば、ここから南東の方角だということだけはわかるけど、これだけじゃ、決定打にならない……)
有子はエッちゃんに念を送ってみるが、向こうからの反応は無かった。有子が諦めずに念を送り続けていると、ふいに私兵に首根っこを掴まれて、窓から放り投げられた。
「へっ、ここは二階だ。落ちたら、無傷では済まねえし、虎もいるしよ。虎が貴様を食って黒狼病にかかるのは仕方ねえが、それ以上に貴様は、生かしておけば、俺様にとって大きな禍になりそうな気がするんでな。さあ、虎の食欲を満たしてこい」
ウダーイは二階の窓から、有子に向かって悪態をつき、唾を吐きかけると、二階の窓を閉めてしまった。一方の有子は、どんどん地面に向かって落下していく。下では虎が「グルルル……」とうなりながら、大口を開けて待ちかまえているではないか。落下の加速と虎の迫力の前に、有子はおしっこをちびりそうだった。もう地面スレスレに落下してきたときに、虎が有子めがけて飛びかかる。有子は観念して目をつぶった。
そのとき、ふいに体が下から支えられ、次に両手を拘束していた縄が、鋭利な刃物で切り裂かれるような音が響いてきた。
(あれ? あたし、もう虎に食われちゃったのかな? そのわりに、全然痛くないけど)
有子が目を開けると、何と虎が両手の縄をかみ切っていたではないか。続いて、虎は有子の両足を拘束していた縄もかみ切る。手足が自由になったことで、有子は先ほどまで死ぬほど心細かったのが、うそのように安堵感に包まれた。虎は相かわらず「グルルル……」とうなっているが、その目は微笑んでいるように見えた。おそらく、うなっているのは、近くにいるウダーイと私兵に、有子を襲っているというふりをしているだけだろう。
(あたしは虎を手なずける魔法なんか使っていない……。となると、これはエッちゃんの魔法か。エッちゃんの魔法って、動物にも効くんだな)
安堵感でヘナヘナとへたりこみそうになりながらも、有子は再び、エッちゃんに念を送ってみる。今度は念が返ってきた。
(有子、実は今、アタシはこの建物の牢屋にいるの。場所までは、はっきりわからない。おそらく、天窓があるだけだから、半地下の牢屋だと思う)
気のせいか、念は先ほどよりも濃密になって返ってきているようだ。二階から地面に降りたことで、よりエッちゃんに近づいたということだろう。
(とにかく、有子は今すぐに、この場を離れて。虎から逃げたか、食われたことにしておかないと、悲鳴もあがってないだろうから、ウダーイに怪しまれるよ。虎はアタシの念で自由自在に動かせるから、まずは広い庭園の休憩小屋にでも隠れて)
その言葉で、ようやく有子に周囲を見回す余裕ができた。周囲は林や池や休憩小屋が点在する広大な庭園で、身を隠せる場所はいくらでもありそうだ。有子は虎を引き連れて、休憩小屋を目指して走り出す。
(そういえば、レーム子爵家の人たちは無事なの? あたしは自分のことだけで精一杯だったから、助ける余裕なんてなかったし)
(心配しないで。従者の方たち三人は、また牢屋に戻されたけど、無事よ。レーム子爵と子爵令嬢様は、一応は下級貴族だから、牢屋じゃなく別の区画に監禁されてるけど、無事だわ。有子を窓から落とした後、ウダーイが『興ざめだ。今日は女を抱く気にならん』と言ってね。ただ、アタシは何か嫌な予感がする。ウダーイ本人じゃなく、あいつの背後にいるやつが、レーム子爵家を害そうとしているような……)
念の魔法を使えるエッちゃんまで、レーム子爵家を害そうとする政敵がいると予感しているのなら、同じことを考えていた有子の勘は当たっていたのだろう。
(あと、有子はしばらく、魔素を使う魔法を使わないで。もし、この別荘に、魔素を使う魔術師が常駐しているとしたら、わずかな魔素の増減や揺らぎも見逃さないと思うから)
そこで、エッちゃんの念は途切れた。思うに、虎を操るだけで、かなり消耗するので、有子に念を送る余裕もないのだろう。とにかく、有子は身を隠すために、庭園の休憩小屋に入る。小屋の中は、簡素な腰かけと長方形のテーブルが並んでいるだけだ。テーブルの上には、水差しと箱入りの茶菓子が置かれている。とりあえず疲れたので、有子は水差しに口をつけて水を飲み、茶菓子をほおばる。さすがに皇子の食べる茶菓子だけに、上等な材料で作られており、美味かった。ホッと一息つくと、眠くなってきたので、並んだ腰かけの上に横たわって眠る。
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