私の存在

戒月冷音

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第109話

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その日はそれで、1日が終わった。

私はマルクス様に送ってもらい、自室に帰るのだが、その前に
「国王陛下、これを・・・」
そういってお渡ししたのは、今日みんなで打ったうどんの残りだ。
「全て食べたのでは、なかったのか?」
「はい。こちらをエリス様に食べていただきたくて、残しておりました」
国王陛下は、言葉につまる。
「ミシェル、王妃様は・・・」
「分かっておりますが。
 せっかくヘンドリック様と国王陛下が、一緒に作られたものです。
 エリス様も、いただきたいのではないかと・・・」

私は、いらぬ気遣いをしてしまったかと思った。
けれど
「ありがとう。
 皆と食べていた時、ここにエリスが居れば、どんなに喜んだだろうかと・・・」
「エリス様は、ちょっと猪突猛進してしまって、ヘンドリック様に
 怒られてしまいましたが、お二人の事を思っていらっしゃることは間違いございません。
 ちょっとやり方を、間違えられただけだと思います。
 ですので、頑張っておられるごほうびにでも、していただければ・・・」

「ごほうびか・・・分かった。
 それでこれは、どれくらいの時間茹でればよい?」
「う~ん。この太さだと、10分くらいじゃない?」
代わりにマルクス様が答えて、私を見る。
「それぐらいで大丈夫かと。
 それとこちらが、スープの元です。
 ここに書いておりますが、5倍に薄めてください」
私がそう言うと国王陛下はクスクスと笑って
「了解した。別荘の料理人にそう伝えよう」
うどんを大切に抱えられた。


そのまま部屋に下がっていかれる国王様を見て、近くに居たヘンドリック様にも、頭を下げられた。
それを見た私が、ワタワタしていると
「兄上も、ありがとうってことだろうね。
 ああ見えて、兄上もエリス様が大好きだから」
と教えてくれた。
「そうなのですね・・・」
よかった・・・
「さぁ、部屋に帰ろうか」
「はい」
そうして私達は、離宮へと戻る。

「あのさ・・・今日、母上は父上と一緒にいるから、ここには俺達だけになる。
 だから・・・支度ができたら、部屋に行っても良いかな?」
支度・・・

私が無言でいると
「あっ!?ただ話がしたいだけだからね。
 母上がいると、あっちの話できないし、かといって
 母上がいるときに、2人になったら、何言われるか分かんないから・・・
 ダメかな?」
ワタワタしたマルクス様が、最後はかわいく聞いてきた。
私は、クスクスと笑った後
「かわいいマルクス様に、負けました。良いですよ。
 お待ちしております」
そう言った。

私とマルクス様の部屋は、隣同士。
間には、マルクス様の寝室があり、私の部屋に繋がっている。
夫婦になれば、ここの鍵を開けるらしいが、今は閉まっている。
私は部屋に戻った時、そこの扉の鍵を開けたくなった。
しかしその事は、誰にも言わず一人だけで、その残念な心を堪能した。
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