私の存在

第130話

「し、失礼しますっ」
「ルーザ。慌ててどうした？俺は、なにもしてないぞ」
「いえ、そうではありません」
「どした？」
そう話ながら、モグモグと肉まんを食べる、マルクス様。

「それが･･･オーギュスト公爵様が、おいでになられておりまして」
「お父様が？」
「マルクス様とミシェル様に、お話があるとの事にございます」
「えっ!?」
マルクス様は固まり、私は思い当たることがないため首をかしげる。
「そ、それで、どこに行けば？」
覚醒したマルクス様が確認すると、お父様は応接で待っているそうだ。

「分かりました。準備をしてうかがいますと、伝えてくれるかしら」
「それで、よろしいのですか？」
「多分･･･」
私の言葉に、不安げなルーザはとりあえず伝えようと、お父様の元に向かった。


「さぁ、準備しましょうか」
「じゅ、準備？」
「はい。多分お父様は、私とマルクス様の様子を
　見にこられたのだと思います」
「はぁ？」
「心配してくださっているだけなの。
　私がここに来るまでは、引きこもりだったから･･･」
「あぁ･･･そう言うことか」
やっと理解してくれたマルクス様は、私が作った料理を手に、お父様の待つ応接へと向かった。


コンコンっとドアをノックし、お父様の声を待つ。
「どなたかな？」
「マルクス・エルディニアと」「ミシェル・オーギュストです」
「入りなさい」
「失礼します」「失礼いたします」

マルクス様にエスコートされ、応接にはいる。
「ミシェル、元気だったか？」
お父様は席について早々、そう聞いてきた。
「はい。マルクス様もマルガ様も、本当によくしてくださいます」
「そうか」
ほっとした顔のお父様をみると、私もほっとしてしまう。

「えっと、今日はそれを確認にこられたのですか？」
「まぁ･･･そうだな。皆心配していてな。確認してこいと･･･」
お父様は、困ったように笑っている。
「アクイラスには、毎日あっているのですが、
　それでも心配していますか？」
マルクス様が聞くと
「心配はしている。しかし、表には出そうとしないな。あいつは」
「そうですか」
マルクス様は、何とか安心してもらうように話そうとした。
しかし
「やっぱり、何年も籠っていた子だ。心配にもなる」
と最後にはそうなるのだ。

家族に･･･心配ばかりかけてしまった 。
それを解消してもらうための道具は、これしかない。
そう思った私は、持ってきていたバスケットをお父様の前に出した。
「ん？これはなんだ？」
「今日、王城の厨房の方々と一緒に作りました。
　肉まんもどき･･･という料理になります。
　軽食で、サンドイッチのようにかぶりついて食べていただく料理です。
　これを持ち帰って皆に･･･」
私の言葉に、お父様はビックリしていた。
「お父様？」
声をかけるとビックリして、まっすぐ私を見ていた目線を肉まんもどきに移す。