私の存在

戒月冷音

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第131話

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「これを?ミシェルが?」
「私一人ではありませんが、私が指導して皆で作りました」
「ここでも、料理をしていると?」
「はい。料理長と、仲良しになりました」
私の言葉に、ゆっくりとマルクス様を見たお父様は
「本当に?」
と確認し
「はい。厨房のみんなと、仲が良いです」
マルクス様が答えた。

お父様は目をシパシパさせながら、肉まんもどきと私を見る。
「あれだけ、誰かに関わったり、教えたりすることを拒絶していたのに、
 そこは克服したのか?」
「お父様。私の事は、よくご存じですよね」
「あぁ」
「ここでは、あの時のように、一人で抱え込まなくて良いのです」
「どう言うことだ?」
「私があのとき悩んでいたことは、
 マルクス様はとっくに、体験済みだったのです」
「体験済み?」

私はここに来る前に、前世の事を話して良いか、マルクス様と話していた。
マルクス様は、国王様・・・お父様に、前世の記憶を持っていることを話した。
けれど私は・・・ずっと怖くて、話していない。
しかしこれから先のことを考えて、お父様だけには話しておこうと思った。
マルクス様に相談した時、怖かったら一緒にいてくれると言ってくださったから、伝えるなら今だと思った。

「お父様。大切なお話がございます」
「な、なんだ?」
「お父様は、私が色々なことを知っているのは、何故だろうと
 考えたことはありますか?」
「それはある。
 家庭教師の時もそうだし、我が家の料理は、家から出れば
 絶対に食べれないものだった。
 それらはミシェルから学んだと、料理長が言っていた。
 それにお菓子もそうだ。
 新しいものを持っていくと聞いた日には、見たことのないものが出てくる。
 だが、それをどの様にして知ったのかなどをミシェルに聞くとまた、
 部屋にこもってしまうんじゃないかと思って、聞けなかった」
お父様はそう言って、俯いてしまった。

「ごめんなさい。
 私が話しておけば、お父様を悩ませることはなかったのです。
 お父様。私には、前世の記憶があります」
「は?」
お父様は、何を言っているのか・・・という顔をして、私を見た。
「突然言われても、分かりませんよね。
 私には、ミシェルとして生まれる前の、松本江利花だった時の
 記憶があるのです」
「それは・・・」
「江利花だった時は、地球という星の日本というところに住んでいて、
 15歳まで過ごしました」

私は、話しながらカタカタと震えていた。
これを話したことで、お父様が離れてしまわないか?
お母様やお兄様、お姉様も何を言っているの?と呆れないだろうか・・・
そんなことが頭をよぎる度、体が震えて、怖かった。
けれど、それに気づいたマルクス様がソッと手を握ってくれた。
ここに居るよ。
大丈夫だよ
そう言ってくれるように、暖かなその手は、私に安らぎをくれた。
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