私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
142 / 168

第149話

しおりを挟む
それから次々と、料理が完成していく。
「サンドイッチは、フレンチトースト以外完成です」
「プリンは、カラメルを作成して、卵黄多めのラン液を
 容器にいれて、蒸し待ちです」
等々、やっぱり本職は仕事が速い。

「ありがとうございます。どうにか、間に合いそうです」
私がそう言うと、
「あの、鍋の大きさは少し小さくなりますが、
 こっちでも1つ、蒸し器を作りましょうか?
と提案してくれた、料理人がいた。

「出来ますか?」
「このサイズなら、出来るかと・・・」
と言って、とってもでっかい鍋を、奥から出してきてくれた。
「そのお鍋は、何に使うものですか?」
「野外での、炊き出しに使うものですが、専用のコンロを使うので
 少し準備に時間がかかります」
「専用コンロは?」
「あれです」
そう言って、料理人さんが指差したのは、私がここに来てはじめて見た、普通のコンロ三つ分あるかと思うほど大きなコンロだった。

「これって、使えたのですか?」
「使えます。ただ、使えるものが限られるのですが・・・」
料理長はそう言って、使える人を紹介してくれた。
「これを使えるのは、マーカスとルイス、それからマリーだけです」
「マリーさん・・・」
「それもあって、参加させていたのですが・・・」
「では、マーカスさんとルイスさんにお任せします」
私がそう言うと、さっき質問に来ていた男性料理人さんが
「はいっ」
と答えた。

「え!?」
「すみません。俺が、ルイスです。
 先ほどは、ありがとうございました」
「いいえ。皆さんに伝えてくださったことで、私が
 何度も話すことなく、伝えてくださったので助かりました」
「マーカスは、鍋を持ってる奴です」
「おいっ、俺の事はいいから、コンロ準備するぞ」
「了解」
そう言うと、ルイスさんとマーカスさんは、コンロの調整に入る。

サイズが大きいために、コンロの火が4つの輪で調節するようになっている。
弱火は内側の輪。中火は内側と、二番目の輪。
三番目の輪を付けると、中火の強火になる。
そして、全部付けると強火になる。
と言うのが、ざっとした説明だった。

ただ、その火の強さの調節が問題で、燃料を送りすぎると大火になる。
「それは、怖いですね」
「自動で調節できればいいのですが、これは大きすぎて
 出来なかったそうで、手動なんです」
「それで、使うものが限られるのですね」
「そう言うことです」
ルイスさんは、分かりやすく説明してくれた。
その間に、マーカスさんが水をいれたお鍋を、コンロにかけてくれた。
「準備できたぞ」
「では、つけますか」
「会わせろよ」
「はい」

「いち」
「にの」
「「さん」」
その掛け声に会わせ、ルイスさんとマーカスさんが、同時にコックを捻る。
すると、コックの前から順に、ポッポッポッポッと火が着いていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。内容も少し変更しておりますので、あわせてお楽しみください。

勘違い

ざっく
恋愛
貴族の学校で働くノエル。時々授業も受けつつ楽しく過ごしていた。 ある日、男性が話しかけてきて……。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

王子様の花嫁選抜

ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。 花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。 花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

処理中です...