私の存在

戒月冷音

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第148話

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後は、これを蒸しあげれば、角煮マンの完成になる。
「このような形のものを、作っていただけますか?」
「角煮があるだけ・・・ですか?」
角煮は、細長いバラの塊が、8本ぐらい入っている。
1本で角煮が6か7、もう少し幅を細くすれば10は行ける。
「私が作った見本の厚さにするのであれば、50個ぐらい出来ますが、
 もう少し薄くすれば、80近く出来るのではないでしょうか?」
「そうですね。まぁ、一度に蒸すことが難しいので、
 20程作ってから、様子を見ますか?」
「そうですね」
「分かりました」

そうして私は次に、蒸し器の用意をする。
ここにある一番大きな鍋に水を入れ、沸かしていく。
沸くまでの間、中にざるを入れ、その上に網を置き、蓋を被せてみる。
フム、上に余裕がある・・・
それを確認した後、蓋に被せる大きなフキンを探して、蓋を覆った。

「すみません」
「はい」
「これは、何のために?」
私の作業を見ていた料理人が、聞いてくる。
「水滴が落ちるのを、防ぐためです」
「水滴・・・ですか?」
「角煮マンやプリンを、この網の上に並べて蓋をすると、
 沸かしたお湯から出た蒸気が、蓋に当たって液体に戻るの」
「そうなのですか?」
「そうなの。そうなった時に、その液体をすいとる物がないと・・・」
「・・・ポタポタと落ちます」
「その水が、上に溜まったプリン・・・美味しそうに見える?」
「・・・・・・見えませんね」
「だから、フキンが必要なの」
「分かりました。ありがとうございます」
そう言うと彼は、作業していた場所に返り、私がしていたことと、同じことをしていた。
回りの料理人に、私から聞いたことを伝え、回りの方達はそれを書き留める。
そうしてみんなが、情報を共有する。

ここは、誰か一人の幸せのために、皆が動くのではなく、皆が幸せになるために、情報を共有する場所。
そんな場所で、料理を作らせてもらえることが、嬉しかった。

「料理長。いくつ出来ました?」
「20と・・・いち、に、さん。23ですね」
「ではまず、23個を蒸しましょう。
 この網の上に、肉まんの下に敷いているシートごと、
 並べていってください」
「はい」
大きなお鍋だったから、本当に23個、きれいに並んだ。
鍋の底では、お湯がグツグツと沸いている。

「では、蓋を閉めますね」
これまた大きな蓋を、よいしょと持ち上げ、鍋の上に被せた。    
「このまま、20分程蒸します」
「20分ですね。了解です。おいタイマーをかけて」
「はい」
角煮マン班の料理人が、直ぐにタイマーをセットした。
これで後は放置。
その間に私は、残りの分の生地を準備し始めた。
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