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第154話
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準備が終わったと同時に、お姉様が到着したと、城の近衛から連絡が入った。
私は、走りたいのを我慢し、でも心持ち急ぎぎみに、早足で玄関に向かった。
「お姉様っ」
「ミシェル、久しぶりね」
「すみません」
「いいのよ。こうして会えただけで、嬉しいのだから」
「私も嬉しいです。お姉様。またお綺麗に、なられました?」
「何を言ってるの?ミシェル。私は変わっていないわ」
「でも、なんだか・・・」
お肌の艶も瞳の輝きも、前よりビカビカしてる。
「ハリエットはデビットに愛されてるから、綺麗になってるんだよ」
私がお姉様をまじまじ見ていると、その後ろから、お兄様がそう言いながら入ってきた。
「お兄様、久しぶりなはずなのに、何故そんなことを
知っていらっしゃるの?」
「それはデビットが、2日に一回は必ず俺のところに来てるからだよ」
「デビットが?何をしに?」
「あいつが何を話すのかなんて、想像できるだろ。
ハリーの事をどれだけ思っているか。
ハリーがどれだけ素晴らしいか。ハリーが・・・」
「もういいわお兄様。デビットったら、何をしているのかしら」
そう言いながらも、お姉様の顔は真っ赤。暑くて扇でパタパタしている。
「お兄様。コーエン侯爵令息は、そのような方なのですか?」
「あぁ。ミシェルは会ったことがなかったのか?」
「たぶん、ございません」
「えっ、そうだったの?」
「あっ、そうか。ミシェルは家から出なかった時期があるから、
その時だったろ?俺達がデビットに会ったの」
「そうでしたわ。すぐにでも会わせなくては」
どうしましょう・・・と、悩み始めてしまったお姉様に、
「いつでもいいです。お兄様のところによく行かれるのなら、
私に会うかもしれません。
その時には、マルクス様に教えていただきますわ」
「あっそうだよ。マルクスに、頼めばいいじゃん」
「お兄様、第2王子殿下ですよ」
「えっ、いっつも呼び捨てだよ。俺」
「そんなに仲良かったのですね」
「ミシェル・・・
いったいどういう風に、マルクスから聞いてるんだ?」
困ったような、悩んだような複雑な顔をしたお兄様を見た瞬間、私とお姉様はプッと吹き出して笑った。
本当に久しぶりに、兄妹三人揃って話したのに、スッと昔に戻ったように自然と話せた。
前世では、1日でも他人のようだった。
兄は無言。姉は、兄妹の中では私を構わない。
そして私は、その場に居ることはない。
親や連絡係の人に呼び出されたとしても、何処かに行ってと言われ、へやをでて廊下で待つのが普通だった。
だから、うれしかった。
私の婚約が決まってすぐ、マルクス様のいる離宮に入り、16の誕生日までにある程度まで終える。
それを目標にしていた私は、数ヵ月帰っていない。
私は、走りたいのを我慢し、でも心持ち急ぎぎみに、早足で玄関に向かった。
「お姉様っ」
「ミシェル、久しぶりね」
「すみません」
「いいのよ。こうして会えただけで、嬉しいのだから」
「私も嬉しいです。お姉様。またお綺麗に、なられました?」
「何を言ってるの?ミシェル。私は変わっていないわ」
「でも、なんだか・・・」
お肌の艶も瞳の輝きも、前よりビカビカしてる。
「ハリエットはデビットに愛されてるから、綺麗になってるんだよ」
私がお姉様をまじまじ見ていると、その後ろから、お兄様がそう言いながら入ってきた。
「お兄様、久しぶりなはずなのに、何故そんなことを
知っていらっしゃるの?」
「それはデビットが、2日に一回は必ず俺のところに来てるからだよ」
「デビットが?何をしに?」
「あいつが何を話すのかなんて、想像できるだろ。
ハリーの事をどれだけ思っているか。
ハリーがどれだけ素晴らしいか。ハリーが・・・」
「もういいわお兄様。デビットったら、何をしているのかしら」
そう言いながらも、お姉様の顔は真っ赤。暑くて扇でパタパタしている。
「お兄様。コーエン侯爵令息は、そのような方なのですか?」
「あぁ。ミシェルは会ったことがなかったのか?」
「たぶん、ございません」
「えっ、そうだったの?」
「あっ、そうか。ミシェルは家から出なかった時期があるから、
その時だったろ?俺達がデビットに会ったの」
「そうでしたわ。すぐにでも会わせなくては」
どうしましょう・・・と、悩み始めてしまったお姉様に、
「いつでもいいです。お兄様のところによく行かれるのなら、
私に会うかもしれません。
その時には、マルクス様に教えていただきますわ」
「あっそうだよ。マルクスに、頼めばいいじゃん」
「お兄様、第2王子殿下ですよ」
「えっ、いっつも呼び捨てだよ。俺」
「そんなに仲良かったのですね」
「ミシェル・・・
いったいどういう風に、マルクスから聞いてるんだ?」
困ったような、悩んだような複雑な顔をしたお兄様を見た瞬間、私とお姉様はプッと吹き出して笑った。
本当に久しぶりに、兄妹三人揃って話したのに、スッと昔に戻ったように自然と話せた。
前世では、1日でも他人のようだった。
兄は無言。姉は、兄妹の中では私を構わない。
そして私は、その場に居ることはない。
親や連絡係の人に呼び出されたとしても、何処かに行ってと言われ、へやをでて廊下で待つのが普通だった。
だから、うれしかった。
私の婚約が決まってすぐ、マルクス様のいる離宮に入り、16の誕生日までにある程度まで終える。
それを目標にしていた私は、数ヵ月帰っていない。
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