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第44話
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「それを、母上に。蝋印を見せれば、皆通してくれるから」
「わ、分かりました。行ってまいります」
メイドさんは、意を決したように歩き出す。
「あ、メイドさんの分、残しておくから。ゆっくり安全に行ってきて」
私の言葉に、メイドさんの緊張は少し溶け、中庭をでていく。
「あ、ルーク。後を追って。どこに居るか知らない」
「そう言えばそうです。分かりました。側妃様、失礼いたします」
と言って頭を下げたルークさんは、走って追いかけていった。
「ミシェル嬢。迷惑をかけて、すまない」
ヘンドリック様が、頭を下げようとする。が、
「下げないでください。下げたら、お菓子はないです」
と言うと、ピタッと動きが止まる。
「なし?」
「まだ、ありです」
私の言葉にフーーッ…と息を吐いたヘンドリック様は頭を起こす。
それを見ていたマルクス様が
「兄上。そんなに気になるんですか?」
「気になるよ。
母上が気にしてるのもあるけど、マルガ様がこんなに興奮してるとこ
初めて見たし、なんかワクワク待ってない?」
「そうですね。母上がワクワクです」
「そ、そうかしら」
こんなに喜んで頂けるなんて、思っていなかった私は、本当に嬉しくなって
「王妃様にはパウンドケーキをお渡ししましたが、今日は後2種類、
準備してきました」
新しいものを、紹介し始めた。
「えっ!?種類が、増えてるの?」
「はい。マルクス様。
一つは、シフォンケーキといいます。
ふわふわのケーキです。それからもう一つは…」
私は入っているカゴを蓋をしたまま、机の上に置き、少し焦らしてから
「ポテトチップスです」
と言って、蓋を開けた。
「えっ!?ポテト、チップス…まじで?」
マルクス様は目を見開き、そのものをまじまじと見た。
「はい。ジャライモを揚げて、塩を降っております。
「これ…食べていいの?」
「どうぞ」
そう言うとマルクス様は、迷わずポテトチップスを取った。
見た目も同じそれを、じっと見た後、口に入れ、パリッと音を鳴らした。
「ほんとに、チップスだ」
「はい。チップスです」
その後、パリパリと食べ続けるマルクス様を見たヘンドリック様は、恐る恐るチップスを一枚取る。
そして口に運び、パリッと音を鳴らした。
「こ、これは本当に、あのジャライモなのか?」
「はい。薄ーく切って、揚げただけです」
「これは、しょっぱいのだな」
「あっ…はい。揚げておりますので、重くならないように、
塩のみの味付けです」
「これは、エールに合いそうだ」
エールとは、日本と同じビールのこと。
ビールという言葉はなく、全てエールという。
「そうですね。エールと合いますね」
マルクス様は、すぐに肯定した。
この兄弟は、飲兵衛のようだ。
するとその横では、側妃様…マルガ様が、シフォンケーキにハマっていた。
「わ、分かりました。行ってまいります」
メイドさんは、意を決したように歩き出す。
「あ、メイドさんの分、残しておくから。ゆっくり安全に行ってきて」
私の言葉に、メイドさんの緊張は少し溶け、中庭をでていく。
「あ、ルーク。後を追って。どこに居るか知らない」
「そう言えばそうです。分かりました。側妃様、失礼いたします」
と言って頭を下げたルークさんは、走って追いかけていった。
「ミシェル嬢。迷惑をかけて、すまない」
ヘンドリック様が、頭を下げようとする。が、
「下げないでください。下げたら、お菓子はないです」
と言うと、ピタッと動きが止まる。
「なし?」
「まだ、ありです」
私の言葉にフーーッ…と息を吐いたヘンドリック様は頭を起こす。
それを見ていたマルクス様が
「兄上。そんなに気になるんですか?」
「気になるよ。
母上が気にしてるのもあるけど、マルガ様がこんなに興奮してるとこ
初めて見たし、なんかワクワク待ってない?」
「そうですね。母上がワクワクです」
「そ、そうかしら」
こんなに喜んで頂けるなんて、思っていなかった私は、本当に嬉しくなって
「王妃様にはパウンドケーキをお渡ししましたが、今日は後2種類、
準備してきました」
新しいものを、紹介し始めた。
「えっ!?種類が、増えてるの?」
「はい。マルクス様。
一つは、シフォンケーキといいます。
ふわふわのケーキです。それからもう一つは…」
私は入っているカゴを蓋をしたまま、机の上に置き、少し焦らしてから
「ポテトチップスです」
と言って、蓋を開けた。
「えっ!?ポテト、チップス…まじで?」
マルクス様は目を見開き、そのものをまじまじと見た。
「はい。ジャライモを揚げて、塩を降っております。
「これ…食べていいの?」
「どうぞ」
そう言うとマルクス様は、迷わずポテトチップスを取った。
見た目も同じそれを、じっと見た後、口に入れ、パリッと音を鳴らした。
「ほんとに、チップスだ」
「はい。チップスです」
その後、パリパリと食べ続けるマルクス様を見たヘンドリック様は、恐る恐るチップスを一枚取る。
そして口に運び、パリッと音を鳴らした。
「こ、これは本当に、あのジャライモなのか?」
「はい。薄ーく切って、揚げただけです」
「これは、しょっぱいのだな」
「あっ…はい。揚げておりますので、重くならないように、
塩のみの味付けです」
「これは、エールに合いそうだ」
エールとは、日本と同じビールのこと。
ビールという言葉はなく、全てエールという。
「そうですね。エールと合いますね」
マルクス様は、すぐに肯定した。
この兄弟は、飲兵衛のようだ。
するとその横では、側妃様…マルガ様が、シフォンケーキにハマっていた。
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