私の存在

戒月冷音

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第43話

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「まぁ…」
「これは…」
カサンドラ様とヘンドリック様は、初めて見るお菓子に驚いている。
マルクス様と側妃様は初めてではないが、新しい種類と驚く二人を見て笑っていた。

「マルクス。お前知ってたな?」
「いいえ兄上。まさか王妃様が、探していらしたとは知らず」
「しかし何故、王妃様に側妃様のお茶会の内容が、届いたのでしょうか?」
確かに…あの時、ここに居たのはすべて、側妃様に使えるメイドさんと侍従さんだった。

もしかして?

そう思い、周りを見回す。
すると一人だけ、オロオロとしているメイドさんがいた。
私は席を立ち、その人の前に行くと
「言っていいよ」
と伝える。すると
「も、申し訳ございません。おそらく、私がやったことが原因かと」
「何をしたの?」
「私はあの日、息子のために、二切れほど頂きました」

たしかにあの日、子供がいる人にはその子の分も、持って帰ってもらった。
それは私が、たくさん作ってきてしまったのが原因なのだが…
「それを…休憩室で、少し頂いてしまったのです」
「それは別に、構わないけど…」
「その時に入ってきた仲間に聞かれ、新しいお菓子だと言ってしまったのです」
まぁ、それは仕方ないよね。

「それは仕方ありませんわ。大丈夫よ。貴女のせいだなんて思っていないから」
カサンドラ様がそう言うが、流石に自分の一言で、公爵令嬢に迷惑をかけてしまったと思っても仕方ない状態だ。
「で、ですが…」
メイドさんは顔色が悪くなり、ガタガタと震える。

私はメイドさんから離れ、給仕をしていたメイドさんにお皿を用意してもらう。
そして荷物の中から一つ、パウンドケーキを取り出すと、半分に切ってお皿に乗せる。
「では貴女に、お仕事をお願いしましょう」
そう言って私はケーキの乗ったお皿を持って、震えているメイドさんの前に戻る。
「えっ!?あの…」
「これを持って、王妃様に渡してきてほしいの」
「お、王妃様にですか?」
「そう」
私はニッコリと笑って肯定した。
すると
「では俺から、一言メッセージをかいて、その皿に乗せよう。
 ルーク、俺のメッセージカードを」
ヘンドリック様がそう言うと、彼の侍従がポケットから封筒とペンを取り出し、ヘンドリック様に渡した。
封筒から、メッセージカードを取り出したヘンドリック様は、スラスラと書いていく。

【母上。
  お菓子の調査に、カサンドラを使ったこと、後でご説明頂きます。
  これを読んだ後、絶対に押しかけてこないでください。
                        ヘンドリック
    追伸、相手のご厚意で新しいお菓子を頂きました。
       母上にもお裾分けいたします。
       パウンドケーキ と言うらしいです】
という内容だった。

それを封筒に入れ、ヘンドリック様の蝋印で蓋をする。
「母上は自分でかってに動いて、よく迷惑をかけるから、こうやって
 証拠になるものを、残せる状態にしておくんだ」
そう言いながらその封筒を、メイドさんの持っているお皿の上に置いた。
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