私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
38 / 168

第42話

しおりを挟む
「今日は、前回側妃様が気に入ってくださった、パウンドケーキと…」
と、お菓子の説明を始めたところで、ヘンドリック様が帰ってこられた。

「すまない。私達も、参加させてもらってもいいだろうか?」
「あの…カサンドラ様も、ご一緒ですか?」
すぐに確認したのは、側妃様。
「あぁ…だめだろうか?」
「いいえ。私は大丈夫ですが、マルクスは…」
「俺は大丈夫です。ミシェル嬢、よろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です」
「有り難う」
「ありがとう存じますわ。ミシェル・オーギュスト様。
 わたくしは、カサンドラ・コーラルと申します。ヘンドリック様の婚約者ですわ」
と言って、コーラル公爵令嬢様は、綺麗なカーテシーを披露した。

私は急いで立ち上がり
「初めてお会いいたします。ミシェル・オーギュストと申します。
 よろしくお願いします」
と、カーテシーをした。
「有り難う。私…あまりいい印象がないの。大丈夫かしら?」
「いい印象なのかどうかは、私も初めてなので分かりませんが、
 印象は、その方によって変わりますので、私は他の方の評価は気にしません」
「そ、そうなのね」
「はい。ですが、よろしいのですか?」
「何が?」
「コーラル公爵令嬢様は、ヘンドリック様とお過ごしになるために、
 こちらに来られたのではないのですか?」
私は直球で聞いた。
すると
「いいえ。本日私は、王妃様に呼ばれたのですが、なぜかこちらに行きなさい
 と、言われたのです。」
と、コーラル公爵令嬢様は、素直に教えてくださった。

ヘンドリック様は、はーーっ…と息を吐き
「母上の仕込みだろう」
と言った。
「「仕込み?」」
私とマルクス様の声がダブり、側妃様は首を傾げた。

「母上は先日、何処からか新しいお菓子のことを聞いたらしく、
 出どころを調べたいらしい。
 その為に彼女を、茶会に送り続けたらしいのです」
「数ヶ月前から突然、王妃様に呼ばれたと思えば、あそこに行け
 ここに行けと、言われたのです。
 帰ってきたら、新しいお菓子はあったかどうか聞かれるのです。
 私は、何のことか分からなかったのですが、言われた通り報告しておりました」

王妃様…

やっぱり、前世の姉にそっくり。
ということは、新しいお菓子が見つかるまで、コーラル公爵令嬢様が振り回される。
私はそう解釈して
「ではそれも、今日で終わりますね」
と言った。
「どうしてですか?オーギュスト公爵令嬢様」
「ミシェルで、いいですよ」
「では私も、カサンドラでお願いします」
「分かりました。カサンドラ様。今日で終わりというのは、ここに…」
私はそう言って、持ってきていた荷物を開け
「新しいお菓子があるからですわ」
パウンドケーキを取り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。内容も少し変更しておりますので、あわせてお楽しみください。

勘違い

ざっく
恋愛
貴族の学校で働くノエル。時々授業も受けつつ楽しく過ごしていた。 ある日、男性が話しかけてきて……。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

王子様の花嫁選抜

ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。 花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。 花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

処理中です...