私の存在

戒月冷音

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第41話

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「本当に、ごめんね。前にも何か、言われたんだよね?」
マルクス様のお兄様に、そう言われるが私は何も言えない。
「兄上。先にお名前を…」
「あぁっ!?そう言う事か。ごめん。
 俺の名前はヘンドリック。
 ヘンドリック・エルディニア。マルクスの兄です」
「わ、私はミシェル・オーギュストです。
 あの~…今日は何故、お兄様までおられるのでしょうか?」
私は挨拶とともに疑問をぶつけた。

するとその横から、側妃様が
「ずっとここで話すのもよくないので、中に入りましょう。
 ヘンドリック様も、よろしいでしょうか?」
「ヘンリーで良いのに…」
「ご勘弁ください。私は…」
「分かったよ。では中に入ろう。君はその荷物を、大事に抱えててね」
ヘンドリック様は、私の荷物を持ってくれている男性に声をかけた。
「あ、出来るだけ傾けないでください。
 寄ってしまったら、潰れてしまいますので…」
「分かりました。お任せください」
「有り難うございます」
私の礼にいいえと答え、私の後ろを歩いてくれる男性にも分けなければと思いながら、マルクス様とヘンドリック様が歩く後ろについて行った。

前回と同じかと思いきや、中庭のガゼボに通された。
ここは前回、最後にマルクス様が連れてきてくださった場所。
前回より花が咲き乱れ、とても明るい雰囲気だ。
「前に来られた時に、ここの花を気に入ってくださったと、マルクス聞いて」
「ありがとうございます」
私はお礼を言って、席につく。

その時
「ヘンドリック殿下」
「何だ?」
「カサンドラ・コーラル公爵令嬢様が、おいでになられました」
「約束してたか?」
ヘンドリック様はすぐに、侍従に確認する。
「いいえ。予定には入っておりません。ですが…」
「何かあるのか?」
「えっと、王妃様が…」
「あぁ~…そういう事か。ちょっと行ってくる」
そう言うとヘンドリック様は急いで玄関へと走っていく。

「側妃様。
 ヘンドリック様は、コーラル公爵令嬢様と
 婚約されていらっしゃるのでしょうか?」
「えぇ…」
「幼い頃から、ですか?」
「そうです。幼馴染だと聞いております」
「兄上は、カサンドラ様と5歳の時に婚約されたそうです」
「そうなのですね」
私は自分の荷物のことを忘れ、話していた。

「あの、この荷物は…どうされますか?」
不意に、運んでくれた男性が声をかけてくる。
私はビクッとした後、忘れていたことに気づき
「す、すみません。ずっと持っていただいていたのですね。
 ありがとうございます」
すぐに受け取ると、横の席に置いた。
「あの~…それは?」
マルクス様が、気になって聞いてくる。
「これは…前回と同じ、おみあげです」
「えっ!?お菓子をまた、作ってきてくださったのですか?」
「はい。喜んでいただきましたから…」
そう言うとマルクス様は、泣きそうな顔をしたまま笑顔を見せてくれた。
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