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第40話
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馬車を降りる前に、窓から確認すると、何故か離宮の入口の前に王妃様が居た。
玄関先には、マルクス様と側妃様…それからもう一人。
「あの人、誰だろう?」
今まで会ったことのない人が居た。
「お嬢様。降りられますか?」
御者が心配そうに、声をかけてくれる。
「降りたくなるような雰囲気じゃないんだけど…行くしかないでしょうね」
私の言葉に、ハハハッと笑うことしか出来ない御者は、御者台から降りて入口を開けてくれる。
「ありがとう。それから、荷物を…」
と言ったところで、私は一人で来たから、運んで貰う人が居ない。
どうしようかと悩んでいると、御者が馬車の中にはいり、荷物を取り出してくれた。
するとそれを見ていたマルクス様は、すぐ隣りに立っていた男性に声をかけてくださったようで。その男性が走ってくる。
「荷物がお有りでしたら、お運びいたします」
「ありがとうございます。では、これを…」
御者の手にあるものを指すと、直ぐに受け取ってくれた。
そして私が御者にお礼を言ってマルクス様の方に歩き出すと、そのまま後ろをついてきてくれた。
「本日は、お時間を取って頂き、ありがとうございます」
私は、マルクス様にそう言った。
すると何故か、側妃様の隣りにいた男性が
「君が、ミシェル・オーギュストかな」
と声をかけてきた。
「…」
私は知らない方なので、声をかけて良いのか分からず、マルクス様を見た。
「あっ!?…すみません」
マルクス様は私を見て、何かに気付いたのかこう言ってから、すぐもう一人の男性に目を向けて
「兄上。ミシェル嬢は多分、兄上を知りません」
と言った。
「はぁ!?」
「えっと…
ミシェル嬢は、家の中にずっとおられたので、外の情報を知りません。
もしかしたら、兄上のことも…」
「えっ!?マルクス様の、お兄様なのですか?」
私はびっくりして、声を出してしまった。
私は慌てて口を塞ぐ。
「ミシェル嬢?」
マルクス様が不思議そうに、覗き込んでくる。
私は頭を振って、なんでもないと伝える。
それを見ていた、マルクス様のお兄様がクスクスと笑いだした。
「兄上、笑っていないで…」
とマルクス様が話した瞬間、思いがけない言葉が飛んできた。
「その必要はないわ。
息子の名を知らないなんて、どういう教育をしているのかしら?」
と奥にいたはずの王妃様が、叫びながらこちらにやって来た。
「王妃様。お久しぶりでございます」
私はきちんと挨拶をする。
が、前回名前を聞いていないので、王妃様と呼ぶしかない。
「お久しぶりって、貴女ねぇ…「母上。何故出て来られたのですか?」
「何を言っているの?貴男の名を知らないなんて、どうかしてるわ」
「知らない人もいますよ。
ですが今回は、私が話すので出て来ないでくださいと、お願いしたはずですが?」
「で、でもねぇ…」
「母上…」
マルクス様のお兄様は、じとぉ…と王妃様を見る。
「わかった。分かったから、そんな目で見ないで」
「自分のお部屋にお戻りください。私の事は構う必要はないので…」
そう言われた王妃様はしょんぼりとしたように見せながら
「終わったら報告してねぇ」
と言って帰っていった。
玄関先には、マルクス様と側妃様…それからもう一人。
「あの人、誰だろう?」
今まで会ったことのない人が居た。
「お嬢様。降りられますか?」
御者が心配そうに、声をかけてくれる。
「降りたくなるような雰囲気じゃないんだけど…行くしかないでしょうね」
私の言葉に、ハハハッと笑うことしか出来ない御者は、御者台から降りて入口を開けてくれる。
「ありがとう。それから、荷物を…」
と言ったところで、私は一人で来たから、運んで貰う人が居ない。
どうしようかと悩んでいると、御者が馬車の中にはいり、荷物を取り出してくれた。
するとそれを見ていたマルクス様は、すぐ隣りに立っていた男性に声をかけてくださったようで。その男性が走ってくる。
「荷物がお有りでしたら、お運びいたします」
「ありがとうございます。では、これを…」
御者の手にあるものを指すと、直ぐに受け取ってくれた。
そして私が御者にお礼を言ってマルクス様の方に歩き出すと、そのまま後ろをついてきてくれた。
「本日は、お時間を取って頂き、ありがとうございます」
私は、マルクス様にそう言った。
すると何故か、側妃様の隣りにいた男性が
「君が、ミシェル・オーギュストかな」
と声をかけてきた。
「…」
私は知らない方なので、声をかけて良いのか分からず、マルクス様を見た。
「あっ!?…すみません」
マルクス様は私を見て、何かに気付いたのかこう言ってから、すぐもう一人の男性に目を向けて
「兄上。ミシェル嬢は多分、兄上を知りません」
と言った。
「はぁ!?」
「えっと…
ミシェル嬢は、家の中にずっとおられたので、外の情報を知りません。
もしかしたら、兄上のことも…」
「えっ!?マルクス様の、お兄様なのですか?」
私はびっくりして、声を出してしまった。
私は慌てて口を塞ぐ。
「ミシェル嬢?」
マルクス様が不思議そうに、覗き込んでくる。
私は頭を振って、なんでもないと伝える。
それを見ていた、マルクス様のお兄様がクスクスと笑いだした。
「兄上、笑っていないで…」
とマルクス様が話した瞬間、思いがけない言葉が飛んできた。
「その必要はないわ。
息子の名を知らないなんて、どういう教育をしているのかしら?」
と奥にいたはずの王妃様が、叫びながらこちらにやって来た。
「王妃様。お久しぶりでございます」
私はきちんと挨拶をする。
が、前回名前を聞いていないので、王妃様と呼ぶしかない。
「お久しぶりって、貴女ねぇ…「母上。何故出て来られたのですか?」
「何を言っているの?貴男の名を知らないなんて、どうかしてるわ」
「知らない人もいますよ。
ですが今回は、私が話すので出て来ないでくださいと、お願いしたはずですが?」
「で、でもねぇ…」
「母上…」
マルクス様のお兄様は、じとぉ…と王妃様を見る。
「わかった。分かったから、そんな目で見ないで」
「自分のお部屋にお戻りください。私の事は構う必要はないので…」
そう言われた王妃様はしょんぼりとしたように見せながら
「終わったら報告してねぇ」
と言って帰っていった。
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