私の存在

戒月冷音

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第39話

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それからしばらくして、マルクス様とお会いできる日が決まった。
私はその日に合わせ、日本で作っていたお菓子を何点か作成し、お見上げとした。
今回は、前回好評だったパウンドケーキの別バージョンと、シフォンケーキ、それから…ポテトチップスだった。

「これは…本当に芋、なのか?ミシェル」
「はい。ジャライモを出来るだけ薄く切って、油であげるのです」
ジャライモとは、じゃがいもに似た食べ物で、デンプンが少ないため切ってからデンプンを洗い流す必要がなく、そのまま油に投入できるのだ。
「ジャライモがこんなお菓子になるとは…」
お父様とお兄様は、パリパリパリと音を鳴らせながら次々と食べていく。
「お父様とお兄様は、食べるのをおやめください」
「何故だ?」
「おみあげがなくなってしまいます」
「「あ…」」
二人は、今気づいたかのような反応をしていた。

そんな2人を見てから振り向くと、こっちはシフォンケーキが無くなりそうだった。
「お母様とお姉様も…太りますわよ」
その言葉にビクッとなったお二人は、お皿を持ったままゆっくりと振り返り
「太る?」
「お砂糖を、たっぷり使っておりますから」
「で、でも、そんなに甘く感じないわ」
「もう、舌が甘さに慣れてしまったのかもしれませんね」
「「そうなの?」」
こっちの二人も、最後は前の2人と同じ顔をした。

こんなに楽しく優しい家族に触れる度、私は前世を思い出す。
どうして前世の両親は、私に何も言わなかったのか?
どうして私は、あの家で一人ぼっちだったのか?
どうして…どうして…
そして何時も答えが出ないまま、ミェシェルに戻る。

「お父様もお母様も、お仕事は良いのですか?侍従の方々の姿が見えませんが…」
「私はきちんと終わらせてから来てるわ。あなたは?」
「わ、わたしは…戻って仕事をするよ」
お父様はそう言うと、しょんぼりと執務室に戻っていく。
「お父様。休憩用にもう少し揚げておきますから、頑張ってください」
私の呼びかけに、嬉しそうにガッツポーズをしたお父様は
「頑張ってくるよ」
と言って走っていった。

その後、ジャライモ10個分を揚げた後、手伝ってくれた料理長たちにクッキーとパウンドケーキを差し入れた。
皆、甘いものはあまり食べれないようで、大切に持ち帰れるように袋に入れていた。
子供の居る人は、人数分貰ってもいいかと聞いてきたので、それを許可しケーキの数を増やした。
やっぱり、いつの時代も甘いものは正義だと、この時思った。


その次の日、マルクス様に会うため離宮をたずねる。
今日は、私一人だった。
なにか嫌な予感がする中、私は離宮の前に馬車を止めた。
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