私の存在

戒月冷音

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第46話

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「珈琲のお味のものは、少し苦みがございます。
 側妃様やカサンドラ様にお出しする時には、クリームを足すと
 ちょうどいいかと」
私がそう言うと、ヘンドリック様は
「それはいいかもしれない。少しであれば俺もクリームを食べれるかも」
と言われた。

もしかしたらヘンドリック様は、甘いもの…というか、クリームが得意ではないのかも…
そう思った私は、たまたま持ってきていた珈琲のシロップを出し
「すみません。少し深めのお皿は、ありますか?」
と、メイドさんに尋ねた。
「はい。こちらは、いかがでしょうか?」
と出されたお皿は、サイズ的に小鉢ぐらいだった。
「ありがとうございます」

私はお礼を言うと、ヒエヒエのクリームを取り出し小鉢に絞ると、その上から珈琲のシロップをかけ、それをヘンドリック様に
「お試しください」
と言って、渡した。
「甘くないと、思うのですが…無理でしたら、残して大丈夫です」
私の言葉に、何かを察したヘンドリック様は、小鉢を受け取ると恐る恐るクリームを掬い、口に含む。
「んっ!?これは…」
「ヘンドリック様、クリーム…大丈夫ですか?」
カサンドラ様が、心配そうに見ている。
多分2人の時、カサンドラ様は甘いもの好き。ヘンドリック様は甘いものが苦手。
という状態で、お茶会がしづらかったのかもしれない。

お茶会は基本、お茶とお菓子を囲みながら、お互いのことを知っていく場。
そこで苦手なものがでできたら、あまり長居はしないだろう。
けれど今、ヘンドリック様はクリームをパクパクと食べている。
「兄上?大丈夫ですか?」
マルクス様も知っていたようで、心配している。
「ミシェル嬢。済まないが、2人に同じ物を…」
「畏まりました」
ヘンドリック様のご注文通り、私はヒエヒエのクリームの上に珈琲シロップを掛けたものを、マルクス様とカサンドラ様に渡した。

お二人は、それを食べたと同時に
「兄上の言いたいことが、分かりました」
「これでしたら、大丈夫ですのね」
と納得した様子だった。
ヒエヒエのクリームにしたのは、冷やすことで甘さが緩和され、上からかけた珈琲も同じ事が起き、苦みの効いたアイス…アフォガードのような味になる。
これなら甘さが苦手な方も、一緒に楽しめるデザートなのだ。

「これは…あますぎないわ」
「これは兄上好みですね。苦みもあって、よく冷えているから、甘く感じない」
「食べると分かるだろ。俺は、これくらいがいいんだ」
カサンドラ様もマルクス様も、ヘンドリック様の好みがわかって、嬉しそうだ。
「しかし、ミシェル嬢はどうやってこのようなお菓子を?」
突然聞かれて、私は一瞬悩んだが、
「私は、なにかを作るのが好きです。
 少し前、シェフからお菓子の作り方を教えてもらってから、
 色々試しました。その成果…ですかね」
と無難な答えを返した。
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