私の存在

戒月冷音

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第47話

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その後ヘンドリック様は、カサンドラ様と共に、王妃様のところへ向かうと言って席を立ち、側妃様はお腹がいっぱいになってしまったので、部屋に戻って休むと言って中に戻られた。
そしてガゼボには、私とマルクス様が残った。

「今日もたくさん、お菓子をありがとう。
 まさか、ポテチが食べれるとは思わなかった」
そう言ってマルクス様は笑うと
「兄上。ポテチに嵌ったかも」
そう言った。
「そうなのですか?」
入っていたかごを見ると、全てなくなっている。
あれ?たしか私、紙を敷いていたはず…なのだけれど、その紙ごとなくなっていた。
「兄上が、強いてあった紙に包んで、持っていったよ」
「き、気付きませんでした」
「それにしても、この世界に揚げるっていう調理法あったっけ?」
「ないような気がします。私が料理長に伝えた時、不思議な顔してましたから」
「あー、やっぱり」
「なので、最初は鍋に少し溜まるくらいの油を入れて、そこに
 水気をしっかり切ったジャライモを入れました」
「あー、そっか。そうなるよな」
「でも、うまくいきました」
そう言ってもう一つ、取っておいたかごを取り出した。

「もう一個あったの?」
「はい。すぐに無くなってしうと、思ってましたから」
「ありがとう」
そう言うとマルクス様は、パリパリと食べ始めた。

私が前世、かってもらえない代わりに、自分で作っていたものが、まさか次の世界でこんなに役に立つと思わなかった。
前世の知識を誰かに話すと、先生のように変わってしまうと思っていたから出さなくなった。
けれどマルクス様の前では、ある程度出してもマルクス様は変わらない。
逆に知っているから、懐かしさのほうが先にくる。

私は、そんなマルクス様をじっと見ていた。
パリパリと音を立て、嬉しそうにポテチを食べている、マルクス様…
パリパリ、パリ…パ、リ…
「あのぉ…何か、ついてる?」
「えっ!?」
「俺をじっと、見てるから…」
「い、いいえ。あのっ、美味しそうに無べるなぁ~と思って…」
「君も、食べる?」
そう言って、一枚つまんだ手を私の口の前に差し出す。
「あーん…」
マルクス様の声に合わせて小さく口を開くと、ポテチの端を私の唇に乗せてくれた。
口を閉じると、パリン…と口の端で、ポテチが割れた。
私は口元を隠し、唇の間に残ったポテチを、口の中に入れる。
パリポリと音がして懐かしい味と共に、悲しい記憶が蘇ってきた。
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