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第48話
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私、松本江利花が6か7歳の時、学校の行事か何かで、親と一緒に学校に行くことがあった。
うちの学校は小中一貫校で、こういう行事の時は中学生も一緒だった。
だからこういう行事の時は、三兄妹が揃うことが普通だった。
もちろん私は、初めて両親と参加できると楽しみにしていた。
ところが…
当日、母は兄と、父は姉となり、私は一人だった。
両親はこれで当たり前という顔で参加し、他の親が心配する。
けれど、心配してなにかされると
「うちの教育方針ですので、ほっといていただけます?」
と言って私を回収し、
「はいこれ、食べてればいいでしょ」
と言って渡されたのが、ポテチだった。
ご飯の時も同じ。自分達の弁当はあっても、私の分はない。
「好きなもの、食べればいいじゃない」
と言う割に、小遣いはない。
だから貰ったポテチを食べて、水を飲む。
それで、お腹を膨らませていた。
・・・・・・・
「…シェル嬢?ミシェル嬢?大丈夫か?」
はっ!?
「す、すみません。ボーっとしてました」
「何か…思い出してた?」
「あっ…いいえ。
ただ、ポテトチップスがうまくできたので、揚げ物が作れるかなぁ~と」
「揚げ物!?とんかつとか、唐揚げか?」
「はい。材料が変わってくるので、名前は変わりますが」
「うわーっ楽しみだなぁ」
マルクス様は多分、食べ物については私と同じで、色々食べたいものもあったと思う。
私は、お刺身が食べたい。
この世界に生食文化がないため、それは叶わないが、魚は焼き調理しかない。
ちなみに…
「マルクス様は、あっちの世界の食べ物で、また食べたいと思っているものは
ありますか?」
と、聞いてみたことがある。
すると
「絶対に無理だけど、もつ煮込みが食べたい」
と言われてしまった。
さすが53年生きてるといろいろ知ってる。
流石に、私はもつ煮込みの作り方を知らない。
そして、もつ…動物の内蔵なんて、この世界では絶対に食べないだろう。
そんな事を考えながら、私とマルクス様は揚げ物という世界に花を咲かせる。
そしてこの世界には、魔物料理というものがある。
しっかり火を入れなければ食べれないその料理に、揚げるというのはもってこいの調理法だった。
「あの肉とか、使えるんじゃないか?」
「でも油が多いと、聞いたことがあります」
「ん~…なんかいいもの、ないかなぁ~」
そんな事を話していると、帰りの時間が来たようで、マルクス様の侍従が、お迎えがきたことを教えてくれた。
「また、食べ物の話ばかりになってしまって、すまない」
「いいえ。私は…楽しいですよ。
長生きではないので、レパートリーは少ないですが」
「いいや。新しいものを知っているから、楽しいよ」
「そう言っていただけて、ありがたいです」
「……でも、最初の目的からは、離れてしまったな」
「候補のことですか?
それは、王妃様の思いつきで始まったので、そんなに深く考えなくていいと
お母様に言われました」
「そうか…メリテッサ殿が…」
そう呟いたまま考え込んでしまったマルクス様と、馬車度目まで歩いていくと、何故かそこにお兄様が待っていた。
うちの学校は小中一貫校で、こういう行事の時は中学生も一緒だった。
だからこういう行事の時は、三兄妹が揃うことが普通だった。
もちろん私は、初めて両親と参加できると楽しみにしていた。
ところが…
当日、母は兄と、父は姉となり、私は一人だった。
両親はこれで当たり前という顔で参加し、他の親が心配する。
けれど、心配してなにかされると
「うちの教育方針ですので、ほっといていただけます?」
と言って私を回収し、
「はいこれ、食べてればいいでしょ」
と言って渡されたのが、ポテチだった。
ご飯の時も同じ。自分達の弁当はあっても、私の分はない。
「好きなもの、食べればいいじゃない」
と言う割に、小遣いはない。
だから貰ったポテチを食べて、水を飲む。
それで、お腹を膨らませていた。
・・・・・・・
「…シェル嬢?ミシェル嬢?大丈夫か?」
はっ!?
「す、すみません。ボーっとしてました」
「何か…思い出してた?」
「あっ…いいえ。
ただ、ポテトチップスがうまくできたので、揚げ物が作れるかなぁ~と」
「揚げ物!?とんかつとか、唐揚げか?」
「はい。材料が変わってくるので、名前は変わりますが」
「うわーっ楽しみだなぁ」
マルクス様は多分、食べ物については私と同じで、色々食べたいものもあったと思う。
私は、お刺身が食べたい。
この世界に生食文化がないため、それは叶わないが、魚は焼き調理しかない。
ちなみに…
「マルクス様は、あっちの世界の食べ物で、また食べたいと思っているものは
ありますか?」
と、聞いてみたことがある。
すると
「絶対に無理だけど、もつ煮込みが食べたい」
と言われてしまった。
さすが53年生きてるといろいろ知ってる。
流石に、私はもつ煮込みの作り方を知らない。
そして、もつ…動物の内蔵なんて、この世界では絶対に食べないだろう。
そんな事を考えながら、私とマルクス様は揚げ物という世界に花を咲かせる。
そしてこの世界には、魔物料理というものがある。
しっかり火を入れなければ食べれないその料理に、揚げるというのはもってこいの調理法だった。
「あの肉とか、使えるんじゃないか?」
「でも油が多いと、聞いたことがあります」
「ん~…なんかいいもの、ないかなぁ~」
そんな事を話していると、帰りの時間が来たようで、マルクス様の侍従が、お迎えがきたことを教えてくれた。
「また、食べ物の話ばかりになってしまって、すまない」
「いいえ。私は…楽しいですよ。
長生きではないので、レパートリーは少ないですが」
「いいや。新しいものを知っているから、楽しいよ」
「そう言っていただけて、ありがたいです」
「……でも、最初の目的からは、離れてしまったな」
「候補のことですか?
それは、王妃様の思いつきで始まったので、そんなに深く考えなくていいと
お母様に言われました」
「そうか…メリテッサ殿が…」
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