私の存在

戒月冷音

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第53話

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それからまたしばらくして、今度はヘンドリック様が宰相様と第一王女様を連れて、やって来た。
今度はきちんと先触れを出し、予定を確認して来られたので、家族皆が揃っていた。

「本日は、時間を作ってもらい感謝する」
「いいえ。
 私共の方も、事が事だけにはっきりしてほしいので、
 王家からの連絡には、最優先で対応することにしておりましたから。
 それで、どうなりました?」
お父様の問いかけに答えたのは、宰相様だ。
「本当に申し訳ございません。
 王妃様の行動は、私共も国王陛下も確認しておらず、あの後、
 帰ってきた使者の言葉で皆慌てました。
 ですが、王妃様の行動は国の象徴としての行為とは取れず、
 公爵令嬢をを侍女に迎えることは出来ないこと、
 貴族令嬢様に、料理を作ってもらうことなど言語道断な事を
 我が妻である第1王女・マリーシェルに、コンコンと説明してもらい
 やっと納得されました」
「では、王妃様の話はなし…と、いう事で大丈夫なのですね?」
お父様が再確認すると、
「はい。お母様には理解していただきました。
 もしまだ何か言うようでしたら、私にお伝え下さい。
 今度は皆様の前で、お説教させて頂きます」
宰相様の後ろにいた、第一王女様が答えた。
「いや、マリー?それをやったら、王妃としての威厳が…」
「お兄様。お兄様も、お父様と同じですの?
 そんなことだから、何も我慢しないのよ」
「まあ…意見を言えるのは、マリーだけだし…仕方ないか」

私達家族の眼の前で、兄妹の遣り取りをする第1王子と第1王女。
第一王女様は、早いうちから宰相様の婚約者に決まっていた。
今の宰相様は30前半のお年で、第一王女様は20過ぎ。
18になったと同時にお嫁入りし、今ではお子様が2人いらっしゃる。

「マリーシエル様のお墨付きであれば、安心してもう一つの話を進められます」
「でしょ。
 私だって、弟のために動くのって言っても、お兄様が止めてたから
 動けなかったの。
 でもねぇ~。あれはダメよ。
 自分が美味しいお菓子食べたいから、ルールも変える…なんて言った時には
 いいかげんにしろって、叫んだわ」
興奮して話すマリーシエル様に
「まぁ、そんな事を?」
お母様が相槌を入れた。
「えぇ、言ったのよ。メリテッサ様。あんなわがままな王妃ってどうなの?」
「お祖母様が居たら、説教どころではないわね」
「でしょう」

私は眼の前で話すお母様とマリーシエル様を見て、やはり王家に関わる女性は、王妃様を除いてしっかりした女性でなければ務まらないのかと思った。
けれど私を見ていたヘンドリック様が、なにかに気が付いたようで
「ミシェル嬢。勘違いしないでくれ。
 うちの女性は、強くなくては務まらないとか、考えないでくれ」
と叫んだ。
すると
「お兄様?強いってどういう意味かしら?」
「ヘンドリック様。私は別ですわよね?」
とお二人に詰め寄られて、たじたじになっていた。
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