私の存在

戒月冷音

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第58話

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お母様と王妃様の冷戦が続く中、私とマルクス様はゆっくりと歩き出す。
「なっ。何をやってるの?」
王妃様が気付きそう言うが、私達は止まらない。
後ろではお兄様とお姉様が
「やるわね」
「多分、ミシェルの提案だな」
と話していたが、スルーすることにした。

私とマルクス様はそのまま、国王陛下の正面に立つと、マルクス様は片膝を着き臣下の礼を、私はカーテシーをしてご挨拶した。
「父上。こちらがミシェル・オーギュスト公爵令嬢でございます」
「この国の太陽。国王陛下に拝謁できましたこと、光栄に思います。
 わたしはミシェル・オーギュストと申します。
 この度、マルクス第二王子殿下との婚約のために、呼ばれたと理解しております。
 私は、殆ど社交に出ておらず、世間をよく分かっておりませんが、
 それでも、マルクス殿下の婚約者にと望んでいただけるのであれば、
 謹んでお受けしたいと思っております」
そこまで言って、陛下のお言葉を待った。

「先程まで、蚊帳の外になっておったが、ようやく願いがかなったようだ。
 私はマルクスの父でマイルズ・エルディニアだ。
 国王という立場ではあるが、今はマルクスの父として相手をさせてくれ」
国王陛下はそう言って、ニッコリと笑った。
「父上…」
「畏まりました。ですが、国王陛下とお呼びすることしか出来ませんが…」
「ククッ…そう返してくるか。まあ良い。それで呼んでくれ」
「ありがとうございます。
 それでは…お母様とエリス王妃様は、まだ何かご用事お有りのようですので、
 私達は場所を移しませんか?」
「ふむ…それもそうだな。マルがよ。いい場所はあるか?」
国王陛下は側妃様に尋ねた。
するとそこへ
「あ、あの、お父様。私、おすすめの場所がございます。
 そこに、いたしませんか?」
とマリーシェル様が、提案してくださった。

「そうか。マリーのおすすめであれば、行かぬわけにはいかん…が。
 それで良いかな?ミシェル嬢。そしてオーギュスト公爵」
「わたしは、ミシェルが良ければ何も」
「私は、マリーシェル様のおすすめが、気になります」
「ではそこにしよう。マリー、案内を頼む」
「はい」
そう言うと国王陛下は席を立ち、マリーシエル様についていく。

「あ、あなた。お待ちになって」
エリス王妃がそう叫ぶが、お母様が逃がすはずもない。
「国王陛下。エリス様には今一度、しっかりと教育させて頂きます」
「あぁ。頼む。王妃が好き勝手に動かれては、公務にも支障が出るからな」
「心得ました。アンソニー。後で合流するわ」
「待っているよ」
そう言うとお母様と王妃様をそこに残し、私達はその部屋を後にした。
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