私の存在

戒月冷音

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第80話

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カサンドラ様は、首を傾げる。
「私が、その人を避けていたのは、捕まったら、自分の自慢を
 延々とされるからであって、けして、好きではありませんでした。
 どちらかと言うと、嫌いでした。
 しかし相手は、自分に見とれて照れている…そう取られます。
 それがナルシストです」
私の説明に身震いしカサンドラ様は
「ヘンドリック。私はもう、あの方とは会いたくないわ。顔も見たくない」
と言った。

しかし、
「出来るだけ、そうなるようにしよう」
とヘンドリック様は言うが、その考えは甘い。
「お気を付けください、ヘンドリック様。
 多分、ルイス様は見えなくなると、探し始めます」
こういう性格だった前世の兄は、一度会った女性には、必ず逃げられた。
だから、彼女いない歴が長く、私が死ぬときまでには、結婚できなかった。

「では、どうすれば良いのだ」
ヘンドリック様が頭を抱える。
しかし私は気分が悪く話せそうになかった。
すると、
「兄上とサンドラ様の仲を見せつけた後、お二人揃ってお会いになり、カサンドラ様の口からはっきりと言われるのが、良いかと存じます」
とマルクス様が、私が言おうとしていたことを代わりに言ってくださった。

「マルクス?」
「多分、そう言うことだろ?ミシェル」
「フゥ…はい。ありがとうございます」
先程から、まだ回復していない私に変わり説明してくださったようだ。
でも何故、分かったのかしら?
そう思ったと同時に、マルクス様はソファに座っている私の隣りに座ると、そのまま頬を擦り寄せ、小さな声で
「53年も生きていたら、色んな人な合うよ」
と言い、頬を離して、私の顔を見た瞬間、笑ってくれた。

「兄上。ルイス様は少し、調子に乗っておられます。
 今のうちに摘んでおいたほうが、王妃様の抑えにもなるかと」
「マルクス。やはりそうか、お前もそう思っていたか」
「はい。今回の事は、王妃様がお呼びになったとしても、
 まさかあの2人の中で、ここまでの空想が進んでいると、思って
 いなかったのです。
 俺は、あの女と話すのも嫌です。
 ミシェルが、俺の伴侶です。それを、変える気はない。
 だから俺は、メリア様を、とことんまで拒否します」
マルクス様の声が、どんどんと低くなる。
怒っているんだ…
でも…なんで?

「マルクス、落ち着け」
「これが落ち着いていられますか。
 さっきあの2人は、ミシェルを排除して話していた。
 居ないものとして、扱った。それが許せない」
「分かった。分かったから…」
何故か、ヘンドリック様が慌てている。
そしてマルクス様はと言えば、ヘンドリック様と話す時は、怒りが溢れ、私の方を向くと、ころっと表情を変え
「ミシェル、大丈夫?落ち着いたかな?」
と、いつもの声を出して、対応してくれる。

しかし、それを見ていたヘンドリック様とカサンドラ様は
「ああなったマルクスは、自分が納得するまで、収まらないからな」
「ヘンドリック様、今回は、落ち着かれますでしょうか?」
「分からん。ただ、あの二人が帰るまでに、母上が身を持って味わうだろうな」
そう話し、ルイス第2王子とメリア第1王女、そして母上の身の上を心配した。
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