私の存在

戒月冷音

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第79話

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マルクス様は、私の指を2本、ゆっくりと剥がしてからもう一度
「カサンドラ様、抜けますか?」
と確認した。
カサンドラ様がゆっくりと手を引くと、スポンっと手を抜いた。
その瞬間、私はビクッとして、自分の周りを確認すると、すぐさま
「ごめんなさい。ごめんなさい」
と誤った。

けれど
「ミシェル嬢。大丈夫だよ。焦らず、ゆっくりと回りを確認して?」
マルクス様のその声に、私は一度彼を見る。
マルクス様は、私を支えてくれていて、優しい笑顔で私を見ていた。
そしてくるりと、あたりを見回す。
心配そうに、私を見ているカサンドラ様。
カサンドラ様のそばに立つヘンドリック様を見た私は、ホッと息を吐いた。


「落ち着いた?」
マルクス様の声に、私はコクンと頷く。
「申し訳、ございません」
私が、何とかそれだけいうと、ヘンドリック様が
「アイツラは仕方ないよ。何度言っても、聞かないんだ」
という。
「そうですね。いつもヘンドリック様は、同じ事を言われてました。
 マルクス様は、メリア様に追いかけ回されていたところを、
 見たことがありますわ」
「あー…あれは、最悪だった。
 俺は逃げてんのに、照れないでよって、勝手に決めつけて言うんだ。
 なんで、俺の趣味が自分だって、思ってるんだろ?
 あの臭い降水と、ケバい化粧、それで、なんで?」
マルクス様は、理解できないようだ。

カサンドラ様とは、全くタイプが違うので、
「私は、よく分からないのですが、メリア様のような方は大抵
 集まりの中心に居て、自分を見てくれるのが当たり前と、
 思っている人が多いですね。
 ですが私は、ルイス様が分かりません」
と話された。
「カサンドラの周りには、居ないよな。
 ルイスは、ナルシストだから、自分の趣味は自分なんだ。
 そして、カサンドラのような、静かな女性を好む」
「それで私を…」
ヘンドリック様の説明で、カサンドラ様はなんで自分がと思ってていた疑問が、少し解けたようだ。

けれど…
「カサンドラ様」
「ミシェル様。大丈夫ですか?」
「私は大丈夫ですが、ルイス様のような方は、ご自身が
 はっきり言われない限りは、ずっと声を掛けてきます」
「そうなの?」
「ヘンドリック様が、ルイス様に説明されておられましたが、
 御本人の中であれは、ヘンドリック様が勝手に言っていることで、
 カサンドラ様は、自分に興味があると思っておられますよ」
私がそう言うと、カサンドラ様は震え上がる。
「な、何故?そう、思われるのですか?」
「昔、あの方にそっくりな方が、居たのです。
 話しても、聞いてもらえず、自分の事しか言いませんでした。
 そして私が、その方と逆の事を言った時、こう言われたのです。
 お前は、俺のことを好いていると思っていた。
 いつも、俺の見える所に居て、絶対そばに寄ってこないだろ…と」
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