私の存在

戒月冷音

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第78話

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「ルイスっ、メリアっ、何をしているの!」
突然、王妃様の声が響き、声のした方を見ると、王妃様が入口で青い顔をしていた。

「エリス伯母上。ヘンドリックが、俺の恋の邪魔をするのです」
「伯母様、私はマルクス様と、婚姻するのですよね?
 私はもう、その気なのですよ?なのに、何であのような小娘が…」
「お前達っ!いい加減にしなさいっ!
 私はついたらすぐ、私の所に来るように、伝えていたはずです」
「ですが…」
「婚約者に、顔を見せるのは当たり前です」
「メリア。貴女はいつ、婚約したのですか?
 それにルイス。カサンドラ様は、ヘンドリックの婚約者です。
 いつになったら覚えるの?」
王妃様の言葉に、やっと自分達がしたことを理解した2人。
王妃様はそのまま2人を護衛騎士に渡し、国王のいる部屋につれていくように命じた。


「カサンドラ様、ミシェル様。ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。
 この責任は私が取り、きちんと説明し、分かってもらった上で、
 隣国へ帰っていただきます。
 本当に、申し訳ございません」
王妃様はそう言って頭を下げると、速やかにこの部屋を後にした。

私には、そんな王妃様が怖かった。
何故、私に頭を下げられたのかしら?
また何か、別のことでも考えているのかしら?
そんな事を考えてしまう。

「はぁ~…やっぱり、台風だったな」
「そうですね、兄上。
 いつも自分達のことしか言わない。間違っていようが
 失礼をしていようが、お構い無しだ」
「カサンドラ。大丈夫だったかい?」
「えぇ、ですが…」
そういったカサンドラ様が、私と繋いだ手を見て
「ミシェル様が、震えていらっしゃいます」
と言った。

私は、無意識に震えていた。
王妃様の行動には驚いたが、ルイス様とメリア様の行動は、間違いなく前世の兄と姉だった。
何でも決めつけ、自分の事だけを言う。
そして、相手の言葉は理解せず、自分の要求だけを飲ませる…
それを聞いた瞬間、ヒュッ…と息がつまり、何も出来ななくなった。

「ミシェルっ!」
マルクス様がすぐに駆け寄ってくださるが、身体が固まり、カサンドラ様の手をぎゅっと握ったまま、カタカタと震えるしかできない。
「カサンドラ様、手を離せますか?」
マルクス様からそう言われ、私の手の中でグニグニと指を動かす、カサンドラ様。
「無理なようですわ。ミシェル様の指が、硬直しているようで…」
「分かりました。では一本ずつ、剥がしていきますね」
そう言うとマルクス様は、片方の腕で私を抱え込むと、もう一方の手で、カサンドラ様の手から私の指を、ゆっくりと引き剥がしていった。
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