私の存在

戒月冷音

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第91話

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ルーザは固まった。
ミシェル様がお一人で眠っておられるはずのベットに、マルクス様が居て、ミシェル様に手を伸ばしておられたのだ。
「マルクス様、何をしておられるのですか?」
「ルーザ、お前は無粋だな」
「何をしているのかと、聞いておりますが?」
「流石に、元母上の侍女には通用しないか」
「あ、あの。私が手を離さなかったのが原因ですので、怒らないで…」
「お手を?」
ルーザは、昨日のことを知らないのか、コテッと首を傾げた。
すると、体を起こしたマルクス様が
「ルーザ、こういうことだ」
と、まだ掴んだままの私の手を、そのまま見せた。

私は
「きゃっ」
と手を離し、布団を被る。
「だから、無粋だと言ったのだ」
「気が付かず、申し訳ございません。
 では、私は朝食の準備をしてまいりますが、マルクス様は
 どうなさいますか?」
「ここに2人分、準備を」
「畏まりました」
ルーザはそう言うと、一礼して部屋を出ていった。

「本当に…もう少し空気を読んでくれ。
 ミシェル、少し時間が出来た。
 俺は一度着替えて来るから、それまでに復活しておいて」
その言葉と、布団ごとの抱擁をしてから、マルクス様は部屋を出た。
私はそれを確認すると、布団からズルズルとはい出て、鏡の前に座った。

「うぅ…こんなボサボサの頭で、寝起きの顔を彼に見せていたの?」
そう思えば、突然恥ずかしくなり、前世の感覚で急いで、朝の日課を開始した。
まずは顔を洗って肌を潤し、髪をとかして綺麗にする。
服を選び、コルセットを使用しない、簡単な装いのものを選択。
すぐに着替えて、マルクス様が来るのを待つ。


コンコン…
「マルクスだけと、入って良い?」
「ど、どうぞ」
扉が開き、マルクス様が入ってくる。
「えっ!?ルーザ、もう来たの?」
「いいえ。まだですが…」
「えっ!?だって、着替えてるから」
「前世と同じしように、しただけです。
 私は一人で、着替えぐらい出来ますよ」
「あぁ、そうか。前世は自分で、全部やってたもんな」
「そうですよ。だから…」
コンコン
「朝食をお持ちいたしました」
ルーザの声に、そこで会話を辞めた私達は、すぐにルーザを迎え入れた。

「あれ?ミシェル様は、着替えられたのですか?」
「はい。簡易なものが、クローゼットにありましたので、それを…」
「あぁ、そうでございました。
 では後ほど、整えるとして、今は食事の準備をさせていただきますね」
「お願いします」
私とマルクス様は、ルーザが朝食の準備をする間、朝の紅茶を飲みながら、昨日のことについて話しをした。

「お、王妃様は、どうなったのですか?」
「兄上が、完全にお怒りになったので、まだ、どうなったとか言えない」
「ヘンドリック様が…」
前回、怒ったヘンドリック様を、ちょっと見ただけでも怖かったのに、お怒りに…ってどうなるのかしら?
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