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第92話
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マルクス様はそれ以上、何も言わなかった、
ただ私と同じ様に何かを思い出し、ブルルッと震える素振りをしていた。
「どうされました?」
「いや。昔、兄上が俺を貶めようとした侍女に切れた時を、思い出してた」
「もしかして、怖かった…記憶ですか?」
「そう…だけど、ミシェルも?」
「少し前に、ヘンドリック様が、マルクス様を引き離そうとしたのかと、
王妃様に詰め寄った時が、怖かったので、
あれより怖いのかなと、思いまして…」
「…怖い、なんてものじゃない。
俺は母上と一緒の時に遭遇したが、しがみついてしまったくらいだ」
「そんなに…」
「兄上は、自分の決めたことを絶対変えない方だ。
幼い頃、俺と母上が、王妃様を支持する者に攫われた時、その力を見た。
兄上は間違いなく、王の器だ。俺は、その補佐に過ぎない」
「ヘンドリック様は、それを認めていらっしゃるのですね」
「そうだ。だから今回の王妃様の行動が、どうしても許せないのだそうだ。
だから、自分で始末をつけると言って、王妃様を連れて
王城に行ってしまわれた」
「ヘンドリック様は、マルクス様を信頼されていらっしゃるのですね」
「そうなのだろうか?」
「そうですよ。
だってヘンドリック様は、私の事でもマルクス様が説明されれば、
それを、全面的に信じられます。
多分ですが、私が前世の記憶を持っていると、マルクス様がおっしゃれば、
それはヘンドリック様の中では、信じるに値することとなるはずです」
「だが何時も、俺が迷惑をかけて、兄上を振り回しているように思えるのだが・・・」
マルクス様はどうやら、自分に自信がないことを、ヘンドリック様にばれないようにしているようで、逆にそれがヘンドリック様に迷惑をかけていると誤解しているようだ。
「マルクス様」
「何だ?」
「マルクス様は、もっとご自分に自信をもって良いと思います」
「その理由は?」
「私と、同じだから」
「同じ・・・」
「今だからお話ししますが、私は前世で親にも兄にも相手にされず、
それを利用した姉にこき使われてきました。
私の自由はなく、学校と家との行き帰りと、姉に頼まれたことをするだけの
毎日でした。
私は、それが嫌だった。
けれど、学生で経済力のない私は、それに従うしかない。
だから必死に、耐えてきたけど・・・
姉の頼みを聞いて、帰る途中に電車に引かれて死にました。
だから私はこの世界に来ても、兄姉、家族をすぐには信じられなかった。
そんなことを続けていれば、疑心暗鬼になり、引きこもりになるのは
当たり前のことでした」
私の昔話に、マルクス様は苦しそうな顔をした。
良いのです。貴方が苦しむことはない。私の前世の話しなのですから・・・
「ですので、マルクス様がそうなる前に、私が止めようと思います。
マルクス様は、すごいのです。計算も歴史も全て学んでおられる。
貴方がこの世界に来て、一生懸命学ばれたことは、
ヘンドリック様の支えになるほど。だからヘンドリック様も、
マルクス様、に支えていただきたいのではないでしょうか?」
私がそういった後、マルクス様の後ろから、パチパチパチ・・・と拍手が聞こえてきた。
ただ私と同じ様に何かを思い出し、ブルルッと震える素振りをしていた。
「どうされました?」
「いや。昔、兄上が俺を貶めようとした侍女に切れた時を、思い出してた」
「もしかして、怖かった…記憶ですか?」
「そう…だけど、ミシェルも?」
「少し前に、ヘンドリック様が、マルクス様を引き離そうとしたのかと、
王妃様に詰め寄った時が、怖かったので、
あれより怖いのかなと、思いまして…」
「…怖い、なんてものじゃない。
俺は母上と一緒の時に遭遇したが、しがみついてしまったくらいだ」
「そんなに…」
「兄上は、自分の決めたことを絶対変えない方だ。
幼い頃、俺と母上が、王妃様を支持する者に攫われた時、その力を見た。
兄上は間違いなく、王の器だ。俺は、その補佐に過ぎない」
「ヘンドリック様は、それを認めていらっしゃるのですね」
「そうだ。だから今回の王妃様の行動が、どうしても許せないのだそうだ。
だから、自分で始末をつけると言って、王妃様を連れて
王城に行ってしまわれた」
「ヘンドリック様は、マルクス様を信頼されていらっしゃるのですね」
「そうなのだろうか?」
「そうですよ。
だってヘンドリック様は、私の事でもマルクス様が説明されれば、
それを、全面的に信じられます。
多分ですが、私が前世の記憶を持っていると、マルクス様がおっしゃれば、
それはヘンドリック様の中では、信じるに値することとなるはずです」
「だが何時も、俺が迷惑をかけて、兄上を振り回しているように思えるのだが・・・」
マルクス様はどうやら、自分に自信がないことを、ヘンドリック様にばれないようにしているようで、逆にそれがヘンドリック様に迷惑をかけていると誤解しているようだ。
「マルクス様」
「何だ?」
「マルクス様は、もっとご自分に自信をもって良いと思います」
「その理由は?」
「私と、同じだから」
「同じ・・・」
「今だからお話ししますが、私は前世で親にも兄にも相手にされず、
それを利用した姉にこき使われてきました。
私の自由はなく、学校と家との行き帰りと、姉に頼まれたことをするだけの
毎日でした。
私は、それが嫌だった。
けれど、学生で経済力のない私は、それに従うしかない。
だから必死に、耐えてきたけど・・・
姉の頼みを聞いて、帰る途中に電車に引かれて死にました。
だから私はこの世界に来ても、兄姉、家族をすぐには信じられなかった。
そんなことを続けていれば、疑心暗鬼になり、引きこもりになるのは
当たり前のことでした」
私の昔話に、マルクス様は苦しそうな顔をした。
良いのです。貴方が苦しむことはない。私の前世の話しなのですから・・・
「ですので、マルクス様がそうなる前に、私が止めようと思います。
マルクス様は、すごいのです。計算も歴史も全て学んでおられる。
貴方がこの世界に来て、一生懸命学ばれたことは、
ヘンドリック様の支えになるほど。だからヘンドリック様も、
マルクス様、に支えていただきたいのではないでしょうか?」
私がそういった後、マルクス様の後ろから、パチパチパチ・・・と拍手が聞こえてきた。
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