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洗濯支援スタート
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4月8日 早朝
眠れなかった須田は6時にホテル新浜を出て多賀城文化センターに向かった。
ホテルの玄関に出ると若女将が
「いってらっしゃいませ、これお昼に召し上がって」
と言って大きな握り飯を2つ持たせてくれた。
ホテルから文化センターまでは車で20分ほどの距離。その道のりにあるコンビニや店舗の電気は消えていた。
洗濯機を積んだトラックには業務用の洗濯機に3相200Vの電源を供給するためのディーゼル発電機を積んでいるので停電していても洗濯をすることはできるが、心配なのは水道だった。塩釜市内でも停電で断水していたが、多賀城も同じ状況だと考えられた。トラックに積んだ給水タンクは移動のため水をすべて抜いてしまった。もし断水してしまったら今日の洗濯はできない。
須田の予想は当たっていた。
文化センターの隣の水道局の施設に行くと
「今日いっぱいは難しいな。停電が解消されても地震で水道管が破損している箇所があるかもしれないから通水テストをしてから順次復旧の予定だ」
それは仕方のないことだった。
そんなことも想定内であった。
トラックの荷台を開けて須田が取り出したのは大量の延長コードであった。
発電機の100V用の回路は15Aが2口ある。携帯電話の充電なら30台まとめてできる程度の容量はある。
半分を公務の人専用、残りは避難者用に振り分けてまずはスタートしてみることにした。
避難所を管理する文化センターの館長に断水のため今日の洗濯はできないが、代わりに携帯電話の充電サービスを提供できる旨を伝えると
「それはありがたいです。混乱しないように手伝う人を出しますのでちょっと待っててください」
避難所では自らも被災した方がボランティアとして積極的に知恵と力を出し合っている。
手伝いに名乗り出てくれたのは3人。20歳ぐらいの仲良しカップル田内くんと川村さん、もう1人は川村さんの妹だった。高校生ぐらいに見える。
「充電コーナーありがとうございます。ここで起こること、ここでやることはみんな全部初めてのことなので、やりながら考えながらルールを作っていきましょう!」
田内くんの頼もしい言葉に須田は勇気づけられる。
館内には何の告知もせずに、トラックの横に出したテーブルに
【携帯電話 充電できます!】と書いた貼り紙をするとすぐに人が集まり始めた。
携帯は単なる通信手段ではなく情報の収集にも不可欠なものである。
「携帯の充電をする方は自分で充電ケーブルを用意して並んでください。一般の方は1回15分、役所の人は30分経ったらこちらで取り外しますのでアラームをセットしてコンセントに繋いでください」
田内くんの声はとにかくデカい。よく通る声で簡単にルールを説明しながら充電希望者を順に並べていく。
川村姉妹はアラームがセットされているのを確認すると1台ずつコンセントに繋ぎ、アラームが鳴ると外していく。
「時間になったら必ず取りに来てください。紛失は自己責任でお願いします」
須田の出番はほとんどなかった。
すでに震災が起こってから1か月が過ぎている。
その間に彼らはどれほど多くの辛いことを経験し優しさを失わず、強く生きているのだろうかと想像すると須田は自分の小ささを感じた。
3人の活躍もあり、充電コーナーは混乱なく運営されていた。3人の他にもう1人力強い存在がいた。川村姉妹の母、真由である。昔はヤンチャをしていたであろう風貌で須田とは同年代に見えた。ルールを守らない人には容赦ない言葉を浴びせていたが、話すととても優しい人だとわかった。
周りを見るとたくさんのボランティアや、各地の自治体や業界団体から派遣された人たちがそれぞれの特技を活かして様々なことをしている。
その中でも災害復興支援コーディネーター蓮笑の西岡さん、田中さんの存在はひときわ大きかった。多くの自動車が津波の被害を受けた沿岸部では自転車が大活躍したが、瓦礫が溢れかえった道路ではパンクや自転車の破損がとても多かった。西岡さんは自転車の修理の材料を集めて無料で修理をすることから始めたが、多くのボランティアと合流し、被災した方とボランティアのニーズマッチングをするようになっていた。
この洗濯支援も彼らの協力で場所の確保やスケジュールの調整を行っていた。
毎週各地から交代でやって来る社会福祉協議会の担当者では引継ぎすらままならないが、彼らはすべての避難所が閉鎖になるまではここにいるという覚悟で活動しているので心強い。
人と人が繋がって、小さな力を足し算して大きな災害に立ち向かっている。目に見える力は小さいが、目に見えない力は何よりも重い。
皆、それぞれの想いを胸に被災した方の役に立つことをひとつひとつ探している。
その日、水道は復旧しなかったが夕方には停電は解消されていた。明日は水も使えるようになるということを水道局で確認した。
洗濯できるという幸せと、新たな仲間が増えた喜びを噛み締める須田はいつの間にか【すだっち】と呼ばれるようになっていた。
眠れなかった須田は6時にホテル新浜を出て多賀城文化センターに向かった。
ホテルの玄関に出ると若女将が
「いってらっしゃいませ、これお昼に召し上がって」
と言って大きな握り飯を2つ持たせてくれた。
ホテルから文化センターまでは車で20分ほどの距離。その道のりにあるコンビニや店舗の電気は消えていた。
洗濯機を積んだトラックには業務用の洗濯機に3相200Vの電源を供給するためのディーゼル発電機を積んでいるので停電していても洗濯をすることはできるが、心配なのは水道だった。塩釜市内でも停電で断水していたが、多賀城も同じ状況だと考えられた。トラックに積んだ給水タンクは移動のため水をすべて抜いてしまった。もし断水してしまったら今日の洗濯はできない。
須田の予想は当たっていた。
文化センターの隣の水道局の施設に行くと
「今日いっぱいは難しいな。停電が解消されても地震で水道管が破損している箇所があるかもしれないから通水テストをしてから順次復旧の予定だ」
それは仕方のないことだった。
そんなことも想定内であった。
トラックの荷台を開けて須田が取り出したのは大量の延長コードであった。
発電機の100V用の回路は15Aが2口ある。携帯電話の充電なら30台まとめてできる程度の容量はある。
半分を公務の人専用、残りは避難者用に振り分けてまずはスタートしてみることにした。
避難所を管理する文化センターの館長に断水のため今日の洗濯はできないが、代わりに携帯電話の充電サービスを提供できる旨を伝えると
「それはありがたいです。混乱しないように手伝う人を出しますのでちょっと待っててください」
避難所では自らも被災した方がボランティアとして積極的に知恵と力を出し合っている。
手伝いに名乗り出てくれたのは3人。20歳ぐらいの仲良しカップル田内くんと川村さん、もう1人は川村さんの妹だった。高校生ぐらいに見える。
「充電コーナーありがとうございます。ここで起こること、ここでやることはみんな全部初めてのことなので、やりながら考えながらルールを作っていきましょう!」
田内くんの頼もしい言葉に須田は勇気づけられる。
館内には何の告知もせずに、トラックの横に出したテーブルに
【携帯電話 充電できます!】と書いた貼り紙をするとすぐに人が集まり始めた。
携帯は単なる通信手段ではなく情報の収集にも不可欠なものである。
「携帯の充電をする方は自分で充電ケーブルを用意して並んでください。一般の方は1回15分、役所の人は30分経ったらこちらで取り外しますのでアラームをセットしてコンセントに繋いでください」
田内くんの声はとにかくデカい。よく通る声で簡単にルールを説明しながら充電希望者を順に並べていく。
川村姉妹はアラームがセットされているのを確認すると1台ずつコンセントに繋ぎ、アラームが鳴ると外していく。
「時間になったら必ず取りに来てください。紛失は自己責任でお願いします」
須田の出番はほとんどなかった。
すでに震災が起こってから1か月が過ぎている。
その間に彼らはどれほど多くの辛いことを経験し優しさを失わず、強く生きているのだろうかと想像すると須田は自分の小ささを感じた。
3人の活躍もあり、充電コーナーは混乱なく運営されていた。3人の他にもう1人力強い存在がいた。川村姉妹の母、真由である。昔はヤンチャをしていたであろう風貌で須田とは同年代に見えた。ルールを守らない人には容赦ない言葉を浴びせていたが、話すととても優しい人だとわかった。
周りを見るとたくさんのボランティアや、各地の自治体や業界団体から派遣された人たちがそれぞれの特技を活かして様々なことをしている。
その中でも災害復興支援コーディネーター蓮笑の西岡さん、田中さんの存在はひときわ大きかった。多くの自動車が津波の被害を受けた沿岸部では自転車が大活躍したが、瓦礫が溢れかえった道路ではパンクや自転車の破損がとても多かった。西岡さんは自転車の修理の材料を集めて無料で修理をすることから始めたが、多くのボランティアと合流し、被災した方とボランティアのニーズマッチングをするようになっていた。
この洗濯支援も彼らの協力で場所の確保やスケジュールの調整を行っていた。
毎週各地から交代でやって来る社会福祉協議会の担当者では引継ぎすらままならないが、彼らはすべての避難所が閉鎖になるまではここにいるという覚悟で活動しているので心強い。
人と人が繋がって、小さな力を足し算して大きな災害に立ち向かっている。目に見える力は小さいが、目に見えない力は何よりも重い。
皆、それぞれの想いを胸に被災した方の役に立つことをひとつひとつ探している。
その日、水道は復旧しなかったが夕方には停電は解消されていた。明日は水も使えるようになるということを水道局で確認した。
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