51 / 73
第51話 旅の準備は大変です
しおりを挟む
「えへ。買っちゃった」
結局買った。冒険者カードで買えるって便利だ。
ちょっとごついけど左腕に着けている。
直径八センチの円に地図が表示され、中心が自分がいる場所らしい。つまり冒険者の街。地図の拡大縮小も可能。殆どの街と村がインプットされていると言っていた。
魔力を使って自分で新たにインプットも出来るらしい。で、行き先もインプット出来るのでついでにしてもらったんだ。
後は馬を見つけるだけ。
『やっぱりユイジュがいないと、止めてくれるやつがいないな』
ボソッとチェトが言った。いいじゃないか。ちょっと重いけど。
「さすが金持ちだな。即金かよ。この前の盗賊のはいくらもらったんだ? 二人で山分けなんだろう?」
「え? 金額? 知らない」
「知らないだとう!?」
ツオレンさんが凄く驚いた。
「だってお金持たせたら無くしそうだから全部預けたって。ダダルさんが」
「で、金額は聞いてないのか?」
「あ、依頼にはなんて書いてあったの?」
「いや、お前も受けたんだろう? 状況により変動だったろう」
あの時は、金額なんて気にしてなかったから覚えてないんだよね。そうだったんだ。
「うーん。解決できると思ってなかったし、目的はお肉とお魚だったし」
「あぁ……お肉ね」
そう言うとツオレンさんは、足元にいるチェト達を見た。
「お前達幸せ者だな。腹いっぱい食わせて貰えて羨ましい」
『……いや、腹いっぱいは食べてないな』
『そうね。足りないわね』
「え? そうなの?」
「そうなのって。俺が知るか……」
「あ、ツオレンさんに言ったんじゃないんです」
「はぁ?」
「そうだ。お家のお肉持って行こうか」
『腐るぞ』
「そうだった。お肉止めてもらわないといけないね。そんなに溜めておけない」
「お前、独り言凄いな」
うん? 独り言? あ、そうだった。チェト達の声は僕にしか聞こえないんだった。
「えへ」
『それで誤魔化せるのはロマドぐらいだろうな……』
ぼくの特技らしい。
「それじゃ、頑張りな」
「はい。ありがとうございました」
ツオレンさんは手を振って去って行った。
さて馬を探さなきゃ。
「あ、聞けばよかった」
『仕方がないな。こっちだ』
「え? チェト知ってたの?」
『馬だろう? 獣の臭いがこっちからする』
『そうね。馬臭いわね』
馬って臭いんだ……。
馬は街の端にいた。こっち側には店もなく来た事がなかったな。
「あの~馬を借りたいんですけど」
「はい。これはどうも。何日ですか?」
「え? 日にち? うーん……」
馬車だと一日ぐらいって言っていたから往復二日だけど、羊の毛を綺麗にするのにどれくらいかかるかだよね? あ、その前に一日いくらか聞かないと!
「あの、一日いくらで借りられますか?」
「馬によりますが一番安いので500テマですが……お客さん魔力持ちですか?」
と突然おじさんが僕の腕を正確には、マジカルマップを指差した。
「あ、はい。そうです。仕事で遠出するのに買いました」
そう答えると、今度は僕を頭のてっぺんから足のつま先までジロジロと見られた。そしてチェト達もジーと見ている。
「あなたは、盗賊を退治したというお嬢ちゃんではないかい?」
「お嬢ちゃんではないです!」
「おや、そうだったかい。こりゃ失礼」
うんうんと僕は頷いた。一応訂正しておかないとね。
「ところでお嬢ちゃん」
え? 訂正したのにお嬢ちゃん!?
「馬を買わないかい?」
「うん? 借りられればいいんだけど」
「冒険者になったばかりなんだろう?」
「あ、はい。まあ……」
『こやつ……ロマド、違う所を当たるぞ』
「え? なんで?」
「いえねえ。ちょうどいい馬がいるんですよ。ちょっと小さめだから借り手が無くて処分しようとしていたんですよ」
「え!? 処分?」
それって殺すって事?
『ロマド、こいつの話に乗るな!』
「買わないかい? お安くするよ。なんなら旅道具をセットにつけよう。中古だけどね」
「買います!!」
『まて! 売値を聞いてからだろう!』
「だって処分されちゃうんだよ!?」
「そうです。そうです。しかも10万テマ!」
「10万テマだって! 聞いたしいいよね?」
『聞いたからいいではないだろう? そんなにお金があるのか?』
「え? お金足りないの?」
「お嬢ちゃん。こんな価格では馬は買えませんよ。お金が引き出せない場合は、取引出来ない様になってるから試してみたらどうだい? 足りなかったら諦めて貰う」
「じゃ、それで!」
『それでじゃないわ!』
『大変そうね……』
『呑気な事を言っているな。お金がなくなれば肉を食べられない。おぬしの分もかかる様になったのだぞ』
『まあ別に狩ればいいでしょう』
『それが出来れば苦労せんわ!』
『そこまで弱っているとは……』
『違う! 許可がおりんのだ!』
『それってさせてもらえないって事!?』
『そうだ!』
「大丈夫だぞ。無事お金は受け取れた」
「やったぁ!」
『『………』』
二人が言い争いしていたから後で喧嘩しないように言っておかないとね。
「では、こちらです」
ついて行くと本当小さな馬だった。サザナミが大きかった時と同じぐらいだ。
しかも黒に近い灰色でまだら。そして、臭い!!
「ほ、本当に馬って臭いんだ……」
って、おじさんが馬と格闘している。馬の上に荷物入れをつけるのに苦労しているというか、諦めた!?
「ほれ、これもやろう」
重そうに持っていた馬につける荷物入れを渡され、嫌がる馬の手綱も渡された。
「え? あ、わぁ」
ぐいっと引っ張られる!
『ロマド!』
「あ、後は任せた。毎度アリ」
「え~~!!」
ちょ、ちょっと暴れないで~~!!
結局買った。冒険者カードで買えるって便利だ。
ちょっとごついけど左腕に着けている。
直径八センチの円に地図が表示され、中心が自分がいる場所らしい。つまり冒険者の街。地図の拡大縮小も可能。殆どの街と村がインプットされていると言っていた。
魔力を使って自分で新たにインプットも出来るらしい。で、行き先もインプット出来るのでついでにしてもらったんだ。
後は馬を見つけるだけ。
『やっぱりユイジュがいないと、止めてくれるやつがいないな』
ボソッとチェトが言った。いいじゃないか。ちょっと重いけど。
「さすが金持ちだな。即金かよ。この前の盗賊のはいくらもらったんだ? 二人で山分けなんだろう?」
「え? 金額? 知らない」
「知らないだとう!?」
ツオレンさんが凄く驚いた。
「だってお金持たせたら無くしそうだから全部預けたって。ダダルさんが」
「で、金額は聞いてないのか?」
「あ、依頼にはなんて書いてあったの?」
「いや、お前も受けたんだろう? 状況により変動だったろう」
あの時は、金額なんて気にしてなかったから覚えてないんだよね。そうだったんだ。
「うーん。解決できると思ってなかったし、目的はお肉とお魚だったし」
「あぁ……お肉ね」
そう言うとツオレンさんは、足元にいるチェト達を見た。
「お前達幸せ者だな。腹いっぱい食わせて貰えて羨ましい」
『……いや、腹いっぱいは食べてないな』
『そうね。足りないわね』
「え? そうなの?」
「そうなのって。俺が知るか……」
「あ、ツオレンさんに言ったんじゃないんです」
「はぁ?」
「そうだ。お家のお肉持って行こうか」
『腐るぞ』
「そうだった。お肉止めてもらわないといけないね。そんなに溜めておけない」
「お前、独り言凄いな」
うん? 独り言? あ、そうだった。チェト達の声は僕にしか聞こえないんだった。
「えへ」
『それで誤魔化せるのはロマドぐらいだろうな……』
ぼくの特技らしい。
「それじゃ、頑張りな」
「はい。ありがとうございました」
ツオレンさんは手を振って去って行った。
さて馬を探さなきゃ。
「あ、聞けばよかった」
『仕方がないな。こっちだ』
「え? チェト知ってたの?」
『馬だろう? 獣の臭いがこっちからする』
『そうね。馬臭いわね』
馬って臭いんだ……。
馬は街の端にいた。こっち側には店もなく来た事がなかったな。
「あの~馬を借りたいんですけど」
「はい。これはどうも。何日ですか?」
「え? 日にち? うーん……」
馬車だと一日ぐらいって言っていたから往復二日だけど、羊の毛を綺麗にするのにどれくらいかかるかだよね? あ、その前に一日いくらか聞かないと!
「あの、一日いくらで借りられますか?」
「馬によりますが一番安いので500テマですが……お客さん魔力持ちですか?」
と突然おじさんが僕の腕を正確には、マジカルマップを指差した。
「あ、はい。そうです。仕事で遠出するのに買いました」
そう答えると、今度は僕を頭のてっぺんから足のつま先までジロジロと見られた。そしてチェト達もジーと見ている。
「あなたは、盗賊を退治したというお嬢ちゃんではないかい?」
「お嬢ちゃんではないです!」
「おや、そうだったかい。こりゃ失礼」
うんうんと僕は頷いた。一応訂正しておかないとね。
「ところでお嬢ちゃん」
え? 訂正したのにお嬢ちゃん!?
「馬を買わないかい?」
「うん? 借りられればいいんだけど」
「冒険者になったばかりなんだろう?」
「あ、はい。まあ……」
『こやつ……ロマド、違う所を当たるぞ』
「え? なんで?」
「いえねえ。ちょうどいい馬がいるんですよ。ちょっと小さめだから借り手が無くて処分しようとしていたんですよ」
「え!? 処分?」
それって殺すって事?
『ロマド、こいつの話に乗るな!』
「買わないかい? お安くするよ。なんなら旅道具をセットにつけよう。中古だけどね」
「買います!!」
『まて! 売値を聞いてからだろう!』
「だって処分されちゃうんだよ!?」
「そうです。そうです。しかも10万テマ!」
「10万テマだって! 聞いたしいいよね?」
『聞いたからいいではないだろう? そんなにお金があるのか?』
「え? お金足りないの?」
「お嬢ちゃん。こんな価格では馬は買えませんよ。お金が引き出せない場合は、取引出来ない様になってるから試してみたらどうだい? 足りなかったら諦めて貰う」
「じゃ、それで!」
『それでじゃないわ!』
『大変そうね……』
『呑気な事を言っているな。お金がなくなれば肉を食べられない。おぬしの分もかかる様になったのだぞ』
『まあ別に狩ればいいでしょう』
『それが出来れば苦労せんわ!』
『そこまで弱っているとは……』
『違う! 許可がおりんのだ!』
『それってさせてもらえないって事!?』
『そうだ!』
「大丈夫だぞ。無事お金は受け取れた」
「やったぁ!」
『『………』』
二人が言い争いしていたから後で喧嘩しないように言っておかないとね。
「では、こちらです」
ついて行くと本当小さな馬だった。サザナミが大きかった時と同じぐらいだ。
しかも黒に近い灰色でまだら。そして、臭い!!
「ほ、本当に馬って臭いんだ……」
って、おじさんが馬と格闘している。馬の上に荷物入れをつけるのに苦労しているというか、諦めた!?
「ほれ、これもやろう」
重そうに持っていた馬につける荷物入れを渡され、嫌がる馬の手綱も渡された。
「え? あ、わぁ」
ぐいっと引っ張られる!
『ロマド!』
「あ、後は任せた。毎度アリ」
「え~~!!」
ちょ、ちょっと暴れないで~~!!
36
あなたにおすすめの小説
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる