【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
6 / 192
第一章 薬師になろうとしただけなのに……

第六話

しおりを挟む
 ティモシーは出来上がり、隣に並ぶ二人を観察する。もしかしたらもう一人も魔術師なのでは? と、疑心暗鬼になっていた。
 一番端の十七番は、ティモシーより少し年上に見える男性。手つきは繊細で、優し気な雰囲気だ。黒い髪を汗で顔に引っ付かせて、一生懸命作業をしていた。
 多分、グスターファスの前で緊張をしているのだろう。
 さて、問題の隣の二十二番は、二十代後半に見える男性で、ひょろっとしていて背が高い。髪は赤に近い茶色。ティモシーと同じぐらい長い髪を後ろで束ねている。
 その彼がふとティモシーに振り向いた。髪と同じ瞳と目が合ってしまい、ハッとして俯く。

 (バレた? いや、バレるはずはない)

 ティモシーは、魔術師だとバレたかもしれないと、気が気じゃない。
 魔術は使っていない。実力で勝負したのである。余程でなければ、相手が魔術師あろうがバレようがない。
 だが、隣の人物がニヤッとしたのが伺えた。

 (こんな事になるのなら、大人しく帰ればよかった……)

 ティモシーは、最早にランフレッドはもう役に立たないと思った。相手は魔術師。彼が凄い腕の立つ人物だろうと、勝てないだろうと思ったのである。

 「素晴らしい!」

 作業を終えた三人に掛けたグスターファスの声に、ティモシーはビクッとしてしまう。

 (びっくりした……)

 「では、席に戻って下さい」

 オーギュストがそう三人に声を掛けた。ティモシー達は、頭を下げ一例すると壇上を降りる為に振り向いた。
 ティモシーは、こちらを伺う試験を受けに来た者達の視線が、自分に集中するのがわかった。

 (あぁ、もう嫌だ……。あれ……?)

 ティモシーは、あるモノに目がいった。それは、カードである。半分以上が青。ティモシーと同じ赤色の人は、女性に見えた。つまりこの色分けは、性別を表すのではないか。
 湧き上がった疑問を確認する為、ティモシーは一緒に壇上から降りる二人に振り向く。二人共青だった!

 (げっ! 俺、男に○つけただろう! って、何であの人も何も言わなかったんだ!)

 勿論、あの人とはランフレッドの事である。知らないはずがないのだから……。
 席に戻ったティモシーは、ずっと頭を抱えていた。
 受かった所で、取り消しになったらどうしようか? いやいや、自分は正しく記入した。問題ない。でも……。
 っと、全員の実技が終わるまで同じ事をグルグルと考えていた。そうした所で仕方はないのだが。
 今回の筆記試験に合格した者は、三十名程だった。ランフレッドは、筆記はいつも通りと言っていたが、実際は難しかったのである。
 それでも、筆記試験を突破した者達の実技試験は、四時間を要した。その間ティモシーは、あーでもない、こーでもないとずっと頭を悩ませていた為、退屈はしなかった。だが、どっと疲れたのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー
ファンタジー
転生した主人公は、平民でありながらダンジョンを作る力を持って生まれ、その力を持った者の定めとなる貴族入りが確定します。 ですが主人公は、普通の暮らしを目指し目立たない様振る舞いますが、ダンジョンを作る事しか出来ない能力な為、奮闘してしまいます。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

処理中です...