【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第六章 真実と魔術師組織

第六十四話

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 二人はダグを追いかけて来た。村の出入り口に戻るのはまずい気がして、森に逃げ込む事にし向かうが見知らぬ男が魔術を使ってきた。
 魔術師だったのかと混乱する中、なんとかレジストして進む。そして、森の中を全速力で走り抜ける。ふと目の前が開けたと思うと同時に、出した足が地面を踏みしめていなかった!
 ダグは、ここには崖があったと思うも遅い。そのまま崖下へ転落した!

 「っち! 落ちたか。術を外さなければな……」
 「仕方がない。ダグは、あきらめるか」

 そんな声が崖の上から聞こえた。二人の気配が消え、ダグは横になったまま目を開けた。何とか、叩きつけられる前に魔術で浮遊でき、一瞬落下が止まったお蔭でダグは、生き延びたのである。
 だがしばらく、ボーっと空を眺めていた。何が起きたのか考える。
 村人はいなかった。エドアルが魔術師と結託して村人を――薬師を連れ去ったのではないか? 村人は全員、拉致されたのではないか。そう考えつく。自分は、運よく助かったが、生きていると知れれば襲われるかもしれない。
 ガバッとダグは起き上がると、旅だった両親と合流しようと歩き出す。
 半日かけ両親と合流したダグは、出来事を話しトラスに逃げる事にした。
 もし村を今日の様に襲っているのなら、違う村に逃げ込んでも安全ではない。むしろそれを恐れて暮らさなくてはならない。
 だがトラスに行くも仕事はなかった。特に両親は薬師ではないので、全く仕事がない。
 トラスに着いたのは、試験の三日前だった。王宮専属薬師に就く事をダグは決心する。村長から気が変わったら使いなさいと渡されていた、後見人の証明書を手に試験を受けた。
 筆記試験はパスできた。実技も隣に並ぶ二人と劣ってはいないと思うも、絶対に受からなければならない。このトラスで生活しなければいけないからである。その思いが、魔術を使わせた。ほんの少しだけ効力を高める魔術を使った。初めて使ったので効果があったがわからないが、一位で合格出来た。
 安堵するも後ろめたさもあった。
 不正をしたのもそうだが、本来なら村であった出来事を話さなければならない。だがそうなると、自分達が魔術師だとバレてしまう。そうすれば、ここにも居られない。
 ダグはずっと、葛藤していたのである。そして今、話す最初で最後のチャンスかもしれない。心の荷を下ろしたい。その思いで話したのである。――ダグの懺悔だった。



 話し終えたダグは立ち上がり、グスターファスに深々と頭を下げる。

 「申し訳ありません」

 ダグのその謝罪の言葉が静まり返った部屋に大きく響いた。

 (あの時、不正したのって、こんな理由が……)

 ティモシーは、ダグの気持ちが少しはわかった。魔術師だとバレて村を追われた事はないが、母親には絶対に知られてはダメ! と言われていた。ティモシーはダグとは違い、魔術に興味を持たなかった。だから運よく誰にも知られずに過ごしていられた。

 「頭を上げよ。ダグ」

 グスターファスは、静かに言った。おずおずと頭を上げたが、ダグは俯いたままだ。

 「すまない。この国でもそこまで事が起きているとは思わず、警戒を怠っていた」
 「え?」

 意味がわからずダグは、グスターファスを見た。

 「だが、不正の件は別の問題でもある。どうするかは、今は置いておく」

 罵りの言葉を浴びせられると思っていたダグは、驚きで言葉が出ない。

 「ルーファス、私は色々手配しなくてはならなくなった。後の事は任せる。話を聞いておいてほしい」
 「はい。わかりました。父上」
 「レオナール殿。すまながいが私は席を外す。ルーファスの手助けをお願いしても宜しいか?」
 「お任せ下さい。陛下」

 ルーファスとレオナールが立ち上がり軽くグスターファスに頭を下げると、グスターファスは、ではと席を立ち部屋を後にした。
 ティモシーは勿論、ダグも慌ただしく去って行ったグスターファスをボー然と見送った。ダグにお咎めなしだったどころか、彼に対し謝ったのだ。自体が飲み込めなかった。

 「あなたは運がいいですね」

 レオナールはそう言って、ダグにほほ笑んだ。

 「では、私の部屋に移動して続きを話しましょう」

 その一言で、応接室からレオナールの部屋に場所を移す事になった。
 指揮を取るのは、変わらずレオナールのようだった――。
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