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第八章 惑わす声
第九十話
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「母さん!」
入り口にいるミュアンに、ティモシーは駆け寄った。
「あの、夢じゃ……」
「ちょっと、こっちへ来なさい」
ミュアンは、ティモシーの手を引いて、入り口から離れた場所へ移動する。辺りに人影がない事を確認して口を開く。
「あなた、今朝の夢の事を覚えている? たしか、エイブという男の……」
ティモシーは、うんと頷いた。
「夢じゃなかったんだ!」
「いつから? 彼と夢で会っているのはいつから?」
ティモシーは首を傾げる。覚えてはいない。だが、今朝だけではないのは確か。前日も少し覚えている。
「わからないけど、前の日も見たような気がする。今回だけなんだ。全部覚えているの。ねえ、あれって夢じゃなくて現実なの?」
ミュアンは、険しい顔つきで頷く。
「いい、彼は魔術師よ」
「うん……」
ミュアンは、驚いた顔で、ティモシーの肩をガシッと掴んだ。
「うんって……」
「いた……」
ミュアンは、ティモシーが痛みで歪めた顔をしているのを見て、怪我をしていると気が付く。
「肩、怪我をしているの?」
「うん。ちょっとぶつけて……」
ティモシーは、そう言って俯く。首も包帯をとって大きな絆創膏を貼っている。
「それ、首もそうだけど、仕事で出来たものじゃないわよね?」
「………」
「ティモシー、このまま村に戻りましょう」
「え!」
ミュアンの言葉に、ティモシーは驚いて顔を上げた。
「いや、一年勤めないと、薬師の資格が取り消しになるから……。一年たったら村に戻るから!」
「命の方が大事よ! 彼、言っていたわ。王宮に魔術師がいるって!」
確かにそうだ。ブラッドリーの事は信用出来なくなていたが、ダグの事は今は信用している。だが、二人もいると言えば、本当に連れて帰られそうだ。
「大丈夫。ペンダントもあるし……」
「いいよく聞いて。絶対に知られてはダメなの!」
ティモシーは俯く。もうすでに一人にバレてしまっている。
「ねえ、まさかあのエイブって男にバレていないわよね?」
「え? 多分気づいてないと思うけど……」
ティモシーの記憶には、バレた記憶は残っていなかった。
「そう……。私は、明後日の朝まで滞在を伸ばすからよく考えて!」
考えてと言ってはいるが、一緒に帰ってほしいという目でミュアンは見つめていた。ティモシーには、うんと頷く事しか出来なかった。多分、今回は帰らない。いや、帰れない。勝手に辞めて王宮を出たら、レオナールは追いかけてくるだろう。
ティモシーは、母親を見送ると王宮に戻った。
入り口にいるミュアンに、ティモシーは駆け寄った。
「あの、夢じゃ……」
「ちょっと、こっちへ来なさい」
ミュアンは、ティモシーの手を引いて、入り口から離れた場所へ移動する。辺りに人影がない事を確認して口を開く。
「あなた、今朝の夢の事を覚えている? たしか、エイブという男の……」
ティモシーは、うんと頷いた。
「夢じゃなかったんだ!」
「いつから? 彼と夢で会っているのはいつから?」
ティモシーは首を傾げる。覚えてはいない。だが、今朝だけではないのは確か。前日も少し覚えている。
「わからないけど、前の日も見たような気がする。今回だけなんだ。全部覚えているの。ねえ、あれって夢じゃなくて現実なの?」
ミュアンは、険しい顔つきで頷く。
「いい、彼は魔術師よ」
「うん……」
ミュアンは、驚いた顔で、ティモシーの肩をガシッと掴んだ。
「うんって……」
「いた……」
ミュアンは、ティモシーが痛みで歪めた顔をしているのを見て、怪我をしていると気が付く。
「肩、怪我をしているの?」
「うん。ちょっとぶつけて……」
ティモシーは、そう言って俯く。首も包帯をとって大きな絆創膏を貼っている。
「それ、首もそうだけど、仕事で出来たものじゃないわよね?」
「………」
「ティモシー、このまま村に戻りましょう」
「え!」
ミュアンの言葉に、ティモシーは驚いて顔を上げた。
「いや、一年勤めないと、薬師の資格が取り消しになるから……。一年たったら村に戻るから!」
「命の方が大事よ! 彼、言っていたわ。王宮に魔術師がいるって!」
確かにそうだ。ブラッドリーの事は信用出来なくなていたが、ダグの事は今は信用している。だが、二人もいると言えば、本当に連れて帰られそうだ。
「大丈夫。ペンダントもあるし……」
「いいよく聞いて。絶対に知られてはダメなの!」
ティモシーは俯く。もうすでに一人にバレてしまっている。
「ねえ、まさかあのエイブって男にバレていないわよね?」
「え? 多分気づいてないと思うけど……」
ティモシーの記憶には、バレた記憶は残っていなかった。
「そう……。私は、明後日の朝まで滞在を伸ばすからよく考えて!」
考えてと言ってはいるが、一緒に帰ってほしいという目でミュアンは見つめていた。ティモシーには、うんと頷く事しか出来なかった。多分、今回は帰らない。いや、帰れない。勝手に辞めて王宮を出たら、レオナールは追いかけてくるだろう。
ティモシーは、母親を見送ると王宮に戻った。
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