【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
91 / 192
第八章 惑わす声

第九十一話

しおりを挟む
 その日の午後、調合室で調合をしていると、そこにブラッドリーが訪ねて来た。

 「悪いが、ダグとティモシーを借りる」

 何故その二人と思うもベネットは頷く。
 ティモシーは、ドキリとした。もしかしたらエイブさんは……。不安を胸にブラッドリーの後をダグと一緒について行った。
 連れて行かれたのは、レオナールの部屋だった。結界がある部屋。何かあったのには違いない。

 「失礼します。二人を連れてきました」

 中に入ると、レオナールの姿はない。やはり何かがあって、この部屋に集まっている。部屋には、グスターファスとルーファス、そしてランフレッドが居た。

 「何かあったんですか?」

 レオナール本人がいないのに、彼の部屋に連れて来られたのでダグも何かあったのだろうと気がついた。

 「二人が逃げた……」

 ため息交じりにグスターファスが言った。

 「え! どうやって?」

 ダグは、心底驚いていた。逃げられないと思ったから、レオナールは二人を置いて行ったのだろうと思っていた。なのに脱走したのである。しかも怪我で動けないエイブまで。

 「たぶん、ザイダが手引きしたのだろう。彼女の姿も消えた……」

 参ったとグスターファスは言う。
 ザイダは、二人が魔術師だと知らずに助け出したのに違いない。どうやって仲間と連絡を取ったかはわからないが、彼女一人では無理な話だ。

 「じゃ、エイブさんは生きている?」
 「面白い聞き方をするな? 王宮内にはいない。生きているかは不明だが、ザイダが手引きをしたとなるとエイブは生きているだろうな」

 ティモシーの質問にルーファスはそう答えるも目つきは鋭い。
 勿論ティモシーの質問に違和感があるからだ。昨日もそうだったが、様子が変だと言うのは、全員一致の意見だった。

 「お前、何か知っているのか?」

 ランフレッドが聞くも、ティモシーは慌てて首を横に振る。ここで夢の事を言う気にはなれなかった。

 「あの、ブラッドリーさんは、気づかなかったんですか?」

 ダグが聞くが、すまなそうに首を横に振った。

 「実は今朝、ヴィルターヌ帝国の使者が来ていて色々慌ただしかったのだ。その隙に逃げられた」

 ルーファスがそういうと、ティモシーは思い当たる。今朝、ブラッドリーがランフレッドを呼びに来た事を。

 「あの……。その人達は関係ないんですよね?」
 「わからん」

 ダグの質問にルーファスは、即答で返した。この場合は、可能性があると取るべきなのか。ダグは悩む。

 「実はヴィルターヌ帝国の使者の者は魔術師でな。だからここで話し合っているわけなのだ」

 グスターファスは、はぁっと大きなため息をついた。
 使者と二人の逃亡。偶然なのかそれとも策略なのか。

 「明日には、レオナール様がこちらにつくはずです。それにヴィルターヌ帝国の者は二人が捕らわれている事は知らないはずです。まあ、組織の者だった場合は、話は違いますが……」
 「使者が組織の人間なら、その国が組織の中枢って事になるけどな」

 ランフレッドがそう言うと皆頷く。

 「そうなると、宣戦布告の様なモノですよね」

 ダグがが発言すると皆、顔が険しくなる。

 「……ティモシー、あなたは今回の事について何も知らないのだな?」
 「え!」

 (俺、疑われているのか? 何で!)

 ティモシーは、グスターファスの質問に驚いて皆の様子を伺うと、全員ジッとティモシーの返事を待っていた。ティモシー自身は気づいていないが、いつもと態度が違うと周りは思っている。それで、この逃亡事件が起きた。疑うなというのは無理な話だ。

 「……関係ない」

 ボソッとティモシーは答えた。知らないとは言わない。逃げると知ってはいたが、夢の中の話だ。

 「そうか。わかった。信じよう。あなた達は、二人に関わっている。気を付けて過ごして欲しい」

 グスターファスの言葉に、二人は頷いた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...