【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第九章 追われる者

第九十二話

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 翌日の午前中にレオナールは、エクランド国に着いたようで、ブラッドリーがダグを呼びに来た。
 そして、午後五時頃にティモシーも呼ばれ、彼の部屋に向かう。待っていたレオナールは、何故か薬師の制服を着て厳しい表情だ。

 「二人で話をします。あなたも下がって下さい」

 レオナールの言葉に、ブラッドリーは軽く頭を下げると部屋を出て行った。

 「どうぞ」

 ソファーに座るように促され、ティモシーは座った。正面に座ったレオナールには笑顔がない。ティモシーは、ごくりと生唾を飲み込む。

 「昨日の朝早く、あなたの母親が訪ねてきたようですね。どのような用件で?」
 「え?」

 ティモシーは驚いた。まさか、母親と会った事を聞かれるとは思いもよらなかった。

 「……魔術師だとバレているのなら、一緒に村に帰ろうと言われました」
 「私に知られたと話したのですか?」

 俯くティモシーに、レオナールは問う。首を横に振ってそれに答えた。

 「では、あなたの母親は何故、あなたが誰かに魔術師だと知られたのではと思ったのでしょうか?」

 ティモシーはビクッとする。
 彼に下手な言い訳は通じない。ティモシーもそれはわかっている。

 「答えられませんか? 別に怒りはしません。知りたいだけです。教えては頂けませんか? あなたもご存知の通り、二人は逃亡し同じタイミングでヴィルターヌ帝国の使者が訪ねてきました」
 「そ、そう言われても……」

 ティモシーは返答に困った。エイブが言っていた仲間がその使者を指すのか、それとも別の人物なのか、ティモシーにもわからない。そして夢が現実になったのか、偶然の一致なのかもわからないが、ミュアンは夢ではないと言っていた。
 今更ながら、裏切りになるのでは? と、言うのをためらう。

 「では、ザイダの事はどうです? 最後は意気投合していたと聞きました。何か言っておりませんでしたか?」
 「え! 意気投合!」

 ティモシーは驚く。別にそんなつもりはなかった。どちらかというと違う。彼女は、トンマーゾをいい人だと思っていただろうが、ティモシーは逆である。たまたまブラッドリーを敵視していただけだ。

 「別に彼女とは仲良くありません!」
 「そうですか。ブラッドリーですが、今回の連絡を怠った事はきつく言っておきました。逃亡に影響を与えたのは確実ですからね」

 ティモシーは何故という顔でレオナールを見た。

 「ブラッドリーが連絡を怠った事で、彼女は事を起こした。その聴取でトンマーゾを呼んでしまい、私がいない事に彼は気づいた。逃げるチャンスだと教えてしまったのです。私も一言言って国に戻ればよかったのですが……」

 レオナールの説明にティモシーは、なるほどと頷く。

 「まあ、時間的に知ってから使者を呼ぶというのは不可能なので、関係はないとは思いますが……」

 ティモシーは、ふと疑問に思う事を聞く事にした。

 「あの……もし二人が逃げなかった場合、最終的にどうするつもりだったのですか? 殺す……とか?」
 「なるほど。話は本当のようですね」
 「え?」

 ジッとレオナールが、ティモシーを見据える。

 「隠れて会ったりはしてませんね?」
 「してません! エイブさんは、寝たきりじゃないですか!」
 「そうですか。エイブですか……」
 「………」

 レオナールは、別にエイブとは言っていない。そう気づくも遅い。疑いの目でレオナールはティモシーを見ていた。

 「……嵌めるなんてひどいです」
 「嵌めた……ですか。そう思うという事は、そういう事があったという事ですね? どのように彼と連絡を取り合ったのです」
 「違います!」

 ティモシーは、慌てて首を横に振った。別に企てたりした訳ではない。

 「夢です! 夢を見ただけなんです! エイブさんが昨日夢に出て来て、お別れを言いに来て……」
 「あなた、彼らが逃げるのを知っていて黙っていたのですか?」
 「だから夢だって!」

 ティモシーは、ガバッと立ち上がった。

 「で、その夢にあなたの母親は登場しましたか?」
 「え……」

 よくわからないが、バレている。ティモシーはそう思った。
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