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第32話
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「酷いわ。確証もないのに、言い掛かりもいいところよ。ウルミーシュ嬢が知らないというのなら、マスティラン子息に聞けば宜しいでしょう」
キャシー嬢が、キッとユゲット嬢を睨みつけそう言ってくれた。
ありがとう。心強いわ。
「あの人の言う事なんて信じられるわけないじゃない」
ツーンとして、ユゲット嬢が言う。
何なのこの子。
「マスティラン子息から浮気したのはあなたって私は聞いているわよ。巻き込んでごめんって」
「……う。さ、先に浮気したのはそっちでしょう」
浮気は認めるんだ。
というか、フランシスク様と婚約し直したいというわけでもないわよね。じゃ、突っかかってくるのって逆恨み? にしては、酷くない?
「それに、本当に見られていたのよ。そうよね、パスータン令息」
「あぁ。この目で見た」
「え? 見た? 私達がクラブから出て来たのをって事?」
ユゲット嬢と、パスータン令息がそうだと頷く。
偽の証人まで作るなんて、この人達何を考えているのよ。
「パスータン令息、あなた、わかっているの? 偽の証言なんてしたらこの領地に居れなくなるわよ」
「変な脅しをしないでよ! 証拠を握りつぶそうとするなんて!」
握りつぶすですって。私がそんな事できるわけないじゃない。
「今ならまだ間に合う。マスティラン子息の耳に入る前に証言を撤回して」
「昨日、俺は確かに見た!」
「き、昨日?」
彼、本気の顔だわ。まさか、本当に見たというの? 私の偽物を。見たというならそうなるわ。
「それは本当か!」
声に驚いて振り向けば、フランシスク様だった。クラスメイトの子息達と一緒だ。彼らがフランシスク様を呼んでくれたのね。
パスータン令息が、ごくんと生唾を飲み込み、震えながらも頷いた。
「それは確かに私だったと?」
「え?」
「顔を見たのかと聞いている。これは脅しているのではなく、私の名誉にも拘るから聞いている」
「そ、それは……」
パスータン令息は、目を泳がせた。
違うって事? それとも顔は見ていないの?
「見ていないのか? それとも本当は別人だったとか? または、偽証か?」
「偽証ではありません! 確かに彼女でした。腕を組んで馬車に乗り込んだのを確かにみました。ただその……男の方はフードを被っていたので、顔は見てないです……」
「え? 見ていないですって!?」
驚いて声を返したのは私ではなく、ユゲット嬢だ。彼女は本当に驚いている様子。
「なによ。彼の顔を見ていなければ意味がないじゃない!」
「だけど、言われた通り……」
「言われた通り?」
パスータン令息が、ハッとする。
「そういえば君はなぜ、クラブの傍にいた? 君も使用していたのか?」
「まさか!」
そうよね。密会に使う建物だもの。彼が使うとなれば、人様に隠れて合う相手は、浮気相手となるわ。まあ彼に婚約者がいるかは知らないけどね。
「ではなぜそこに」
「ダマレドゴ嬢に、頼まれて……」
「あなた率先してやるって言ってくてたじゃない」
「いやだって……」
今になって、ヤバいと思い始めたのね。フランシスク様を貶める行為に加担したと。
もし見た相手がフランシスク様ではなかったら大変だと。
「で? いつから見張っていたんだ」
「夕方ぐらいから……」
「いやそうではなく、何日前から見張っていたんだと聞いている。まさか、昨日初めて見張って昨日見たわけではないだろう」
「え……いえ、昨日初めて見に行って発見しました」
「「!」」
「はい!?」
周りも驚いている。
私も、唖然となった。示し合わせた様に、見張りに行って見つけたというの?
噂があったと昨日フランシスク様に聞いたのよ。もし本当だとして、行くの控えるでしょう。
そう思い当たらないのかしら。周りはそう思ったみたいね。
私達は、嵌められたと。
「はぁ。で、君は彼女の顔は見たと言うんだな」
「はい。いつもの馬車に乗り込んだのを見ました」
「もし証言台で証言をと言ったらできるな?」
「え!?」
「さ、裁判を起こす気なのですか?」
可哀そうにパスータン令息はガクガクと震えだす。でもそれぐらいの事を証言したのよね。
「私が起こすのではない。グリンマトル嬢が起こすかもしれない。何せ彼女には、婚約者がいるからな」
皆が一斉に私を見た。起こす気なのかと。
きっとここに居る人達も証言させられる。巻き込まれたと思っているかもしれないが、彼らは私を糾弾する為に集まったのだから、それなりに責任はあると思うのだけどね。
キャシー嬢が、キッとユゲット嬢を睨みつけそう言ってくれた。
ありがとう。心強いわ。
「あの人の言う事なんて信じられるわけないじゃない」
ツーンとして、ユゲット嬢が言う。
何なのこの子。
「マスティラン子息から浮気したのはあなたって私は聞いているわよ。巻き込んでごめんって」
「……う。さ、先に浮気したのはそっちでしょう」
浮気は認めるんだ。
というか、フランシスク様と婚約し直したいというわけでもないわよね。じゃ、突っかかってくるのって逆恨み? にしては、酷くない?
「それに、本当に見られていたのよ。そうよね、パスータン令息」
「あぁ。この目で見た」
「え? 見た? 私達がクラブから出て来たのをって事?」
ユゲット嬢と、パスータン令息がそうだと頷く。
偽の証人まで作るなんて、この人達何を考えているのよ。
「パスータン令息、あなた、わかっているの? 偽の証言なんてしたらこの領地に居れなくなるわよ」
「変な脅しをしないでよ! 証拠を握りつぶそうとするなんて!」
握りつぶすですって。私がそんな事できるわけないじゃない。
「今ならまだ間に合う。マスティラン子息の耳に入る前に証言を撤回して」
「昨日、俺は確かに見た!」
「き、昨日?」
彼、本気の顔だわ。まさか、本当に見たというの? 私の偽物を。見たというならそうなるわ。
「それは本当か!」
声に驚いて振り向けば、フランシスク様だった。クラスメイトの子息達と一緒だ。彼らがフランシスク様を呼んでくれたのね。
パスータン令息が、ごくんと生唾を飲み込み、震えながらも頷いた。
「それは確かに私だったと?」
「え?」
「顔を見たのかと聞いている。これは脅しているのではなく、私の名誉にも拘るから聞いている」
「そ、それは……」
パスータン令息は、目を泳がせた。
違うって事? それとも顔は見ていないの?
「見ていないのか? それとも本当は別人だったとか? または、偽証か?」
「偽証ではありません! 確かに彼女でした。腕を組んで馬車に乗り込んだのを確かにみました。ただその……男の方はフードを被っていたので、顔は見てないです……」
「え? 見ていないですって!?」
驚いて声を返したのは私ではなく、ユゲット嬢だ。彼女は本当に驚いている様子。
「なによ。彼の顔を見ていなければ意味がないじゃない!」
「だけど、言われた通り……」
「言われた通り?」
パスータン令息が、ハッとする。
「そういえば君はなぜ、クラブの傍にいた? 君も使用していたのか?」
「まさか!」
そうよね。密会に使う建物だもの。彼が使うとなれば、人様に隠れて合う相手は、浮気相手となるわ。まあ彼に婚約者がいるかは知らないけどね。
「ではなぜそこに」
「ダマレドゴ嬢に、頼まれて……」
「あなた率先してやるって言ってくてたじゃない」
「いやだって……」
今になって、ヤバいと思い始めたのね。フランシスク様を貶める行為に加担したと。
もし見た相手がフランシスク様ではなかったら大変だと。
「で? いつから見張っていたんだ」
「夕方ぐらいから……」
「いやそうではなく、何日前から見張っていたんだと聞いている。まさか、昨日初めて見張って昨日見たわけではないだろう」
「え……いえ、昨日初めて見に行って発見しました」
「「!」」
「はい!?」
周りも驚いている。
私も、唖然となった。示し合わせた様に、見張りに行って見つけたというの?
噂があったと昨日フランシスク様に聞いたのよ。もし本当だとして、行くの控えるでしょう。
そう思い当たらないのかしら。周りはそう思ったみたいね。
私達は、嵌められたと。
「はぁ。で、君は彼女の顔は見たと言うんだな」
「はい。いつもの馬車に乗り込んだのを見ました」
「もし証言台で証言をと言ったらできるな?」
「え!?」
「さ、裁判を起こす気なのですか?」
可哀そうにパスータン令息はガクガクと震えだす。でもそれぐらいの事を証言したのよね。
「私が起こすのではない。グリンマトル嬢が起こすかもしれない。何せ彼女には、婚約者がいるからな」
皆が一斉に私を見た。起こす気なのかと。
きっとここに居る人達も証言させられる。巻き込まれたと思っているかもしれないが、彼らは私を糾弾する為に集まったのだから、それなりに責任はあると思うのだけどね。
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