居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
32 / 58

第31話

 「あぁ、快適だわ」

 昨日納車になったばかりの馬車で登校中、口から漏れ出る。
 うるさいアンナもいないし、新しくて快適。
 けど、あたりまえだけど、お父様とお母様の思い出が全くない。少し寂しさも感じるのだった。

 学園に着くと、いつもより視線が痛い。
 もしかして、クラブとかの噂も広まっているのかしら。

 「ちょっと、来て」

 建物内に入る前にキャシーに腕を掴まれ、中庭へと連れていかれた。
 丁度よかったわ。クラブの事を聞きましょう。

 「レネット嬢。あなた、クラブの噂知っている?」
 「あぁ、あれね。えーと……クラブってどういうところなの?」

 真剣な眼差しをしていたキャッシー嬢が、私が小声で訪ねると目を点にした。

 「あなた、クラブを知らないの?」

 私は、困り顔で頷く。

 「昨日、マスティラン子息から私達がクラブに出入りしているという噂があるけど、気にしないでみたいな事を言われたのだけど、どういう所か聞けなくって……」
 「驚きだわ。そこまでウブだったなんて!」
 「え……」

 ウブではないけど、そういう感じのところなの?

 「えーと。私が教えちゃっていいのかしら?」
 「ぜひ! あなたに聞こうと思っていたの。両親もいないから誰にも聞けなくって」
 「そ、そうね。あのね、クラブというのはね」

 キャシーは、赤くなりながら話してくれた。
 どうやらこの世界のクラブとは、密会に使う建物らしい。
 そこに、男女二人だけで行くという事は逢瀬の為。しかも男女の関係になっていると思われても仕方がない行為だという。

 男女で行けば、前世で言うラブホと同じらしい。
 しかも、貴族の者が浮気の時に使う場所らしいので、男女二人だけで出て来たとなれば、言い逃れが出来ない。

 なるほど。クラブから私達が出て来たとなれば、これは大変な事だわ。
 誰よ、そんな噂を流したのは!!

 「あら、ここにおりましたのね。でも呼び出す手間が省けてよかったわ」

 うん? 呼び出す手間が省けた? また誤解をしたご令嬢かしら?
 そう思って振り返ると、見覚えのあるツインテール。

 「ユゲット嬢」
 「あなたに名で呼ばれたくありませんわ!」

 あっそ。にしても、敵意向きだしね。
 まさかと思うけど、クラブの件は彼女が流した噂ではないでしょうね。

 「やはりマスティラン子息と浮気していのではありませんか」

 ビシッと私を指さし言うユゲット嬢。
 この人も変わらないわね。
 って、何このやじ馬の人数。

 「え? 一学年のほとんどがいるんじゃない?」

 キャシーが、周りを見渡して呟いた。

 「しておりませんわ」
 「見たって者がいるのよ」
 「あなた自身が見たわけではないと?」
 「えぇ。でもこの前、あなたがマスティラン子息の馬車に乗り込んだ時に私、追跡致しましたの。そうしたら仲良く、あなたの屋敷へ入って行くのではありませんか!」

 まさか、尾行していたなんてね。
 でも、隠すつもりもないけど。

 「えぇ。そうですわね。事故で両親を亡くした一端が、マスティラン侯爵家にもあると責任を感じたようで、落ち着くまで仕事を少し手伝って下さったのです」
 「み、認めるのですね!」

 話を聞いておりましたか? 鼻息を荒くするユゲット嬢。

 「馬車で送ってもらった経緯は、アンナに置いて行かれたからですわ。私の家に行くのでマスティラン子息が私を拾ってくれたまで。ご存じの通り、馬車の事故で馬車は破損。従姉妹のウルミーシュ家の馬車に相乗りをさせていただいておりましたの」
 「なるほどね。その後、クラブへと二人で行ったのね」

 なぜそうなるのよ。

 「後を付けていたのでしょう? そのまま屋敷に向かったのは分かっているではないですか」
 「え? えーと、だから着替えたあなたは、その後二人で……」

 どうしてもクラブに行った事にしたいわけね。

 「マスティラン子息が私の屋敷に来たのは、仕事の手伝いの為。だからマスティラン子息が私の屋敷に来た事は浮気にはならないし、クラブに行った証拠にもならないわよ」
 「その後、行っていない証拠にもならないじゃない」
 「あのですね。帰ってから屋敷から出ていないわ。アンナに聞いてください」
 「ふん。屋敷から彼女を追い出しておいてよく言うわ」

 なぜか勝ち誇ったようにユゲット嬢が言った。
 そうすると、やじ馬達がユゲット嬢が言った事を信じている様子を見せる。
 どうして、一方的にユゲット嬢の話だけを信じるのよ。
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

婚約破棄? ありがとうございます。やっと本当の人生が始まります

たくわん
恋愛
婚約破棄された令嬢がすべきことといえば、泣くか、喚くか、復讐を誓うか——らしい。 リーナ・フォスター公爵令嬢がしたことは、荷造りだった。 「冷たくて人を愛せない」と王太子に切り捨てられた夜、リーナは一度も振り返らずに王城を出た。向かった先は辺境の荒れ地。目的は薬草の栽培と薬品事業の立ち上げ。前世の記憶から温めてきた、誰にも言えなかった計画の実行だ。 リーナはそこで不器用だが誠実な騎士ヴァルターと出会う。一方、残された王太子とその新しい婚約者は、少しずつ、静かに、取り返しのつかない方向へと歩んでいたーー。

婚約者の王太子が平民と結婚するそうです──どうぞ、ご勝手に【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子エドモンが平民との“真実の愛“を宣言した日、王国の均衡は崩れた。 エドモンの婚約者である公爵令嬢エヴァは、公衆の面前で婚約破棄され、更には婚約者のいるクラウディオ・レンツ公爵との結婚を命じられる。 ──そして舞踏会の夜。 王太子妃になった元平民ナタリーは、王宮の礼儀も政治も知らぬまま混乱を引き起こす。 ナタリーの暴走により、王家はついにエヴァを敵に回した。 王族は焦り、貴族は離反し、反王派は勢力を拡大。 王国は“内乱寸前”へと傾いていく。 そんな中、エヴァの前に跪いたのは王太子の従弟アレクシス・レンツ。 「僕と結婚してほしい。  僕以外が王になれば、この国は沈む」 冷静で聡明な少年は、エヴァを“未来の国母”に据えるためチャンスを求めた。 「3ヶ月以内に、私をその気にさせてご覧なさい」 エヴァは、アレクシスに手を差し伸べた。 それからの2人は──? ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。視点が頻繁に変わります。

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

婚約破棄される前に、帰らせていただきます!

パリパリかぷちーの
恋愛
ある日、マリス王国の侯爵令嬢クロナは、王子が男爵令嬢リリィと密会し、自分を「可愛げのない女」と罵り、卒業パーティーで「婚約破棄」を言い渡そうと画策している現場を目撃してしまう。 普通なら嘆き悲しむ場面だが、クロナの反応は違った。