居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

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第31話

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 「あぁ、快適だわ」

 昨日納車になったばかりの馬車で登校中、口から漏れ出る。
 うるさいアンナもいないし、新しくて快適。
 けど、あたりまえだけど、お父様とお母様の思い出が全くない。少し寂しさも感じるのだった。

 学園に着くと、いつもより視線が痛い。
 もしかして、クラブとかの噂も広まっているのかしら。

 「ちょっと、来て」

 建物内に入る前にキャシーに腕を掴まれ、中庭へと連れていかれた。
 丁度よかったわ。クラブの事を聞きましょう。

 「レネット嬢。あなた、クラブの噂知っている?」
 「あぁ、あれね。えーと……クラブってどういうところなの?」

 真剣な眼差しをしていたキャッシー嬢が、私が小声で訪ねると目を点にした。

 「あなた、クラブを知らないの?」

 私は、困り顔で頷く。

 「昨日、マスティラン子息から私達がクラブに出入りしているという噂があるけど、気にしないでみたいな事を言われたのだけど、どういう所か聞けなくって……」
 「驚きだわ。そこまでウブだったなんて!」
 「え……」

 ウブではないけど、そういう感じのところなの?

 「えーと。私が教えちゃっていいのかしら?」
 「ぜひ! あなたに聞こうと思っていたの。両親もいないから誰にも聞けなくって」
 「そ、そうね。あのね、クラブというのはね」

 キャシーは、赤くなりながら話してくれた。
 どうやらこの世界のクラブとは、密会に使う建物らしい。
 そこに、男女二人だけで行くという事は逢瀬の為。しかも男女の関係になっていると思われても仕方がない行為だという。

 男女で行けば、前世で言うラブホと同じらしい。
 しかも、貴族の者が浮気の時に使う場所らしいので、男女二人だけで出て来たとなれば、言い逃れが出来ない。

 なるほど。クラブから私達が出て来たとなれば、これは大変な事だわ。
 誰よ、そんな噂を流したのは!!

 「あら、ここにおりましたのね。でも呼び出す手間が省けてよかったわ」

 うん? 呼び出す手間が省けた? また誤解をしたご令嬢かしら?
 そう思って振り返ると、見覚えのあるツインテール。

 「ユゲット嬢」
 「あなたに名で呼ばれたくありませんわ!」

 あっそ。にしても、敵意向きだしね。
 まさかと思うけど、クラブの件は彼女が流した噂ではないでしょうね。

 「やはりマスティラン子息と浮気していのではありませんか」

 ビシッと私を指さし言うユゲット嬢。
 この人も変わらないわね。
 って、何このやじ馬の人数。

 「え? 一学年のほとんどがいるんじゃない?」

 キャシーが、周りを見渡して呟いた。

 「しておりませんわ」
 「見たって者がいるのよ」
 「あなた自身が見たわけではないと?」
 「えぇ。でもこの前、あなたがマスティラン子息の馬車に乗り込んだ時に私、追跡致しましたの。そうしたら仲良く、あなたの屋敷へ入って行くのではありませんか!」

 まさか、尾行していたなんてね。
 でも、隠すつもりもないけど。

 「えぇ。そうですわね。事故で両親を亡くした一端が、マスティラン侯爵家にもあると責任を感じたようで、落ち着くまで仕事を少し手伝って下さったのです」
 「み、認めるのですね!」

 話を聞いておりましたか? 鼻息を荒くするユゲット嬢。

 「馬車で送ってもらった経緯は、アンナに置いて行かれたからですわ。私の家に行くのでマスティラン子息が私を拾ってくれたまで。ご存じの通り、馬車の事故で馬車は破損。従姉妹のウルミーシュ家の馬車に相乗りをさせていただいておりましたの」
 「なるほどね。その後、クラブへと二人で行ったのね」

 なぜそうなるのよ。

 「後を付けていたのでしょう? そのまま屋敷に向かったのは分かっているではないですか」
 「え? えーと、だから着替えたあなたは、その後二人で……」

 どうしてもクラブに行った事にしたいわけね。

 「マスティラン子息が私の屋敷に来たのは、仕事の手伝いの為。だからマスティラン子息が私の屋敷に来た事は浮気にはならないし、クラブに行った証拠にもならないわよ」
 「その後、行っていない証拠にもならないじゃない」
 「あのですね。帰ってから屋敷から出ていないわ。アンナに聞いてください」
 「ふん。屋敷から彼女を追い出しておいてよく言うわ」

 なぜか勝ち誇ったようにユゲット嬢が言った。
 そうすると、やじ馬達がユゲット嬢が言った事を信じている様子を見せる。
 どうして、一方的にユゲット嬢の話だけを信じるのよ。
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