【完結】ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました

すみ 小桜(sumitan)

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第73話

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 『大丈夫だ』
 『バカップル』

 馬車の中で起動させたから、兵士の呟きもばっちりと録音されているわ。
 この盗聴器は、前世と違い人の声をよく捕らえる。だから呟きも拾ったみたいね。
 呟いた兵士が、青ざめている。

 『さて、審議に移る前に伝えておこう。この部屋では、魔法は使えない――』

 陛下が言った言葉もばっちり一字一句違わずに録音されている。当たり前だけどね。

 『隙をみて、フロールは逃げ出した。事なきを得たが大変傷ついている』

 チラッとガムン公爵を見れば、魔法陣を睨みつけていた。

 「もうよい。止めて結構」

 陛下の指示で、私は音を止める。

 「驚いた。闇属性でこんなものができるとは。大発見だ!」
 「大発見ではありません。陛下。よくお考え下さい。彼女は何の為にこんなものを持ち歩いているのかを!」
 「そんなの。いちゃもんを付けられた時の証明の為ですわ」
 「いちゃもんだと」

 ガムン公爵に凄まれた。
 言葉選びを間違えたわ。

 「えーと。言い掛かりです。ご存じの通り私は、元子爵令嬢です。レオンス様の婚約者である事をよく思わない者から言い掛かりをつけられた時の証拠にする為に所持しておりました。今までは、使う事はありませんでした。まさか、ここで使う事になろうとは……」

 ひっ。怖いのですけど!
 あまりにも凄い形相でガムン公爵が睨みつけるので、レオンス様の後ろへと隠れ避難した。

 「彼女はそうだとしても、お前はどうだ、レオンス」

 低い声でドスを聞かせガムン公爵が問う。

 「彼女を利用する為に、研究所まで作ったのだろう」
 「何をおっしゃいますのやら。愛のカタチです」

 やめて。恥ずかしいから!

 「ココドーネ侯爵家から持ってきました」

 兵士が、同じような魔法陣が描かれた紙をテーブルに置いた。

 「陛下。これが本当に当時録音されたものとは限りません。捏造されている可能性も――」
 「へえ。ファビアをそこまで買ってくれているとは、驚きました」
 「な、何を言う」
 「音をいじるなんて、できるとでも? 録音するだけでも凄いのに?」
 「それは……」
 「ガムン公爵。まずは聞いてみようではないか」
 「しかし……」
 「何か聞かれては困る事でもありますか?」

 レオンス様が問えば、ガムン公爵が睨みつけて来る。

 「あるのか?」
 「ございません。ただその……二人にしか作動させられないと言うのが」
 「だったらこの場で魔法陣を描いて、あの時の様に闇属性でなくても出来るようにしましょうか」
 「な、なんだと……」
 「え……」

 この場の全員がルイス様の言葉に驚いた。
 もちろん、私だけではなくレオンス様もよ。

 「出来るならやってみせよ」
 「はい」

 紙とペンが用意された。
 マジックペン。インクに自分の魔力を流し込めるペン。それを使い、器用に描いて行く。

 なるほど。魔力が流し込まれると、ルイス様が流し込ませてある闇属性の魔力が注ぎ込まれるようになっているみたいね。
 変換するのではないのか。でも、言わなければ誰もわからないわね。

 描き終わると、ルイス様がチラッと私を見た。
 きっとどんな内容かわかったと聞いたのだと思う。だからにっこり笑顔で返した。

 「おい……」
 「ふぇ」

 レオンス様が、なぜか怒っている。

 継ぎはぎされた紙に描かれた魔法陣は、最初から描かれている魔法陣に触れる様に描かれていた。
 たぶん、この意味を理解できるのは、私達三人だけよね。
 それにしても器用だわ。

 「では、私が流してみよう」

 陛下が、描いたばかりの魔法陣に触れ、魔力を流す。

 『大丈夫ですか』
 『苦しいのなら上着をお脱ぎになって』

 学園舞踏会の時のだわ。これが先ならガムン公爵が止めても最後まで聞くでしょう。

 『ファビア嬢!?』
 『ルイス様!?』

 陛下がうん? という顔つきになる。
 ルイス様を連れて誰かが部屋に入って来たというシーンだものね。ガムン公爵が言っているのと全然違うもの。

 『どうしてあなたがここにいるのよ』
 『どうしてって、体調が悪くなって……』

 「陛下! これは明らかにおかしいです。始まり方が不自然ではありませんか!」
 「いいえ。保管する為に分けあるのです」
 「ほぉ。編集したと」
 「編集という程ではありません。切り分けただけですので」

 本当は、消した言葉もある。
 吹き替えのような事はできないので、消すだけしかできないけど。周りの音が小さいので、継ぎはぎになっていても違和感はないからね。
 聞かれてまずい言葉は消したのよ。

 凄く大変だった。録音を録音する作業。
 色々話しちゃったからね、私達。

 「ガムン公爵。最後まで聞こうではないか。フロール嬢が言っていたという内容とこうも違うと検証せねばならん」
 「………」

 よし! 何とかなりそうね。

 『それはあなたが今度は、ルイス様を逆恨みで嵌めようとしたからでしょう』
 『それ、私ではないわ』

 フロール嬢の言葉に、ガムン公爵がビクッと反応を示す。

 『あなたは一体何がしたいのよ』
 『何っていいところに嫁に行って幸せになりたいのよ。魔法博士になって自由を手に入れようとしたのよね。けど、レオンス様と出会って欲が出たのでしょう? 貴族にならない為に魔法博士を選んだのに、結局は侯爵夫人を選んだのよね』
 『そうね。魔法博士になっても結婚はしないといけないようだったから』
 『彼も結婚はしたくなかったみたいだから、あなたを選んだのでしょうね。チャンスを上手くつかんだのよね。あなた達は。だったら私もこのチャンスを掴んでもよくない?』
 『この場の事を見逃せと言うの?』
 『言ったでしょう。嫁に行って幸せになりたいって。あいつは彼と結婚などさせる気はないわ。けど私にとってはチャンスなのよ』
 『どうしてそれで幸せになれるのよ。嵌めたあなたと仲良くするとでも思っているの?』
 『そんな事はわかっているわよ! だから必死になっているんじゃないの。形振りなんて構っていられないわ。自分の幸せを願って何が悪いのよ。あなただって、彼を利用しているじゃない』
 『違うわ! 私は、レオンス様の幸せを願って――』

 うん。我ながら上手く繋げたわ。
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