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浴室には木で作られた大きな桶のようなものがあり、その中から湯気が立ちあがっていた。
「も、燃えているの?! 消さないと……!」
パニックになるミレーに、グランが冷静に教えてくれた。
「これが風呂だ。温かい湯に浸かって身体をあっためて、身体の汚れを落とす……っていう感じ?」
「え……え?」
「ミレーが今まで入っていた風呂って、どんなだよ」
そこでようやくグランの質問の意味がわかった。
「い、家の庭にある池の水で身体を洗っていたの……。さすがに浸かることはできないけど……」
夏でも水が冷たいから、冬は地獄だった。
だからミレーは、お風呂があまり好きではなかった。
けれど、他のみんなもちゃんとしているのだから、自分もちゃんとしないと、と頑張っていた。
夜の池で、家の誰とも遭遇しなかったのは、みんなミレーと会いたくないから避けていたのだと思っていた。
だがこの事実を知って、家族と使用人はあんな冷たい思いをしていなかったのではないかという考えにたどり着いたら、なんだか無性に悲しい気持ちになってきた。
「そっか。じゃあ初体験だな。あったかい風呂、体験してみようぜ」
「え、で、でも……この桶の中に、入るの?」
この桶の中の水がどれだけ熱いのだろうと予想できずに怖がっていると、グランが自分の手を桶の中に入れて見せた。
ミレーはびくりと身体を跳ねあがらせた。
(あ、熱くないのかな?)
だが、グランはリラックスした表情を浮かべている。
「ミレーも、手を入れてみろよ」
演技ではないとグランを信じ、言う通りにゆっくりと桶の中に手を差し入れ、驚いた。
「ふ、ふわぁっ、あ、あったかい!」
「だろう? ほら、いつまでも濡れたままだと風邪ひくぞ。早く入れよ」
優しいグランの声にそう言われたが、ミレーは困った。
もじもじしているミレーの意図を、グランも察したようで、キョロキョロ視線を彷徨わせてから「じゃあ、オレは出て行くから」と言いそそくさと浴室を出て行った。
「あ、脱いだ服は籠の中に入れておいてくれ! あとで洗濯するから!」
浴室の外から投げかけられたグランの言葉に、ミレーは小さく笑いを零してしまう。
グランの余裕のない声が、かわいらしく思えたのだ。
ミレーは脱いだ服を言われたとおりに籠の中へ入れてから、中央に佇む大きな桶の中に足を踏み入れた。
「ふわっ……あッ!」
あたたかい湯ではあるが、それが皮膚に沁みて、とても痛かった。
その声が外に聞こえたのか、グランが「どうした!?」と声をかけてきた。
だから安心させようと、努めて元気に振る舞った声で「なんでもない」と返したが、何故か扉が開いてグランが顔をのぞかせた。
「……悪いが、ちょっと入るぞ」
「え?! そ、それは……」
「…………」
丸裸の自分の身体をグランの目にさらすのは抵抗がある、と困惑していると、そばに大きな白いタオルが投げられた。
「それ、見られたくない部分に巻いてくれ」
そこまで配慮されたのなら、とタオルを身体に巻くと、再度グランが言葉を投げてきた。
「入ってもいいか?」
「う、うん……」
ミレーの許可を得たグランは、ガラリと浴室の扉を横に開けた。この浴室はドアノブが無く、押すでも引くでもない、板が左右に開く仕組みになっていた。
身体に白いタオルを巻きつけ、桶の前でうずくまっていると、グランがミレーの前で胡坐を組んで座り込んだ。
「……ちょっと、正座してくれるか?」
言われたとおりに座ると、グランはミレーを見据えた。
「も、燃えているの?! 消さないと……!」
パニックになるミレーに、グランが冷静に教えてくれた。
「これが風呂だ。温かい湯に浸かって身体をあっためて、身体の汚れを落とす……っていう感じ?」
「え……え?」
「ミレーが今まで入っていた風呂って、どんなだよ」
そこでようやくグランの質問の意味がわかった。
「い、家の庭にある池の水で身体を洗っていたの……。さすがに浸かることはできないけど……」
夏でも水が冷たいから、冬は地獄だった。
だからミレーは、お風呂があまり好きではなかった。
けれど、他のみんなもちゃんとしているのだから、自分もちゃんとしないと、と頑張っていた。
夜の池で、家の誰とも遭遇しなかったのは、みんなミレーと会いたくないから避けていたのだと思っていた。
だがこの事実を知って、家族と使用人はあんな冷たい思いをしていなかったのではないかという考えにたどり着いたら、なんだか無性に悲しい気持ちになってきた。
「そっか。じゃあ初体験だな。あったかい風呂、体験してみようぜ」
「え、で、でも……この桶の中に、入るの?」
この桶の中の水がどれだけ熱いのだろうと予想できずに怖がっていると、グランが自分の手を桶の中に入れて見せた。
ミレーはびくりと身体を跳ねあがらせた。
(あ、熱くないのかな?)
だが、グランはリラックスした表情を浮かべている。
「ミレーも、手を入れてみろよ」
演技ではないとグランを信じ、言う通りにゆっくりと桶の中に手を差し入れ、驚いた。
「ふ、ふわぁっ、あ、あったかい!」
「だろう? ほら、いつまでも濡れたままだと風邪ひくぞ。早く入れよ」
優しいグランの声にそう言われたが、ミレーは困った。
もじもじしているミレーの意図を、グランも察したようで、キョロキョロ視線を彷徨わせてから「じゃあ、オレは出て行くから」と言いそそくさと浴室を出て行った。
「あ、脱いだ服は籠の中に入れておいてくれ! あとで洗濯するから!」
浴室の外から投げかけられたグランの言葉に、ミレーは小さく笑いを零してしまう。
グランの余裕のない声が、かわいらしく思えたのだ。
ミレーは脱いだ服を言われたとおりに籠の中へ入れてから、中央に佇む大きな桶の中に足を踏み入れた。
「ふわっ……あッ!」
あたたかい湯ではあるが、それが皮膚に沁みて、とても痛かった。
その声が外に聞こえたのか、グランが「どうした!?」と声をかけてきた。
だから安心させようと、努めて元気に振る舞った声で「なんでもない」と返したが、何故か扉が開いてグランが顔をのぞかせた。
「……悪いが、ちょっと入るぞ」
「え?! そ、それは……」
「…………」
丸裸の自分の身体をグランの目にさらすのは抵抗がある、と困惑していると、そばに大きな白いタオルが投げられた。
「それ、見られたくない部分に巻いてくれ」
そこまで配慮されたのなら、とタオルを身体に巻くと、再度グランが言葉を投げてきた。
「入ってもいいか?」
「う、うん……」
ミレーの許可を得たグランは、ガラリと浴室の扉を横に開けた。この浴室はドアノブが無く、押すでも引くでもない、板が左右に開く仕組みになっていた。
身体に白いタオルを巻きつけ、桶の前でうずくまっていると、グランがミレーの前で胡坐を組んで座り込んだ。
「……ちょっと、正座してくれるか?」
言われたとおりに座ると、グランはミレーを見据えた。
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