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「お、おい、ミレー?!」
「や……ちょっと待って、近づかないで……!」
ミレーが胸を握りしめながら必死に呼吸を整えようとする仕草に、グランは不安そうに声をかけるが、拒まれてしまった。
それで彼が不安になった空気を、ミレーは肌で感じ取った。
「ち、違うの……その……変な意味じゃないんだけどね、その……グランって顔が整いすぎているの! そんな美形を間近に突きつけられながら、そんな、慣れない褒められ方をされると、心臓に悪いっていうか……恥ずかし……でしょぅ」
語尾がすぼまってしまったが、地面を見つめながらなんとか伝えきると、頭上から悲しそうな声が降ってきた。
「……ミレー。オレと目も合わせられないほど、恥ずかしいのか?」
そんなに悲しげな声をされるほど、自分はグランを傷つけるようなことを言ってしまったのだろうか不安になり、慌てて顔を上げた。
だが彼は落ち込んでいない。というより、グランは顔を真っ赤に染め上げ、口元を手の甲で隠す仕草をしていた。
「……なんだよ、その顔は」
恥ずかしそうに染まった顔で睨まれても、すごまれた感じがしない。
(むしろ……かわいい……)
ミレーは何も言っていないのに、逆に何も言わないことが彼を焦らせたのか、口早に色々言い始めた。
「と、整っているとか美形とかそそ、そんなこと、別に、嬉しいけど、その……えっと……」
何が言いたいのかわからずにただその様子を見つめていると、グランは言い訳をやめて、じっと見つめているミレーを見つめ返して聞いた。
「……ミレーから見て、オレってカッコいいと思うのか?」
「え、無自覚なの? 今まで周りの女の子に言われたことないの? 格好いいって」
「ない。ミレーから初めて聞いた」
グランの言葉に、そばでやりとりを聞いていたマルクとイリーが勢いよく突っ込んだ。
「あるだろう! 山ほど!!」
「星の数ほど!!」
勢いよく突っ込んで息切れしている二人を、グランが怪訝そうに見やった。
「いつ?」
「本当に自覚無かったのかよ! ミレー以外の女性の気持ちが可哀想すぎる!」
マルクが呆れて溜息を吐くのを見ながら、イリーも呆れたように続ける。
「直近では前回の社交パーティーで女性陣に囲まれていた時言われていましたよ。私はサージラ殿下の護衛についていたので、横目で見ていただけですが」
「ボクはオリヴァーの真横にいたからよく聞こえていた。あれが聞こえていなかったのなら耳の病気を疑うべきだし、忘れていたのなら記憶力に問題があると思う」
マルクとイリーが交互に苦言を漏らすのに対して、グランはどこ吹く風だ。
「少なくとも、ミレーから言われたことはなかったよ」
「お前なぁ……」
グランとマルクのやりとりを見ていたイリーが、冷ややかな態度で質問をする。
「では、前回のパーティーでオリヴァー様に手作りのクッキーと手紙を渡してくれた令嬢の名前は憶えておりますか?」
「…………シャーリー・モグレッド伯爵令嬢」
グランたちのやりとりを聞いて、ミレーは胸の奥にちくりとした違和感を覚えた。
「ん、どうした?」
グランがミレーのほうを向いた。
「え、あ、ううん。挨拶した人の名前、もしかして全員憶えているの?」
「一応な。公務で必要になる技能だから、挨拶交わした相手の顔と名前、素性はもちろん知っている。パーティーの参加者の名前は基本全員暗記しないといけねえし、挨拶を交わした相手の人相を、事前に覚えた名前・爵位を思い出しながら照らし合わせないといけねえから、面倒くせぇ作業だよ」
「……グラン、すごい……」
面倒くさいと言いつつ、それが本当なら圧巻される努力を彼はしてきたのだ。
それを素直に伝えれば、グランは嬉しそうに微笑んだ。
「ミレーにそんなふうに褒められるんなら、それだけで頑張った甲斐があるな」
はにかむ美形の笑顔は健康に良いが心臓に悪い。
ミレーは自分の心臓を守るように抑えながら、また床に突っ伏す。
「ミレー?!」
グランの悲鳴と温度差のある声が降ってきた。
「あの、話が進みませんので、ミレー様には少しリアクションを抑えていただいてもよろしいですか?」
感情が籠っていない棒読みにも似たイリーの質問に、ミレーは恥ずかしさで顔を上げることが出来なくなっていた。
「や……ちょっと待って、近づかないで……!」
ミレーが胸を握りしめながら必死に呼吸を整えようとする仕草に、グランは不安そうに声をかけるが、拒まれてしまった。
それで彼が不安になった空気を、ミレーは肌で感じ取った。
「ち、違うの……その……変な意味じゃないんだけどね、その……グランって顔が整いすぎているの! そんな美形を間近に突きつけられながら、そんな、慣れない褒められ方をされると、心臓に悪いっていうか……恥ずかし……でしょぅ」
語尾がすぼまってしまったが、地面を見つめながらなんとか伝えきると、頭上から悲しそうな声が降ってきた。
「……ミレー。オレと目も合わせられないほど、恥ずかしいのか?」
そんなに悲しげな声をされるほど、自分はグランを傷つけるようなことを言ってしまったのだろうか不安になり、慌てて顔を上げた。
だが彼は落ち込んでいない。というより、グランは顔を真っ赤に染め上げ、口元を手の甲で隠す仕草をしていた。
「……なんだよ、その顔は」
恥ずかしそうに染まった顔で睨まれても、すごまれた感じがしない。
(むしろ……かわいい……)
ミレーは何も言っていないのに、逆に何も言わないことが彼を焦らせたのか、口早に色々言い始めた。
「と、整っているとか美形とかそそ、そんなこと、別に、嬉しいけど、その……えっと……」
何が言いたいのかわからずにただその様子を見つめていると、グランは言い訳をやめて、じっと見つめているミレーを見つめ返して聞いた。
「……ミレーから見て、オレってカッコいいと思うのか?」
「え、無自覚なの? 今まで周りの女の子に言われたことないの? 格好いいって」
「ない。ミレーから初めて聞いた」
グランの言葉に、そばでやりとりを聞いていたマルクとイリーが勢いよく突っ込んだ。
「あるだろう! 山ほど!!」
「星の数ほど!!」
勢いよく突っ込んで息切れしている二人を、グランが怪訝そうに見やった。
「いつ?」
「本当に自覚無かったのかよ! ミレー以外の女性の気持ちが可哀想すぎる!」
マルクが呆れて溜息を吐くのを見ながら、イリーも呆れたように続ける。
「直近では前回の社交パーティーで女性陣に囲まれていた時言われていましたよ。私はサージラ殿下の護衛についていたので、横目で見ていただけですが」
「ボクはオリヴァーの真横にいたからよく聞こえていた。あれが聞こえていなかったのなら耳の病気を疑うべきだし、忘れていたのなら記憶力に問題があると思う」
マルクとイリーが交互に苦言を漏らすのに対して、グランはどこ吹く風だ。
「少なくとも、ミレーから言われたことはなかったよ」
「お前なぁ……」
グランとマルクのやりとりを見ていたイリーが、冷ややかな態度で質問をする。
「では、前回のパーティーでオリヴァー様に手作りのクッキーと手紙を渡してくれた令嬢の名前は憶えておりますか?」
「…………シャーリー・モグレッド伯爵令嬢」
グランたちのやりとりを聞いて、ミレーは胸の奥にちくりとした違和感を覚えた。
「ん、どうした?」
グランがミレーのほうを向いた。
「え、あ、ううん。挨拶した人の名前、もしかして全員憶えているの?」
「一応な。公務で必要になる技能だから、挨拶交わした相手の顔と名前、素性はもちろん知っている。パーティーの参加者の名前は基本全員暗記しないといけねえし、挨拶を交わした相手の人相を、事前に覚えた名前・爵位を思い出しながら照らし合わせないといけねえから、面倒くせぇ作業だよ」
「……グラン、すごい……」
面倒くさいと言いつつ、それが本当なら圧巻される努力を彼はしてきたのだ。
それを素直に伝えれば、グランは嬉しそうに微笑んだ。
「ミレーにそんなふうに褒められるんなら、それだけで頑張った甲斐があるな」
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ミレーは自分の心臓を守るように抑えながら、また床に突っ伏す。
「ミレー?!」
グランの悲鳴と温度差のある声が降ってきた。
「あの、話が進みませんので、ミレー様には少しリアクションを抑えていただいてもよろしいですか?」
感情が籠っていない棒読みにも似たイリーの質問に、ミレーは恥ずかしさで顔を上げることが出来なくなっていた。
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