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イリーの協力もあって、グランが朝食を作り終えると同時に荷造りを終えることが出来た。
その時ちょうどマルクも帰ってきたので、四人で荷を馬車まで運び、すぐに朝食を摂ることが出来た。
朝食を摂りながら、グランが提案をした。
「さっきのミレーの話を聞いて、考えていたんだが……」
「なにを?」
グランが神妙な顔つきでスープを飲むので、ミレーも緊張しながらスープを飲んだ。
「ミレーの義妹が、オレとの婚姻を狙っているって言っていたよな。だから、ミレーとの婚姻を伝えにいく時、その義妹の前でいちゃつきながらキスでもしたら、そいつ悔しがって血吐いて倒れんじゃね?」
「なんでそんな怖いことを笑顔で言えるの……?」
なんで良い提案だろう、と言いたげな表情で誇らしそうにしているのだろうと、ミレーは信じられないような目でグランを見た。
「え、ダメか? ……ダメか?」
「二回聞いてもダメだよ」
そんなことしたら、アリサがどういう目をミレーに向けてくるか容易に想像がつく。その視線だけで射殺されそうな自信もある。
「でも、普通に挨拶しても、ミレーが怖い思いをしそうだね……」
マルクが困ったように考え込んだ。
「いっそ、ボクが代理で伝えてこようか? イリーさんが護衛についていてくれれば、万が一手を出されてもボクとイリーさんで被害を防ぐことは出来そうだし……」
「マルク。お前もミレーの義妹に狙われてんの、知らねえの?」
「え?」
マルクの顔がややひきつった。
「社交パーティーで噂を聞いたんだよ。爵位が高くて顔立ちが良い年頃の男に色目使う尻軽女、アリサ・クローバーっていう男爵令嬢がいるってな」
「……その条件に、ボクも入っていたと?」
「あいつがオレたちに近寄ってきたことが何度かあっただろう。その時オレを見ながらチラチラお前のほうも見ていたぞ。どうせオレがダメそうならお前で手を打とうとかそういうとこだろ。だから、オレとミレーが婚約します~とかお前が報告しに行ったら、その義妹はすぐにお前に媚びりにいくと思うぞ」
「……ごめん、逃げたい」
手で顔を覆ってうつむくマルクに、テーブルの向かいに座っているミレーがフォローをした。
「い、いいよ、無理しなくて良いよ。むしろ、むしろ無理しないほうが……」
グランとマルクのやりとりを聞きながら状況を想像しているうちに、ミレーも具合が悪くなってきた。
「……つまり、グラン……じゃない、オリヴァーと私が結婚しても殺されることはないかもしれないの?」
「どうかな。あんな女が、自分の望む爵位を持った好みの男と結婚出来るとはとても思えない。仮に万が一そんな天文学的な確率の奇跡が起こる未来があったとしても、今の段階で、自分が殺そうとした義姉がねらい目の男と結婚することになったとすれば……どういう行動をするか安易に想像がつく」
「……でしたら、私が一人で説明に向かいましょう」
話を聞いていたイリーが食事の手を止め、そう告げた。
「イリーが一人で……か」
それを聞くと、グランは何やら考え込んだ。マルクは隣に座るイリーに、「さすがに一人では危険かと……」と心配の声をかける。
「私はこれでも王宮の紋章を持つ騎士。ごろつきの10人や20人くらいは一人でいなせます。今回の相手はたかが小娘一人。そんな小娘からミレー様をお守りするくらいは容易い任務です」
「慢心していると足すくわれるぞ」
考え込んだ仕草のまま、グランがイリーに突っ込みを入れる。
慢心、と言われればその通りだと、イリーは反省してからスープを啜りなおした。
「だが、そうだな、イリーに頼むのが良いかもしれない」
しょげてスープを飲んでいたイリーは、グランの発言に驚いて顔をあげた。
「ただ、真正面から正直に突っ込むなんて真似はしねえさ」
グランは齧ったパンを咀嚼して飲み込むと、にやりとすごく悪い顔でミレー達を見渡した。
なにやらよからぬことを考えているな、と思ったのは、ミレーだけではないはずだ。
その時ちょうどマルクも帰ってきたので、四人で荷を馬車まで運び、すぐに朝食を摂ることが出来た。
朝食を摂りながら、グランが提案をした。
「さっきのミレーの話を聞いて、考えていたんだが……」
「なにを?」
グランが神妙な顔つきでスープを飲むので、ミレーも緊張しながらスープを飲んだ。
「ミレーの義妹が、オレとの婚姻を狙っているって言っていたよな。だから、ミレーとの婚姻を伝えにいく時、その義妹の前でいちゃつきながらキスでもしたら、そいつ悔しがって血吐いて倒れんじゃね?」
「なんでそんな怖いことを笑顔で言えるの……?」
なんで良い提案だろう、と言いたげな表情で誇らしそうにしているのだろうと、ミレーは信じられないような目でグランを見た。
「え、ダメか? ……ダメか?」
「二回聞いてもダメだよ」
そんなことしたら、アリサがどういう目をミレーに向けてくるか容易に想像がつく。その視線だけで射殺されそうな自信もある。
「でも、普通に挨拶しても、ミレーが怖い思いをしそうだね……」
マルクが困ったように考え込んだ。
「いっそ、ボクが代理で伝えてこようか? イリーさんが護衛についていてくれれば、万が一手を出されてもボクとイリーさんで被害を防ぐことは出来そうだし……」
「マルク。お前もミレーの義妹に狙われてんの、知らねえの?」
「え?」
マルクの顔がややひきつった。
「社交パーティーで噂を聞いたんだよ。爵位が高くて顔立ちが良い年頃の男に色目使う尻軽女、アリサ・クローバーっていう男爵令嬢がいるってな」
「……その条件に、ボクも入っていたと?」
「あいつがオレたちに近寄ってきたことが何度かあっただろう。その時オレを見ながらチラチラお前のほうも見ていたぞ。どうせオレがダメそうならお前で手を打とうとかそういうとこだろ。だから、オレとミレーが婚約します~とかお前が報告しに行ったら、その義妹はすぐにお前に媚びりにいくと思うぞ」
「……ごめん、逃げたい」
手で顔を覆ってうつむくマルクに、テーブルの向かいに座っているミレーがフォローをした。
「い、いいよ、無理しなくて良いよ。むしろ、むしろ無理しないほうが……」
グランとマルクのやりとりを聞きながら状況を想像しているうちに、ミレーも具合が悪くなってきた。
「……つまり、グラン……じゃない、オリヴァーと私が結婚しても殺されることはないかもしれないの?」
「どうかな。あんな女が、自分の望む爵位を持った好みの男と結婚出来るとはとても思えない。仮に万が一そんな天文学的な確率の奇跡が起こる未来があったとしても、今の段階で、自分が殺そうとした義姉がねらい目の男と結婚することになったとすれば……どういう行動をするか安易に想像がつく」
「……でしたら、私が一人で説明に向かいましょう」
話を聞いていたイリーが食事の手を止め、そう告げた。
「イリーが一人で……か」
それを聞くと、グランは何やら考え込んだ。マルクは隣に座るイリーに、「さすがに一人では危険かと……」と心配の声をかける。
「私はこれでも王宮の紋章を持つ騎士。ごろつきの10人や20人くらいは一人でいなせます。今回の相手はたかが小娘一人。そんな小娘からミレー様をお守りするくらいは容易い任務です」
「慢心していると足すくわれるぞ」
考え込んだ仕草のまま、グランがイリーに突っ込みを入れる。
慢心、と言われればその通りだと、イリーは反省してからスープを啜りなおした。
「だが、そうだな、イリーに頼むのが良いかもしれない」
しょげてスープを飲んでいたイリーは、グランの発言に驚いて顔をあげた。
「ただ、真正面から正直に突っ込むなんて真似はしねえさ」
グランは齧ったパンを咀嚼して飲み込むと、にやりとすごく悪い顔でミレー達を見渡した。
なにやらよからぬことを考えているな、と思ったのは、ミレーだけではないはずだ。
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