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2 彼の子ども
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「アメリア様、フィン様と別れてくださいませ」
「あなたはどなたです?」
「私は……私は……以前、彼とお付き合いしていた者です」
粗末なワンピースではあるが、目がくりっとした可愛らしい女性が街でいきなり声をかけてきた。
フィン様と婚約する前、彼の浮いた話を聞いたことはなかった。むしろ、女性と親しく話しているところを見たことがない。
だから『お付き合いをしていた女性』がいるということが自体信じられなかった。
「お嬢様、相手にする必要はありませんわ。お下がりくださいませ」
侍女のハンナが、私を守るように前に出て女性を睨みつけた。
「あの……あの……お願いですから、話を聞いてくださいませ」
ガタガタと震えながら、そう告げる女性は儚くて今にも消えてしまいそうな雰囲気だった。
「ハンナ、ありがとう。でも下がって。彼女の話を聞くわ」
「お嬢様、いけません」
「だってこのままでは、気になるもの」
何故私を呼び止めたのか、どうして別れて欲しいのかその理由を聞いてみたかったのだ。
「さあ、話してちょうだい。どうして私が彼と別れねばならないのかしら? 別れているのであれば、もう関係はないはずよ」
この時の私は、彼女が何を言ってきても彼と婚約破棄をするつもりなどなかった。もし本当に付き合っていたとしても、それは過去の話だからだ。
「関係は……あるのです」
「あら、まだ関係が続いているとでも言うの?」
もし本当にそうだったら、私は彼を許せるだろうか。平気な顔を取り繕ってそう質問をしたが、胸がズキリと痛んだ。
「ずっと連絡を取っていませんでした。でも……もう彼の支援がなければ私もこの子も生きていけないのです。だからこの前久しぶりに連絡をしたのですが、あなた様と結婚が決まっていると言われました」
「……この子?」
「はい」
彼女は後ろに隠れていた、幼い男の子を私の前に出した。
「この子は……」
紫色の三白眼に、真っ黒な髪。まるでフィン様の生き写しだった。
「はい、もうおわかりいただけたと思いますが……あの人の子です」
「フィン様の……子」
「三年前に産みました。お腹にこの子ができたことに気が付いた時には……すでに彼とは会っていませんでした。お互い愛し合っていましたが……彼は騎士として忙しくなったので、自然消滅したのです。身分が合わないこともわかっていましたから。だから、彼はこのことは知らずにあなたと婚約したのです」
真っ青な顔で涙を浮かべながら、女性は真実を話してくれた。
「お母ちゃん、どうしたの?」
「ごめんね。なんでもないのよ」
不安そうな表情の男の子は、その女性の足にべったりとくっついていた。
「あなた様には申し訳ないです。でも、あの人とやり直したい。この子と三人で……生きていきたい」
汚れた服や荒れた手から、彼女や男の子が苦労をしていることはひと目でわかった。
「これを」
私は首からネックレスを外し、彼女に渡した。これはダイヤモンドが付いているので、高く売れるはずだ。
「あ、あの……」
「そこの質屋は信用ができます。売ればしばらく暮らせるでしょう」
「こ、こんな高価なものいただけません!」
「いいの。彼はしばらく戻ってこない。帰ってきたら、話をするけれど……それまでの間、これで生活をしのいでくださいませ」
女性は何度も何度も頭を下げ「すみません、すみません」と謝った。
すいませんというのは、この場合どちらなのだろうか。だって、私が彼に会う前の話だ。彼女が悪いことなど何もないだろう。
「彼にはその子を育てる義務があります。責任はとってもらわねば」
「は、はい……いや、でも……」
「彼が渋っても私からお別れをするから、あなたは安心して子育てをして」
そう告げて、私はその場を離れた。
「あなたはどなたです?」
「私は……私は……以前、彼とお付き合いしていた者です」
粗末なワンピースではあるが、目がくりっとした可愛らしい女性が街でいきなり声をかけてきた。
フィン様と婚約する前、彼の浮いた話を聞いたことはなかった。むしろ、女性と親しく話しているところを見たことがない。
だから『お付き合いをしていた女性』がいるということが自体信じられなかった。
「お嬢様、相手にする必要はありませんわ。お下がりくださいませ」
侍女のハンナが、私を守るように前に出て女性を睨みつけた。
「あの……あの……お願いですから、話を聞いてくださいませ」
ガタガタと震えながら、そう告げる女性は儚くて今にも消えてしまいそうな雰囲気だった。
「ハンナ、ありがとう。でも下がって。彼女の話を聞くわ」
「お嬢様、いけません」
「だってこのままでは、気になるもの」
何故私を呼び止めたのか、どうして別れて欲しいのかその理由を聞いてみたかったのだ。
「さあ、話してちょうだい。どうして私が彼と別れねばならないのかしら? 別れているのであれば、もう関係はないはずよ」
この時の私は、彼女が何を言ってきても彼と婚約破棄をするつもりなどなかった。もし本当に付き合っていたとしても、それは過去の話だからだ。
「関係は……あるのです」
「あら、まだ関係が続いているとでも言うの?」
もし本当にそうだったら、私は彼を許せるだろうか。平気な顔を取り繕ってそう質問をしたが、胸がズキリと痛んだ。
「ずっと連絡を取っていませんでした。でも……もう彼の支援がなければ私もこの子も生きていけないのです。だからこの前久しぶりに連絡をしたのですが、あなた様と結婚が決まっていると言われました」
「……この子?」
「はい」
彼女は後ろに隠れていた、幼い男の子を私の前に出した。
「この子は……」
紫色の三白眼に、真っ黒な髪。まるでフィン様の生き写しだった。
「はい、もうおわかりいただけたと思いますが……あの人の子です」
「フィン様の……子」
「三年前に産みました。お腹にこの子ができたことに気が付いた時には……すでに彼とは会っていませんでした。お互い愛し合っていましたが……彼は騎士として忙しくなったので、自然消滅したのです。身分が合わないこともわかっていましたから。だから、彼はこのことは知らずにあなたと婚約したのです」
真っ青な顔で涙を浮かべながら、女性は真実を話してくれた。
「お母ちゃん、どうしたの?」
「ごめんね。なんでもないのよ」
不安そうな表情の男の子は、その女性の足にべったりとくっついていた。
「あなた様には申し訳ないです。でも、あの人とやり直したい。この子と三人で……生きていきたい」
汚れた服や荒れた手から、彼女や男の子が苦労をしていることはひと目でわかった。
「これを」
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「あ、あの……」
「そこの質屋は信用ができます。売ればしばらく暮らせるでしょう」
「こ、こんな高価なものいただけません!」
「いいの。彼はしばらく戻ってこない。帰ってきたら、話をするけれど……それまでの間、これで生活をしのいでくださいませ」
女性は何度も何度も頭を下げ「すみません、すみません」と謝った。
すいませんというのは、この場合どちらなのだろうか。だって、私が彼に会う前の話だ。彼女が悪いことなど何もないだろう。
「彼にはその子を育てる義務があります。責任はとってもらわねば」
「は、はい……いや、でも……」
「彼が渋っても私からお別れをするから、あなたは安心して子育てをして」
そう告げて、私はその場を離れた。
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